【湾岸諸国情勢】
湾岸諸国は、湾岸の大国であるイラン、イラクとの政治的・軍事的なバランスをとるため米国との関係を重視してきた。イラクのフセイン政権の崩壊により、湾岸地域の地政学的状況は大きく変化し、各国は新たな状況への対応を模索している。
イラク問題では、湾岸諸国はイラクに対する武力行使には慎重な姿勢を示し、安保理決議に基づく平和的解決を支持し、また、フセイン政権崩壊後、米英主導で設立されたイラク統治評議会に正統性を与えることには、クウェートを除き慎重な態度を示した。イラクの再建・復興についても、湾岸諸国は米英の政策等に否定的な国民感情に配慮し、国連の関与を求める等多くの国が明確な立場を示さなかった。
湾岸諸国の治安状況はこれまで比較的良好であったが、サウジアラビアの首都リヤドで2003年5月と11月に大規模な自爆テロ事件が発生した。こうした状況を受けて、サウジアラビアは国内での取締りや金融面での規制を強化する等本格的な治安対策に乗り出した。
<日本の取組>
中東地域の平和と安全保障の確保は、国際社会全体の平和と安定の実現に大きな影響を与え得ること、また、中東地域は、日本がエネルギー資源の8割以上を依存している戦略的に重要な地域であることから、日本は同地域の平和と安定、繁栄の実現に向けて、湾岸諸国が抱える様々な事情に配慮しつつ、対湾岸外交を展開している。
イラクでの大規模な戦闘終了後の2003年5月、小泉総理大臣はサウジアラビアを訪問し、アブドラ皇太子とイラク情勢につき協議するとともに「日・アラブ対話フォーラム」の創設を提唱した。また、イラク人道復興支援特措法成立後、12月には高村元外務大臣がサウジアラビアを、逢沢外務副大臣がクウェートを、それぞれ総理大臣特使として訪問し、日本の立場を説明した。また、12月には、アラウイ・オマーン外務担当国務大臣が来日し、川口外務大臣とイラク情勢等地域情勢につき協議した。
日本は中長期的な視点に立って対湾岸諸国外交を強化するため、人的交流や文化交流をはじめとする湾岸諸国との幅広い協力関係を構築していく考えである。具体的にはイスラム世界との文明の対話の促進、水資源開発・環境協力、幅広い政策対話の促進を3本柱に据えた、河野イニシアティブを進めており2003年10月、東京で第2回イスラム世界との文明間対話セミナーを実施した。