第2章 地域別に見た外交 |
【北朝鮮内政・経済】
北朝鮮は、金正日国防委員長が主に朝鮮労働党を通じて全体を統治しており、「先軍政治」(注9)と呼ばれる軍事優先政策を実施している。2004年11月、北朝鮮国内で金正日国防委員長の肖像画が取り外されたとする報道、また、同月、北朝鮮の放送で同氏に敬意を示す修飾語が削除されたとの報道がなされたが、北朝鮮内部で体制に関する異変が生じているとの確認情報はない。
北朝鮮は、1998年以来、思想・政治、軍事、経済の強大国である「強盛大国」(注10)の建設を標榜し、近年は、経済の復興に努力しており、1999年以来5年連続でプラス成長を持続している。しかし、北朝鮮の経済は依然として困難な状況にあり、特に、電力をはじめとするエネルギー不足は深刻な状況にあると見られている。また、農業生産は、2001年以来引き続き回復傾向にあり、2004年の食糧生産は、昨年の収穫を3%上回ったものと見られているが、食糧の国内生産は依然として必要最低限の生産量以下にとどまっており、外部からの食糧支援に頼らざるを得ない状況であるとされている。
北朝鮮は、社会主義圏崩壊以降の厳しい経済難から、1990年代中盤以降、「実利」を打ち出しつつ、部分的かつ漸進的な措置に限って改革を実施してきている。特に、2002年7月1日の「経済管理改善措置」において、1)物価・賃金・交換率等の価格体系の大幅調整(注11)
による価格体系の現実化、2)個別単位の自律権の拡大(注12)、インセンティブ制度(注13)の導入等による生産意欲及び効率性の向上、3)配給制度の段階的廃止、4)公共料金の引き上げ等を通じた社会保障の縮小、といった広範囲な全面的改革を実施した。
また、2003年から、設置され始めた総合市場は、現在、北朝鮮全土で300か所余りに設置され、電気製品、衣料品、食料品等多様なものが売られている。
今後、改革のための措置がいかなる速度で、また、いかなる範囲に広がるかについて拝金主義、貧富の差の拡大等の負の面と併せ、注視していく必要がある。
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