第3章 分野別に見た外交 |
【核軍縮】
日本は、核兵器のない平和で安全な世界の実現のために、核兵器不拡散条約(NPT)を礎とする国際的な核軍縮・不拡散体制の維持・強化が重要と考えている。2004年4月26日~5月7日、「2005年NPT運用検討会議」(注35)の第3回準備委員会がニューヨークにて開催され、123か国の締約国が出席した。日本は、会合に先立つ3月にNPTに関するワークショップをインドネシアと共催したほか、演説や作業文書の提出を通じて会合に積極的に参加し、NPTを基礎とする国際的な核軍縮・不拡散体制を維持・強化する必要性を強く訴えた。しかし、同準備委員会では、2005年運用検討会議開催に関わる手続事項の一部にしか合意が達成されなかった。日本としては、2005年のNPT運用検討会議において、NPT締約国が一丸となってNPTへの信頼を強化するためのメッセージが打ち出せるよう引き続き国際社会に働きかけていく考えである。
日本は、包括的核実験禁止条約(CTBT)を、IAEAの保障措置(注36)と並び、NPTを基礎とする核軍縮・不拡散体制の不可欠の柱として捉え、その早期発効を核軍縮・不拡散分野の最優先課題の一つとして重視している。そのような観点から、川口順子外務大臣(当時)は、2004年9月、ニューヨークにおいてCTBTフレンズ外相会合を共催し、CTBT未署名・未批准国への署名・批准を求める外相共同声明を採択した。
さらに、日本は、核軍縮を進める具体的措置として、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の交渉開始も重視している。ジュネーブ軍縮会議(CD)では、2004年会期においても、カットオフ条約交渉の開始を含む作業計画に合意することはできなかったが、日本は、今後とも、関係各国とも協調しながら、同条約交渉の早期開始に向けた外交努力を継続していく方針である。
現実的、漸進的に核軍縮を進めるために、日本は、1994年以来毎年、国連総会に核軍縮に関する決議案を提出し、国際社会が軍縮のために取り組むべき目標を提示してきている。2004年12月には、国連総会において日本が提出した「核兵器の全面的廃絶への道程」決議案が、圧倒的多数(注37)の支持を得て採択された。今回の賛成票数では過去11年間で最多を記録するなど、核廃絶に向けた国際社会における意思形成は着実に進展している。
また、日本は核軍縮・不拡散及び日本海周辺の環境汚染を防止する観点から、ロシア極東地域に残されたロシア退役原子力潜水艦の解体支援(注38)を実施してきた。本事業は「希望の星」と命名され、2004年12月にその最初の案件となるヴィクターIII級原潜解体プロジェクトを成功裡に終了した。次のステップとして、現在、日本は、ロシアと新たに5隻の退役原潜解体支援のための実施取り決めについて協議を行っている。
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