第2章 地域別に見た外交


7.拡大中東・北アフリカ構想

 拡大中東・北アフリカ(BMENA:Broader Middle East and North Africa) (注19) 地域諸国の政治的、経済的、社会的分野での自発的な改革努力をG8が支援するものとして、2004年6月、G8シーアイランド・サミットで「拡大中東・北アフリカとのパートナーシップ」が合意された。そのフォローアップとして、G8及び地域諸国の閣僚(外相など)による「未来のためのフォーラム」第1回会合が2004年12月にモロッコのラバトで開催された。その後、2005年を通じ、このフォーラムの下、教育、職業訓練、民主主義、市民社会、中小企業育成・起業家養成などの各分野で具体的な取組がG8や域内の各国により進められた。民主化に関しては、サウジアラビアにおける初の地方議会選挙の実施(2月~4月)、クウェートでの女性参政権の付与(5月)、エジプト初の複数候補による大統領選挙の実施(9月)など改革に向けた前向きな動きが見られた。

 日本は、地域の自主性と多様性の尊重が、改革にとって重要との考えの下、同地域で急速に増大する若年層への雇用機会の提供を緊急の課題と位置付け、職業訓練分野における取組を主導している。9月にヨルダンと共同で「職業訓練ワークショップ」をアンマンにおいて開催した。ワークショップでは、雇用機会の拡大に向けた取組を進めるため、労働市場の需要供給バランスの重要性に着目し、官民パートナーシップに基づいた職業訓練メカニズムの構築を模索していくことが合意された。

 教育分野では、4月と9月にアルジェリアとエジプトがそれぞれ識字専門家による会合を主催したほか、5月にヨルダンが「G8‐BMENA教育大臣会合」を主催するなど、地域諸国による取組も見られた。同会合では、福島外務大臣政務官が、教育を通じた人材育成を基礎に今日の発展と繁栄を築いたという日本の知見と経験を示すとともに、教育や職業訓練の分野を中心とする日本の改革支援を紹介した。

 このような改革への取組の進展を踏まえて、11月、バーレーンで「未来のためのフォーラム」第2回会合が開催された。会合では、各国の改革イニシアティブが紹介されるとともに、米国やパートナー国 (注20) により、地域の中小企業や非政府組織を支援するための国際的枠組みとして「未来のための財団」と「未来のための基金」の発足が宣言された。日本からは、代表として招かれた金田外務副大臣が「職業訓練ワークショップ」をはじめとする日本の取組を紹介するとともに、今後、女性支援など域内の人づくり支援を進めていくとの考えを表明した。



▼BMENA構想における日本の取組



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