1 多角的貿易体制の強化
【多角的貿易体制の重要性】
日本経済の発展は貿易に大きく依存している。日本が今日のような高度に発展した国となり得たのは、第二次世界大戦後に発足したGATT
(注1)体制の下で多角的貿易体制が形成され、関税等の貿易障壁を相互に削減する交渉を通じて、その利益を享受してきたからである。この多角的貿易体制を強化するために設立された
世界貿易機関(WTO)(注2)において行われている新たな交渉が「ドーハ開発アジェンダ」
(注3)(WTO新ラウンド交渉)である。日本は〔1〕貿易の更なる自由化、〔2〕国際化の時代に対応した新たなルール作り、〔3〕貿易自由化による開発途上国の経済発展への貢献を課題としながら積極的に交渉に参加し、日本の国益にかなった野心的かつバランスのとれた妥結を目指している。
また、貿易交渉については、現在様々な地域で推し進められている経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)とWTOによる多角的自由貿易体制の関係が調和的になるよう整理していくことも大きな課題である。EPA/FTAにおいてはWTOでの交渉以上の自由化約束を取り付けられる点が強調される一方、EPA/FTAが乱立する世界では、関税構造が複雑化し、異なるルールが入り乱れ、かえって国際経済活動のコストが高くなるという面もある。また、農業補助金の削減等、多国間でのルールでなければ意味をなさない分野もある。多国間で十分な自由化、レベルの高いルール策定を実現することが、健全な世界貿易発展のための大前提であり、EPA/FTAは多角的貿易体制を補完するものと位置付けるべきである。日本としては、WTO新ラウンド交渉とEPA/FTAの積極的な推進を両輪として日本の経済成長を促し、世界経済の安定的発展にも寄与していく必要がある。