(2)拉致問題に関する取組
拉致問題は、日本国民の生命と安全に直接かかわる極めて重大な問題であり、日本政府は日朝間の協議の場で、拉致問題の解決に向けた迅速かつ前向きな行動を繰り返し強く求めるとともに、国連をはじめとする国際場裡においても本問題をとりあげている。4月の国連人権委員会で、拉致問題への言及を含む「北朝鮮の人権状況」決議が採択されたのに続き、12月には、国連総会本会議で初めて「北朝鮮の人権状況」決議が採択された。また、日本は同月、北朝鮮による拉致問題を含め、国際社会における人権問題に取り組む「人権担当大使」を任命した。
拉致問題は国際的な広がりを見せつつある。10月には、日本へ帰国した拉致被害者等の証言で、タイをはじめとする日本以外の国 (注5) でも北朝鮮に拉致された可能性のある者が存在することが明らかとなり、内外の関心が集まった。日本は、これらの国々とも情報交換等を行い、拉致問題の解決に向け、緊密に協力していく考えである。
なお、4月27日、政府は新たに入手した証拠に基づき、田中実氏を拉致被害者と認定したことで、政府が認定した北朝鮮による拉致事案は11件16名となった。
また、日本政府として拉致被害者とは認定していないが、北朝鮮に拉致された可能性を排除できない、いわゆる特定失踪者についても、11月の日朝政府間協議を含む累次の機会に、北朝鮮側に情報の提供を求めてきている。
加えて、日本は以前から北朝鮮に「よど号」ハイジャック犯の身柄引渡しを求めているが、「よど号」犯の元妻の証言等により、「よど号」グループが欧州での拉致事案に関与していたことが明らかとなっている。欧州で北朝鮮工作員と接触していたとして、日本旅券の返納命令が出されていた「よど号」犯の妻等については、2004年までに、帰国した5人が逮捕されている。北朝鮮側に対しては、「よど号」犯の引渡しについても、日朝間の協議の場で重ねて提起してきており、今後も強く求めていく考えである。
「北朝鮮の人権状況」決議って何?
北朝鮮による拉致問題は日本が強く解決を求めている問題ですが、近年では日本の働きかけにより、国連の人権フォーラムにおいても積極的に議論されています。
国連人権委員会では、2003年から3年続けて拉致問題の解決に言及した「北朝鮮の人権状況」決議が採択されました。2005年3月に日本やEUが提出した決議では、北朝鮮側の協力や拉致問題を含む同国の人権状況に改善が見られなければ、国連の他の機関(特に総会)が北朝鮮の人権状況をとりあげるよう要請しています。
同決議を受け、11月には、人権問題等を担当する国連総会第三委員会で、北朝鮮に対し「強制的失踪の形態における外国人の拉致に関する未解決の問題」につき深刻な懸念を表明するとともに、「拉致問題の早期解決を含む過去の人権委員会での決議の履行」等を要請する決議が採択され、総会本会議でも大差の賛成多数により採択されました。国連総会で北朝鮮の人権状況についての決議が採択されたのはこれが初めてです。
一連の決議の採択、特に国連総会における採択は、北朝鮮に対する国際的な圧力となると考えられます。日本は、決議の履行を国際社会とともに北朝鮮に求めていくと共に、人権問題担当の山中●子外務大臣政務官及び2005年12月に新たに任命された齋賀富美子人権担当大使を積極的に活用し、拉致問題を含む北朝鮮の人権問題に取り組んでいきます。
●…「火」へんに「華」 |
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