第2章 地域別に見た外交 |
【北朝鮮の核問題(注6)】
2004年は、六者会合が2月、6月の2回にわたり開催され、特に6月の第3回会合では、米国及び北朝鮮の双方より具体的提案がなされるなど、核問題の解決へ向けた前向きな動きが見られた。しかし、同会合以降、北朝鮮が六者会合への参加に消極的な姿勢をとったことから、次回会合を9月末までに開催するとの第3回会合での合意にもかかわらず、第4回会合の年内開催は実現しなかった。
六者会合プロセスにおける具体的な動きは次のとおりである。すなわち、2004年2月、北京において第2回六者会合が開催され、日本は、第1回会合時と同様、北東アジアの平和と安定に向け、六者会合のプロセスを通じて、北朝鮮の核計画の廃棄を実現し、問題の平和的解決を図ることを基本として会合に臨んだ。第2回会合では、関係六者間で、朝鮮半島の非核化が共通の目標であることを改めて確認し、6月末までに北京で第3回会合を開催すること、及びその準備のため作業部会を設置することで認識が一致した。このように、第2回会合では、六者会合プロセスの「制度化」に成功し、問題の解決へ向け一歩前進の方向へ向かったと言えるが、一方で、廃棄の対象となる「すべての核計画」の範囲(日本、米国及び韓国は、文字通り「すべての核計画」の完全、検証可能かつ不可逆的な廃棄を求めるとの立場であるが、北朝鮮は、原子力の平和的利用は認められるべきであり、廃棄の対象を「核兵器計画」に限定すべきであるとの立場)や北朝鮮におけるウラン濃縮計画の存否につき、六者間の立場の違いは依然大きく開いたままであった。
その後、しばらく北朝鮮より問題解決に向けた前向きな発言が続いた。例えば、4月、金正日国防委員長が中国を訪問した際には、金正日国防委員長自ら、「非核化の最終目標を堅持し、対話を通じた平和的解決を追求」し、「六者会談過程に積極的に参加し、会談に進展をもたらすよう寄与」する旨発言し、また5月に小泉総理大臣が訪朝した際には、金正日国防委員長より、朝鮮半島の非核化が最終目標である、六者会合を活用して平和的解決に努力したい、核の凍結は非核化の第一歩であり、検証が伴うものである旨の発言があった。
こうした中、5月には、第1回目の作業部会が開催され、第3回会合の準備として突っ込んだ意見交換が行われた。6月には、第3回会合及びこれに先立って第2回目の作業部会が開催された。第3回会合では、米朝双方より、核問題の解決に向けた具体的提案がなされた結果、ウラン濃縮計画の存在等の点で六者間の相違は依然として残ったものの、極めて実質的な意見交換が行われた。即ち、北朝鮮より、従来からの主張である「凍結対補償」提案の詳細について、現在稼働中の核兵器関連施設等が「凍結」の対象となること、凍結に対する「補償」として200万キロワット相当のエネルギー支援に米国が参加することが必要であること、「テロ支援国家」(注7)から北朝鮮を削除すべきこと等の説明・主張がなされた。これに対し、米国も、北朝鮮が全ての核計画を廃棄することを前提として、初期の段階において行うべき事項として、全ての核計画等を申告し、停止し、それらを監視下に置くことなどを求めた上で、こうした措置が実現するにしたがい、米国を含む関係国が暫定的な多国間の「安全の保証」を提供すること、長期的なエネルギー支援につき検討を開始することなどを提案した。
しかし、第3回会合以降、北朝鮮は次第に態度を硬化させていった。北朝鮮は、大量の脱北者の韓国入国(7月)、韓国による過去のウラン濃縮・プルトニウム分離実験等の判明(9月)、米国における「北朝鮮人権法」(注8)の成立(10月)等を挙げつつ、六者会合の基礎が破壊されたと主張、第3回六者会合の際に合意した2004年9月末までの第4回六者会合の開催に結局応じなかった。
その後、11月2日のブッシュ米大統領再選を受け、六者会合の年内再開に向けた外交努力が払われた。例えば、11月にチリで開催されたAPECでは、北朝鮮を除く六者会合の参加国の首脳間で、六者会合を早期に再開することで一致した。また、同じく11月に平壌で行われた第3回日朝実務者協議の際の金桂冠(キムケグァン)外務副相との会談や、ニューヨークでの米朝接触等の機会にも、日本及び米国よりそれぞれ、北朝鮮に対し、六者会合の早期再開に応じるよう働きかけた。しかし、これに対し、北朝鮮は、米国の対北朝鮮政策を非難し、現在は会合開催の環境にないとの立場を繰り返した。12月4日には、「第2期ブッシュ政権発足まで対応を見守る」との北朝鮮外務省スポークスマン談話を発出、結局、2004年内の第4回六者会合開催は実現しなかった。
なお、北朝鮮は、2005年に入ってからも、外務省声明(2月10日)を発出し、核兵器の製造や六者会合への参加の無期限中断を表明するなど、引き続き、核問題の解決に向けて、極めて非生産的な態度をとっている。
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