第2章 地域別に見た外交


5.湾岸諸国等情勢

 サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国にとって、イラクのフセイン政権崩壊は安全保障上の大きな脅威が取り除かれたことを意味する。一方、イランの核開発問題の動向やイラクへの影響力の拡大に対しては懸念をもって注視している。また、湾岸諸国は、地域の大国であるイランとの政治的・軍事的な均衡をとるため、中東地域で一層大きな影響力を持つようになった米国との関係を重視してきている。

 湾岸協力理事会(GCC) (注16) は、安全保障上の脅威に一致団結し対抗するという性格よりも、湾岸地域の地政学的状況の変化に応じて、関税同盟や統一市場を指向した地域経済同盟としての性格を色濃く反映するようになってきている。湾岸諸国に大きな影響を及ぼすイラク情勢については、12月の国民議会選挙を歓迎し、イラクの安定、主権を保証するような包括的な国家的和解の実現を求め、イラク復興のために各加盟国が引き続き支援していくとの立場をとっている。

 治安問題については、サウジアラビア政府が2月にテロ対策国際会議を開催するなど、各国は独自に、また、GCC間の調整や国際社会の協力を得つつテロ防止対策や治安協力を行っている。

 2004年11月のザーイド・アラブ首長国連邦大統領の逝去に続き、2005年8月、ファハド・サウジアラビア国王が逝去し、指導者の世代交代が進んだ。クウェートでは、長年の懸案であった女性の参政権が認められ、初の女性閣僚が誕生した。アラブ首長国連邦でも連邦国民議会の議員の半数を選挙で選出する意向が表明されるなど、民主化の流れもあった。

 湾岸諸国は、昨今の原油価格の高騰により石油収入が急増し、オイルブームを享受している一方、労働力の多くを外国人労働者に依存しており、若年層の雇用問題は依然として深刻な社会問題となっている。そのため、自国民労働力の能力向上と自国民化の推進が課題となっている。



【日本の取組】

 中東地域の平和と安全保障の確保は、国際社会全体の平和と安定及び日本のエネルギー安全保障に直接影響を与えることから、日本は湾岸諸国が抱える様々な事情に配慮しつつ、対湾岸外交を展開している (注17) 。

 日本は若年層の雇用対策を支援しており、例えばサウジアラビアでは自動車整備技術面での人材育成支援を行っている。さらに、日本はGCC諸国との重層的関係を構築すべく、環境分野、教育分野での協力や文明間対話、人的交流に取り組んできている。サウジアラビアとの間では外交関係樹立50周年記念事業として各種の文化行事等が日本とサウジアラビアでそれぞれ実施された。




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