第2章 地域別に見た外交 |
1.イ ラ ク
(1)政治プロセスの進展状況 イラクでは、「移行期間のためのイラク国家施政法」(2004年3月制定、以下、「基本法」)及び安全保障理事会決議1546(同年6月採択)に基づき、政治プロセスのスケジュールが以下のとおり定められている。 (1)2005年1月31日までに国民議会選挙の実施及びイラク移行政府発足。 (2)同年8月15日までに国民議会による憲法草案の起草。 (3)同年10月15日までに憲法草案についての国民投票の実施。 (4)同年12月15日までに国民議会選挙の実施。 (5)同年12月31日までにイラク政府の発足。 1月30日に、移行政府発足のための国民議会選挙が、クルド自治区議会選挙及び県評議会選挙と同時に実施され、2月に各選挙の最終結果が発表された (注1) 。4月には国民議会で、移行政府大統領にタラバーニー・クルド愛国同盟(PUK)党首が、副大統領にヤーウェル暫定政府大統領(スンニー派)及びアブドル・マハディ暫定政府財務相(シーア派)が選出された。また、移行政府首相にはジャアファリー暫定政府副大統領(シーア派)が指名され、4月28日に37名の閣僚が国民議会に承認され、移行政府が発足した。 日本はこうした動向を、イラクが民主化に向け新たな段階に入ったことを示すものとして歓迎するとともに、同政府の指導力により政治プロセスが進展し、治安の安定化と復興が進んでいくことを期待するとの見解を発表した。 次の課題である新憲法成立に向けて、5月に国民議会が憲法起草委員会を設置して55名の委員を決定し、憲法草案の起草が進められた (注2) 。その後、7月に国民議会は同委員会の新委員にスンニー派15人とその他1人を承認した。「基本法」が憲法草案の起草期限として定めた8月15日、国民議会は同期限を22日まで延長したが、その期限どおり憲法草案は国民議会に提出され、28日には同草案が承認された。その後、10月15日に憲法草案についての国民投票が大きな混乱もなく実施され、独立選挙管理委員会が、国民投票の結果、憲法草案が承認された旨を発表した (注3) 。 12月15日には、国民議会選挙が大きな混乱もなく実施された (注4) 。同選挙は、国連安保理決議1546等で規定された政治プロセスにおける最後の選挙であり、この結果を踏まえて、正式な国民議会(275議席)が成立する。このように、イラクにおける政治プロセスは、おおむね「基本法」及び安保理決議1546に定められたスケジュールどおり進められてきた。 日本は、同選挙が平和裡に実施されたことについて、政治プロセスの極めて大きな進展として歓迎するとともにイラク移行政府とイラク国民に対する祝意を表し、また、今後もイラク人による国づくりを国際社会と連携しつつ引き続き支援していくことを同政府に伝えた。 |
|