第2章 地域別に見た外交


(2)日米経済関係

 最近の日米経済関係は、かつてのような摩擦に象徴される関係から、建設的な対話を通じた協調の関係へと変貌を遂げている。このような協調の精神に基づいて米国と日本が取り組んでいくべき課題は、WTOドーハ・ラウンドといったグローバルな事項から、アジア太平洋地域における経済分野での協力等の地域レベルの事項、二国間の経済関係に関する事項まで多岐に及んでいる。また、ブッシュ政権は、日本経済の回復が日米両国の経済関係の発展や世界経済全体の成長のみならず、アジア太平洋地域の安定と繁栄に不可欠であるとの認識に基づき、小泉内閣の構造改革を強く支持している。

 「成長のための日米経済パートナーシップ」 (注2) は、こうした日米経済関係の変貌を反映したものであり、日米間ではこの枠組みの下、包括的かつ建設的な対話が行われている。中でも「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」では、日米両国が双方向の対話の原則を基礎として、(1)電気通信、(2)情報技術(IT)、(3)エネルギー、(4)医療機器・医薬品、の各分野と、(5)分野横断的な規制に関する日米双方の種々の問題に取り組んでいる。2005年も各作業部会や次官級の上級会合を開催し、日米両首脳に対する第4回報告書をとりまとめ、11月2日に公表した。また、12月8日には、5年目の対話に関する要望書の交換を行った。

 協調的・建設的な日米経済関係を維持していく上で、日本は個別の案件に対しても以下のように「成長のための日米経済パートナーシップ」の内外での取組を行っている。

 第一に、2003年12月23日に米国ワシントン州でBSE感染の疑いのある牛が確認されたことから、日本が米国産牛肉の輸入を停止していた件について、政府は日本の消費者の食の安全の確保を大前提に、科学的知見に基づき協議を続けてきた。その結果、必要な国内手続きを経て、2005年12月12日、米国産牛肉の輸入を再開すると公表するに至った。米国政府も同日、2000年3月以来、口蹄疫やBSEの発生により停止していた日本産牛肉の輸入の再開を公表した。しかし、2006年1月20日、輸入の認められていない特定危険部位(脊柱)の含まれた子牛肉が日本に到着したことが明らかになり、日本はすべての米国産牛肉の輸入手続きを停止した。

 第二に、WTO協定違反が確定している米国の措置に関する問題について、日本は、ダンピング防止税等の税収を米国内の企業に分配するいわゆる「バード修正条項」と日本製熱延鋼板に対するダンピング防止措置の是正を、米国政府に強く求めてきている。中でも、バード修正条項については、WTO協定違反の状態が是正されなかったことから、9月1日、日本は米国に対し、WTOで承認された対抗措置額の範囲内で特定品目に対し追加関税を賦課する対抗措置を発動した。その後、2006年2月8日、米国において、(1)バード修正条項を廃止する、(2)ただし、2007年10月1日までに米国に輸入された物品に対するダンピング防止税等は引き続き同条項に基づき分配する、という内容を含む2005年赤字削減財政調整法案が成立した。米国でバード修正条項を廃止する法律が成立したことは、これまでの米国に対する日本の働きかけ等が結実したものであり、大きな前進である。ただし今後一定期間は同条項に基づく分配が行われることになるため、政府としては引き続き米国に対し速やかに分配を停止し、同条項を完全に廃止するよう強く働きかけていく考えである。

 第三に、2001年9月の同時多発テロを受けて米国が強化してきている査証(ビザ)取得・更新手続きの厳格化をはじめとする出入国管理の強化の問題について、政府は「成長のための日米経済パートナーシップ」の下の協議の場等あらゆる機会を活用して、テロ対策強化措置が日米間の貿易や投資に悪影響を与えることのないよう米国に申し入れ、協議してきている。




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