第2章 地域別に見た外交


(2)治安情勢

 イラクの治安情勢については、1月の国民議会選挙及び4月の移行政府発足後も、武装勢力による攻撃等が発生しており、地域により脅威の度合いは異なるものの、依然として予断を許さない状況が続いている。全般的には、駐留多国籍軍・イラク治安組織と武装勢力の衝突、車両爆弾等によるテロ、民間人の殺害・拘束をはじめとする様々な事件が頻発した。こうした事件は、バグダッドをはじめとする中部地域(スンニー三角地帯等)及びモースルをはじめとする北部地域で多く発生した。


▼イラク情勢クロノロジー


  こうした中、イラク暫定政府及び移行政府は、NATO及び各国の支援を受けて治安組織を着実に強化してきており、2006年1月4日現在で、約22万4,000人に達している(2005年1月時点では約13万人)。同治安組織は、イラク北部のシリア国境、西部のアンバール県内や首都バグダッド等で、駐留米軍と協力しつつ武装勢力に対する掃討作戦を実施してきている。

 自衛隊が駐留するサマーワでは、電力不足や水不足等、ムサンナー県政への不満を背景とするデモや、同県の知事、評議会議長の人事を巡り政治的な動きがあり、また、陸上自衛隊の車列が市内の道路で爆発に遭遇したり、自衛隊宿営地内に着弾が確認されるといった事案も発生したが(いずれも死傷者なし)、現在のところ、サマーワの治安情勢はイラクのほかの地域と比較して安定している状況に変化はない。

 イラク全土では、2005年を通じて、外国の民間人が被害者となる誘拐事件や襲撃事件も頻発し、被害者は企業従業員、NGO関係者、ジャーナリスト等、多岐にわたった。5月には、バグダッド西方ヒート近郊において米軍基地に物資を輸送し終え帰路についていた車列が襲撃され、その車列を警備していた民間警備会社所属の邦人1名が行方不明となった (注5)




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