第2章 地域別に見た外交 |
(8)北朝鮮内政・経済
北朝鮮は、金正日国防委員長が主に朝鮮労働党を通じて全体を統治しており、「先軍政治」と呼ばれる軍事優先政策を実施している。 北朝鮮は、1998年以来、思想、政治、軍事、経済の強大国である「強盛大国」の建設を標榜し、近年は経済復興に努力しており、1999年以来6年連続でプラス成長を持続している。2005年の食糧生産高は、前年の収穫を上回ったと見られ、これまで大幅に縮小されていた食糧配給制度が正常化したとされている。一方、こうした食糧増産等を受けてか、北朝鮮は8月に国連世界食糧計画(WFP)など北朝鮮で人道支援に携わる国際機関に対し、支援の態様を「人道支援」から「開発支援」に変更するよう要請し、北朝鮮で活動中の10余りの国際民間支援団体の活動の打切りを求めた。このような動きに対し、日本を含む国際社会は懸念を深めている。 北朝鮮は、社会主義圏崩壊以降の厳しい経済難から、1990年代中盤以降、部分的かつ漸進的な措置に限って改革を実施してきている (注10) 。しかし、エネルギーを含め、全般的な資材・資金不足の中で、そうした措置が生産活動の活性化につながっているのか、貧富の差の拡大をもたらしていないのかなどは不透明であり、引き続き注視していく必要がある。 また、近年中国との経済関係が急速に拡大しており、以前から増加傾向にある貿易面だけでなく、中国から北朝鮮への投資も活発化している。特に中朝国境地域にある茂山鉄山をはじめとする鉱山を中心に投資が活発化しており、10月には中国の無償技術提供により、大安親善ガラス工場が竣工した。10月に胡錦濤中国国家主席が訪朝した際にも経済協力について協議された。2006年1月には金正日国防委員長が訪中し、中国中部・南部の経済施設を視察したが、北京で行われた首脳会談で金正日国防委員長は、中国南部の各経済特区への視察の所感として、その発展ぶりに「新たな感動を受けた」と述べ、中国の改革・開放路線を評価した。北朝鮮は、今後、この視察を踏まえて、現状より更に積極的な経済改革を提示することとなるのかが注目される。 ![]() |
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