第2章 地域別に見た外交


(3)北朝鮮に対する「圧力」

 政府の対北朝鮮政策に係る基本的考え方は「対話と圧力」である。「対話」については、日朝政府間の協議や、後述の六者会合を通じて行ってきているが、同時に政府として「圧力」となる措置も講じてきている。

 主要国首脳会議(G8サミット)など多国間の会談や、米国、韓国、中国、タイ等との二国間会談の際には、日本側から拉致問題や核問題を提起し、日本の立場に対する理解と協力を求めてきている。また、前述の「北朝鮮の人権状況」決議やG8サミットの議長声明等には、拉致問題への明確な言及が盛り込まれている。こうした二国間・多国間での取組は、北朝鮮に対する「圧力」となっていると考えられる。

 また、北朝鮮による大量破壊兵器・ミサイル等の拡散活動や不法活動に対しても、関係国と緊密に協力しつつ、必要な措置を政府全体として講じている。拡散に対する安全保障構想(PSI)は、特定の国家を対象とするものではないが、日本の厳格な輸出管理とあわせ、北朝鮮の拡散活動に一定の抑止効果を持っているものと考えられている。また、北朝鮮による通貨偽造や資金洗浄(マネー・ロンダリング)等の不法活動についても、米国など関係国と緊密に情報交換している。3月1日に施行された改正船舶油濁損害賠償保障法も、特定の旗国の船舶を対象とするものではないものの、結果として日本に入港する北朝鮮籍船舶数の大幅減少につながったものと見られる。なお、2004年に議員立法で可決された「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律」(改正外為法)は、日本の平和と安全の維持のため特に必要があると認める場合には、日本政府の判断で送金や輸出入の規制等を実施することを可能にするものである。こうした政策手段があること自体、北朝鮮に対する一つの「圧力」として作用していると考えられる。




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