(3)米国内情勢
2004年11月の大統領選挙で再選を果たしたブッシュ大統領は、2005年1月の一般教書演説で、2期目の最重要課題として社会保障制度(公的年金)改革を掲げ、国民的な議論を呼びかけて精力的なキャンペーンを展開したが、一般国民の関心は高まらず、議会でも本格的な審議には至らなかった。8月末にはハリケーン「カトリーナ」がルイジアナ州をはじめメキシコ湾岸諸州に甚大な被害をもたらし、この被害への対応は同年後半における内政上の大きな問題の一つとなった。また同時期に、ガソリン価格の高騰が一般国民の家計に大きな影響を与えた。米国中央情報局(CIA)工作員に関する情報の漏洩では政府高官の関与の有無が関心を呼び、10月にリビー副大統領首席補佐官が連邦大陪審から偽証罪で起訴され辞任した。さらに、連邦議会上下両院の共和党幹部のスキャンダルが取りざたされるなど、ブッシュ政権と共和党にとって逆風となる出来事が続いた。
イラクでの米軍兵士の死者数が2,000人を超える中、先行きの不透明感が継続し、ブッシュ政権のイラク政策に対する国民の支持が40%を割る世論調査結果も出て、不支持が支持を上回る状態が続いた。
各種世論調査でブッシュ大統領に対する支持率は1年間を通して徐々に低下し、2005年初めの50%前後から秋にはほとんどの調査で30%台後半まで低下した。これに対しブッシュ大統領は、12月15日のイラク国民議会選挙前後に一連の演説を行い、イラクにおける進展を訴えるとともに米国経済に関する成果についてもアピールした結果、年末には大統領支持率は40%台前半まで回復した。
2005年は、連邦最高裁判事の人事も内政上、大きな注目を浴びた。米国では立法上の解決が困難で世論を二分する文化的・社会的争点(妊娠中絶、同性愛者の権利等)に関して、連邦最高裁を頂点とする司法の影響力が大きい上、最高裁判事は終身職であり、指名した大統領の任期満了後も判事は最高裁に残ることとなる。ブッシュ大統領は9月に死去したレンキスト首席判事の後任にロバーツ連邦高裁判事を指名し、連邦議会上院の承認を得て同判事が新首席判事に就任した。その後、ブッシュ大統領は、7月に辞意を表明していた中道派のオコナー判事の後任にマイヤーズ大統領法律顧問を指名したが、保守派の強い反発もあり、代わって保守派とされるアリート連邦高裁判事を指名した。なお、同判事の就任は2006年2月に承認された。
▼日米経済関係
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