第3章 分野別に見た外交 |
【焦点となった地域問題】
北朝鮮の核問題については、2004年2月に第2回、6月に第3回六者会合が開催され、核問題の平和的解決に向けた協議が行われた。北朝鮮は、第3回六者会合において第4回六者会合を9月末までに開催することに合意していたが、その後、同会合の開催に応じていない。北朝鮮の核問題は日本の安全保障に直結する問題であるとともに、国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦であるため、日本は、六者会合や同年5月の日朝首脳会談を通じ、北朝鮮に対し核計画の廃棄を直接働きかけるのみならず、国際原子力機関(IAEA)でも、関係国と密接に協力しつつ、平和的解決に向けた外交努力を続けている(詳細は26ページ参照)。
イランは6月、累次のIAEA理事会決議の要請に反してウラン濃縮関連活動を再開し、国際社会の懸念は急激に高まった。しかし、11月のIAEA理事会前に、英国・フランス・ドイツとイランの間でウラン濃縮関連活動の停止を含む合意が成立し、2005年1月現在、イランはウラン濃縮関連活動を停止している。日本は従来よりイランに対し、あらゆる機会を捉え累次のIAEA理事会決議のすべての要求事項を誠実に履行するよう働きかけてきている。
10月、イラク監視グループ(ISG)は、イラクにおける大量破壊兵器の実態に関する報告書を発表した。同報告書は、イラクにおいて核・化学・生物兵器のいずれについても大量破壊兵器の備蓄は発見されなかったとする一方で、サダム・フセイン元イラク大統領は制裁が解除された際に大量破壊兵器計画を再構築できる能力を維持する意図を有していた旨評価した。
パキスタンにおいては、2月に「核開発の父」と呼ばれるカーン博士を含む科学者が、核関連技術の国外流出に関わっていたことが明らかになった(注34)。パキスタンの科学者により核関連技術が流出したことは、国際社会の平和と安定、核不拡散体制を損なうものであり、とりわけ流出先の一つと目されている北朝鮮への流出は、日本の安全保障上の重大な懸念である。そのため、日本政府はパキスタン政府に対し、累次の機会に遺憾の意を伝えるとともに、本件に関して日本に情報を提供し、再発防止策等を講ずるよう強く求めてきている。また、日本政府は輸出管理の強化のために、パキスタンとの間で不拡散専門家協議(4月)を実施した。パキスタン政府は、この機会に、再発防止のために輸出管理のための国内法を新たに制定することを明らかにし、9月に輸出管理法を成立させた。日本としても、引き続き同法の実施に向けて協力していく考えである。
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