領事シニアボランティア  2003年正月明け、「外務省、ボランティアを募集」の新聞記事に私は釘付けになりました。  還暦後は勤務経験のある米国で日米の架け橋となるようなボランティアを望んでいた私は早速応募し、7月に筆記試験、9月に面接を受けました。その後、10月に採用通知が届き、11月にそれまで勤めていた会社を辞め、12月早々ニューヨーク総領事館へ派遣されました。現在、「領事相談員」として忙しくもやりがいのある日々を送っています。  領事シニアボランティア制度は、外務省改革の一環として、領事業務すなわち在外公館の行政サービスの向上に資するべく2003年12月から開始された制度であり、第1期生として計10名が計10公館に派遣されました。  着任してからは、官民の文化の違いに戸惑いながらも、館を上げての支援を得て、来館者に対する領事窓口での対応や、待合いロビーでの案内を通じて感じたサービス向上につながる改善点の提言、在外選挙登録の促進のための企業訪問を通じた当館に対する要望事項の聴取、邦人援護の手伝いなどを行ってきました。2004年の9月からは、電話、Eメールによる「領事相談コーナー」を立ち上げ、よろず相談を行っています。  相談内容は多岐にわたり、精神障害、離婚、高齢化についての相談も少なからずあり、日本の社会現象が米国に住む在留邦人の間でも同様の傾向にあることが推察されます。意外なことに、相談の20%以上が日本や米国以外にお住まいの方から寄せられます。館内外の皆様の協力を得ながら、いかなる相談に対してもサービス精神に基づく生きた返事をと心がけており、お礼の言葉が何よりのエネルギーとなっています。  さて、当館領事窓口に対する在留邦人の皆様の評判はおおむね良好であり米国同時多発テロ以降の邦人保護に対する意識の向上のため館をあげて努力を重ねた結果と思われますが、良質な領事窓口サービスを継続させるためには何と言っても来訪者と接する最前線の領事窓口での現地職員の役割は大きく、彼らが生き生きと日々業務ができる制度づくりが重要であると考えています。  私を含め第1期生は、それぞれの在外公館の領事サービスに対する現地のニーズを的確に捉え、個々の活動に反映させていることから在留邦人の評価のみならず、それぞれの国のマスコミにもその活動が取り上げられており、外務省の改革努力の広報効果にも寄与しているものと確信しています。領事ボランティア制度の継続による官民の交流を通じて身近な領事館への更なる改革を期しています。 執筆:在ニューヨーク日本国総領事館領事シニアボランティア 市川俊治 ▲派遣前のボランティア研修を終え、記念撮影をするボランティア10名と両角領事(前列一番右)。前列右から3番目が筆者