【領事サービスの向上】
<領事局の発足>
国際間の人の交流が益々活発化する中で、海外における国民との接点である領事業務の重要性は益々高くなっている。
外務省は、国民に対する領事サービスの向上、海外における日本人の安全確保、緊急事態対応の強化等の目的を達成するための領事体制を強化するとの観点から、2004年8月1日の機構改革において、領事移住部を領事局に格上げした。また、領事局の発足と併せて、多岐にわたる領事業務に対してより迅速かつ的確な対応をとること、及びきめの細かい領事サービスを提供するとの観点から、省全体としての取組を促すことを目的として、「領事サービス本部」を設置し、領事サービスの持つ「接遇」と「施策」の両面から、領事サービスの徹底を図る上での課題に取り組んでいる。
このほか、領事体制強化の一環として、専門性を備えた職員の育成を目的とした領事研修の一層の充実を図るなど、ハードとソフトの両面から領事分野の機能強化を進めている。
<領事シニアボランティア>
在外公館の領事窓口を、国民にとって一層訪問し易いものにするため、在外公館における領事サービス向上を提言し、在留邦人からの各種相談への対応を行う「領事シニアボランティア」制度を新たに導入し、2003年12月より現地事情に通じ民間企業等における実務経験に富んだ10名のボランティアを在外公館に配属した
(注1)。領事シニアボランティアは、「領事相談員」という肩書で在外公館の領事窓口において、日本人からの旅券の申請、各種届出等についての案内業務や困りごとの相談を受け付けたりするなど、海外での日本人の保護・利益の増進のための活動を行っている。また、各地の領事シニアボランティアからの提言は、「領事サービス本部」における議論にも役立てられている。

領事シニアボランティア
2003年正月明け、「外務省、ボランティアを募集」の新聞記事に私は釘付けになりました。
還暦後は勤務経験のある米国で日米の架け橋となるようなボランティアを望んでいた私は早速応募し、7月に筆記試験、9月に面接を受けました。その後、10月に採用通知が届き、11月にそれまで勤めていた会社を辞め、12月早々ニューヨーク総領事館へ派遣されました。現在、「領事相談員」として忙しくもやりがいのある日々を送っています。
領事シニアボランティア制度は、外務省改革の一環として、領事業務すなわち在外公館の行政サービスの向上に資するべく2003年12月から開始された制度であり、第1期生として計10名が計10公館に派遣されました。
着任してからは、官民の文化の違いに戸惑いながらも、館を上げての支援を得て、来館者に対する領事窓口での対応や、待合いロビーでの案内を通じて感じたサービス向上につながる改善点の提言、在外選挙登録の促進のための企業訪問を通じた当館に対する要望事項の聴取、邦人援護の手伝いなどを行ってきました。2004年の9月からは、電話、Eメールによる「領事相談コーナー」を立ち上げ、よろず相談を行っています。
相談内容は多岐にわたり、精神障害、離婚、高齢化についての相談も少なからずあり、日本の社会現象が米国に住む在留邦人の間でも同様の傾向にあることが推察されます。意外なことに、相談の20%以上が日本や米国以外にお住まいの方から寄せられます。館内外の皆様の協力を得ながら、いかなる相談に対してもサービス精神に基づく生きた返事をと心がけており、お礼の言葉が何よりのエネルギーとなっています。
さて、当館領事窓口に対する在留邦人の皆様の評判はおおむね良好であり米国同時多発テロ以降の邦人保護に対する意識の向上のため館をあげて努力を重ねた結果と思われますが、良質な領事窓口サービスを継続させるためには何と言っても来訪者と接する最前線の領事窓口での現地職員の役割は大きく、彼らが生き生きと日々業務ができる制度づくりが重要であると考えています。
私を含め第1期生は、それぞれの在外公館の領事サービスに対する現地のニーズを的確に捉え、個々の活動に反映させていることから在留邦人の評価のみならず、それぞれの国のマスコミにもその活動が取り上げられており、外務省の改革努力の広報効果にも寄与しているものと確信しています。領事ボランティア制度の継続による官民の交流を通じて身近な領事館への更なる改革を期しています。
執筆:在ニューヨーク日本国総領事館領事シニアボランティア 市川俊治
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<海外交流審議会>
2004年10月5日には、外務大臣の諮問機関である「海外交流審議会」(会長:熊谷日立製作所特命顧問)が、2年間にわたる領事改革及び外国人問題分野の議論の成果をまとめた答申「変化する世界における領事改革と外国人問題への新たな取組み」を、町村

孝外務大臣に提出し、「国民の視点に立った領事サービス」、「海外における日本人の安全対策・危機管理」、「外国人問題」の3つの重要課題について、具体的な提言を行った。
外務省としては、「海外交流審議会」の答申も踏まえ、海外における日本国民の安全確保を最重要課題の1つとして、各種安全対策や被害者・家族に対する支援をはじめとする事件・事故への対応の一層の強化を図るとともに、領事サービスの向上、さらには人的交流の拡大に伴い、日本に200万人近く滞在する在日外国人が直面する問題についても、関係省庁と連携して、取組を強化している(282ページ参照)。