第2章 地域別に見た外交 |
【総論】
日本を取り巻くアジア・大洋州地域の安定と繁栄の確保は、日本の安全と繁栄のために不可欠であり、アジア・大洋州諸国との関係の強化が重要である。このため、日本は以下に挙げるような様々な事情を考慮に入れつつ、この地域に対する外交政策を展開している。
まず、アジア・大洋州地域は、中国、インド等の急速な経済発展などを背景に、経済的な潜在力とダイナミズムの中心となっている(注1)。また、東アジアを中心として様々な分野からの域内各国の相互依存関係が急速に進み、経済連携協定のネットワークの形成、テロ・海賊・人身取引等の国境を越える問題に関する協力といった各種の機能的な結びつきが、日本、東南アジア諸国連合(ASEAN)、中国、韓国のほか、インド、オーストラリア、ニュージーランド等を巻き込みつつ将来の東アジア共同体の形成も視野に深化しつつある(ASEAN+3の項参照)。アジア・大洋州地域は政治的価値、経済的発展段階、文化、宗教等の面で多様であるが、そのような中で重層的な協力が深化しつつある傾向は地域の安定・繁栄のためにも望ましいものである。
その一方で、朝鮮半島をめぐる情勢、台湾海峡をめぐる情勢といった日本の安全保障にも直結する問題、東南アジアにおけるテロの発生や海賊、組織犯罪といったいわゆる「国境を越える犯罪」など、地域の平和と安定を確保する際の不安定な要素が依然として存在している。また2004年12月26日に発生したスマトラ島沖大地震及びインド洋津波被害は、自然災害に対する脆弱な地域があることを示した。
以上の状況を踏まえ、日本は以下の3点を基本的な方針として、アジア・大洋州外交に取り組んでいる。第一は、この地域に安定した国際関係を構築するため、不安定化の動きに対する抑止力を引き続き確保しつつ、外交的努力により問題の解決を図り、また平和の定着のための様々な努力を継続していくことである。第二は、金融、経済連携、国境を越える問題等の広い分野における機能的協力を積極的に主導し、この地域全体をさらに発展させること、第三に、アジア・大洋州地域の域内のみならず、地域の安定と繁栄の確保のために、重要な役割を果たしている域外の国・地域との間で引き続き対話・協力を継続・強化し、アジア・大洋州地域を「開かれた」地域にすることである。
この方針の下で、2004年においては、各国・地域の首脳・閣僚との種々の二国間会談及びASEAN+3(日中韓)首脳会議、日・ASEAN首脳会議、日中韓首脳会議等の多国間会議を通じた対話を進め、地域協力の推進に努めた。また、北朝鮮情勢をめぐる日本、米国、韓国、中国、ロシア、北朝鮮による六者会合等の安全保障分野における問題解決の努力、日中経済パートナーシップ協議、日韓FTA共同研究会、日・ASEAN包括的経済連携構想等の経済分野における協力など様々な分野での協力を積極的に推進してきた。さらに、APEC(アジア太平洋経済協力)、ASEM(アジア欧州会合)、ARF(ASEAN地域フォーラム)、FEALAC(東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム)等の多国間の枠組み及び二国間の首脳・閣僚会談を通じ、域外の国・地域との間においても、幅広い分野における協力関係の強化に努めてきた。
なお、小泉総理大臣が2004年元旦に靖国神社を参拝したことに対して、中国及び韓国からは遺憾の意を表する申し入れがあった。
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