【
イラン】
<イラン情勢と国際社会の取組>
内政面では、政府が保守系機関による憲法違反や恣意的な国会選挙立候補者資格審査を抑制するために提出していた国会選挙法改正法案と大統領権限強化法案がともに国会で可決(3月、4月)されたものの、その後憲法擁護評議会により否決された(4月、5月)ことを受け、ハタミ大統領の支持基盤が弱まりつつある。6月、大学民営化に反対した学生の抗議運動を発端にテヘラン市内のみならず、地方都市でも騒擾が発生した。2004年2月の第7期国会選挙が、改革派のこれまでの成果に対する国民の失望感が広がり現職改革派系国会議員等大量の候補者の立候補が認められない中実施され、保守派が圧勝した。
外交面では、イランの核問題が国際社会の注目を集め、6月のG8首脳会議や国際原子力機関(IAEA)理事会等の場で大きく取り上げられ、国際社会は強い懸念を表明した。中でも、9月及び11月のIAEA理事会決議は、イランに対し、主にIAEAとの完全な協力、追加議定書の早期締結・完全履行・暫定的な実施、ウラン濃縮関連・再処理活動の停止を求めている。これに対し、イランは、12月に追加議定書の署名を行う等前向きな対応を見せている。
米英軍のイラクへの武力行使に際し、イランは反対の意思を表明しつつ、「積極的中立」の立場に基づき、交戦国への軍事的支援を行わない一方、ハラズィ外務大臣が欧州や近隣諸国の外務大臣と電話会談等を行い、国連安全保障理事会の役割を強調するとともに、戦争の早期終結を訴えた。
<日本の取組>
日本は、中東地域の大国であるイランが国内改革や国際社会との関係拡大を推進し、中東地域や国際社会の平和と安定のために一層積極的役割を果たすよう、イランに対し対話を通じた働きかけを行ってきている。特にイランの核問題については、日本は唯一の被爆国として、日イラン外相会談(8月、11月)をはじめとするあらゆる機会を捉え、強い懸念を伝達してきている。今後も、日本としては、イランの前向きな対応を歓迎するとともに、イランが累次のIAEA理事会決議のすべての要求事項を誠実に履行するよう働きかけることにより、この問題の解決を目指している。
12月にイラン南東部バム市で発生した地震に対しては、日本は国際緊急援助隊医療チームの派遣、総額32万ドル相当の援助物資供与(一部物資を自衛隊機で急送)、77万ドルの緊急無償資金協力、81万ドルのNGOへの支援のほか、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金を通じ、50万ドルの拠出を実施した。イランは日本からの支援に感謝するとともに、復興についても地震国である日本の経験に基づいた協力を求めてきている。
また、2004年2月には、国際石油開発(INPEX)とイラン国営石油会社(NIOC)他との間でアサデガン油田開発契約への署名が行われた。