第3章 分野別に見た外交


気候変動問題
 日本は、従来から気候変動問題に重点的に取り組んでいる。2004年11月、日本の度重なる働きかけもあり、ロシアが京都議定書(225ページ参照)を締結したことで、同議定書は、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3:京都会議)における採択から7年余りを経て2005年2月16日に発効することとなり、地球温暖化防止の第一歩が踏み出された。
 2004年12月6日から18日までアルゼンチンのブエノスアイレスにおいて開催された気候変動枠組条約第10回締約国会議(COP10)は、京都議定書が付属する本体条約である気候変動枠組条約の発効10周年に当たるとともに、同議定書の発効を目前に控えた重要な会議となった。京都議定書の約束期間以降(2013年~)を視野に入れた将来の枠組みに関する検討が2005年末までに始まることを踏まえ、COP10では、すべての国の参加の下に、中・長期的な将来の行動に向けた情報交換を通じた取組を開始することが決定された。また、洪水、干ばつなど気候変動の悪影響への適応策として、途上国に対する資金支援や人材育成支援に加え、「5カ年行動計画」(注4)の策定が決議された。日本は、途上国への支援について、ODAを中心とした温暖化対策支援である「京都イニシアティブ」(注5)の着実な実施ぶりなどを紹介しつつ、引き続き支援していく旨表明し、参加各国より高い評価を得た。その一方で、京都議定書が発効しても、地球温暖化対策の実効性を一層確保していくため(注6)、今後すべての国が参加する共通のルール構築が必要であり、その考えから日本はCOP10において、将来の枠組みに関する議論を開始すべきであることについても積極的に関係国に働きかけた。日本は、地球規模で温室効果ガス排出を削減するためには米国や開発途上国に対する働きかけが重要であるとの立場から、日米政府間ハイレベル・事務レベル協議等を通じて、京都議定書への米国の参加及び一層の温室効果ガス排出削減の努力を求めている。また、2003年に引き続き2004年9月に東京で「気候変動に対する更なる行動」に関する非公式会合(注7)をブラジルとの共同議長の下で主要先進国及び途上国を招いて開催し、今後の排出削減に向けた具体的な行動について率直な意見交換を行い、各国より高い評価を得ている。



▲気候変動枠組条約第10回締約国会議出席後、インタビューを受ける小野寺五典外務大臣政務官(12月)



Excelファイルはこちら

京都議定書Q&A

Q.2005年2月16日に発効した京都議定書の目的と内容は?
A.京都議定書は、1992年に採択された気候変動に関する国際連合枠組条約の目的である「大気中の温室効果ガスの濃度を危険のない水準で安定化させること」を達成するため、1997年の京都会議(COP3)で採択されました。京都議定書は、1)先進国をはじめとする国々が、全体で温室効果ガス※1の総排出量を2008~12年の間に1990年の水準から少なくとも5%(日本については6%の削減目標が割り当てられている)削減すること、2)この約束を達成するため、国内での排出を削減する努力に加えて、例えば、国内の森林、農地や放牧地の回復などを通じて温室効果ガスを除去することを示唆しているほか、「京都メカニズム」と総称される3つの制度を活用できることを主に定めています。

Q.京都メカニズムについて分かりやすく教えてください。
A.京都メカニズムは、京都議定書の削減約束を達成するための柔軟的措置のことです。これは(ア)先進国と途上国が共同で削減事業を実施し、その削減分を投資国(先進国)側の排出枠にふりかえることができる「クリーン開発メカニズム(CDM)」、(イ)先進国同士が共同で削減事業を実施し、その削減分を投資国が同じように自国の目標達成分にふりかえることができる「共同実施(JI)」、そして(ウ)先進国同士がそれぞれ割り当てられた目標を達成する上で、排出枠を売買する「排出量取引」の3つからなります。京都メカニズムは、温室効果ガスの削減費用が各国間で異なっている中で、世界全体で経済効率的に削減を進める観点から、削減費用の低い国から高い国への削減量や排出枠の移転を認めるという考え方に基づいています。
京都議定書に規定されている1990年度比6%の削減目標は、京都議定書の発効によって日本が国際的に結んだ法的な約束となりました。この約束を果たすには、国内の各界各層の人々が一体となって目標を達成するための努力を行う必要があります。日本政府としても、1998年以来「地球温暖化対策推進大綱」に基づく各種の国内対策・施策を推進してきました。日本政府は、京都議定書の約束を少ない費用でより大きな効果が出せるよう達成するため、第一義的には国内対策を中心に進め、京都メカニズムの利用についてはそれを補うのにとどまるとの原則を踏まえつつ、2005年の春に策定される予定の「京都議定書目標達成計画」※2を踏まえて京都メカニズムを適切に活用していく考えです。

※1 地球からの熱放射を吸収して気温を高くする性質を持つ、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン、バーフルオロカーボン、六フッ化硫黄の6種類の気体
※2 京都議定書目標達成計画:京都議定書の発効に伴い、「地球温暖化対策推進大綱」に代わる新たな計画として、京都議定書の目標を達成する対策・施策の全体像を明らかにするもの。議定書が発効した2月16日より施行された「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」は、同計画を定める政府の義務を規定している。

テキスト形式のファイルはこちら

 



テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む