第2章 地域別に見た外交 |
【アジア太平洋経済協力(APEC)】
アジア太平洋地域の多様な21メンバーから構成されるアジア太平洋経済協力(APEC)は、域内の持続可能な発展を実現するため、貿易・投資の自由化、貿易・投資の円滑化、経済・技術協力を3つの柱として活動し、「開かれた地域協力」と「協調的・自主的な行動」を基本原則として、アジア太平洋地域における共同体意識の醸成、一体性の確保に貢献してきた。
日本経済の長期的発展・安定を確保する上で、日本の貿易量の約7割、直接投資の約4割を占めるAPEC域内での経済面での協力を深め、APECメンバーとの信頼関係を強化していくことは極めて重要である。また、毎年開催されているAPEC首脳・閣僚会議は、近年経済問題にとどまらず、テロ対策・不拡散問題を中心とする安全保障問題をはじめ、国際社会の主要な関心事項につき、首脳・閣僚間で率直な意見交換を行う有意義な場となっている。
2004年はチリが議長を務め、各種の関連会合がチリで開催された。9月には、日本は東京において「APEC構造改革ハイレベル会合」を主催し、アジア太平洋地域における構造改革の取組について意見・情報の交換、経験の共有などを行った。これは、2003年のAPEC首脳会議において小泉総理大臣が提案し各首脳の支持を得た、APECメンバーによる構造改革実施の確約を行動に移すための取組の一つであり、同会合の成果をもとに日本が提案した「構造改革実施のための首脳の課題」(注57)が、11月にチリのサンティアゴで開催された首脳会議において採択された。
また、同首脳会議においては、2005年12月の香港での第6回WTO閣僚会議の成功に向けてAPECの強い決意を示したほか、APEC域内でも増加する各メンバーによるFTAの取組を踏まえ策定した「FTAベスト・プラクティス」(注58)を承認した。さらに、2003年首脳会議における、APECとしてテロリスト撲滅や不拡散問題等の安全保障上の課題に取り組むとの首脳の確約を具体的に実施するため、APECとして優先的に取り組むべき個別事項を合意した。このほか、昨今のアジア太平洋地域をめぐる情勢を踏まえ、テロ・不拡散問題以外にも、エイズを中心とする感染症やエネルギー安全保障についても活発な議論が行われ、幅広い安全保障問題が討議された。
▲APEC首脳宣言を発表する各国首脳(11月 提供:内閣広報室)
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