第3章 分野別に見た外交


【保障措置の強化・効率化に関する外交努力】
 国際原子力機関(IAEA)の保障措置は、核物質等が軍事的目的に転用されないことを確保するための検認制度であり、国際的な核不拡散体制の実効性を確保する上で中核をなす制度である。核不拡散体制の維持・強化を主要な外交課題の一つに掲げる日本は、保障措置の強化のために積極的な貢献を行ってきた。特に、日本は、可能な限り多くの国が保障措置の強化のための「追加議定書」(注39)を締結することが重要であるとの認識の下、二国間・多国間の協議の場を捉え「追加議定書の普遍化」のため、各国に追加議定書の締結を求めてきている。同時に、日本は、IAEAが有する限られた人的・財政的資源の効率的な運用を重視しており、IAEA事務局に対して保障措置活動の一層の効率化を求めてきている。この観点から、日本は、「統合保障措置」(注40)がより多くの国に適用され、それに伴って保障措置の受入国及びIAEA双方の負担や経費が軽減されることを歓迎している。なお、日本については、2004年6月、IAEAが、日本のすべての核物質がIAEAの保障措置下にあり、平和的目的のために利用されている旨の結論を出し、2004年9月から統合保障措置が導入されている。
 また、2004年9月に判明した韓国の保障措置の問題は、追加議定書の効用を改めて認識させる事案であった。韓国は、同年2月に追加議定書が発効したことに伴い、同議定書に基づく冒頭申告を8月にIAEAに提出したが、その過程で、過去に数名の科学者によってレーザー法によるウラン濃縮実験等が行われていたことが判明した。本件は9月、11月のIAEA理事会で取り上げられ、議論が行われた結果、国連安全保障理事会に報告することはせず、未解明の事項についてIAEAが引き続き検証活動を行うこととなった。

 



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