第2章 地域別に見た外交
第1節
アジア・
大洋州
【総論】
日本を取り巻くアジア・大洋州地域の安定と繁栄を確保することは、日本の安全と繁栄のために不可欠である。このため、この地域に民主的な統治制度や先進的経済システムを徐々に根付かせるべく、日本はこの地域の諸国を支援し、連携を強化している。
このような日本のアジア・大洋州外交は、次の四つの要素を常に考慮に入れて展開されている。
第一に、アジア・大洋州地域の人口は世界の人口の5割を超え(約34億4,447万人)
(注1)、域内のGDP総額も世界の約4分の1を占めており(7兆8,730億ドル)
(注2)、経済力を中心とする国力が今後高まる可能性と、1997年のアジア通貨危機等に見られるようにその政治・経済システムの脆弱性とが並存している。第二に、中国が急速な経済発展及び積極的な外交を背景としてその影響力を急速に拡大させており、また、着実な経済発展及び高い技術力を背景とするインドの存在感が漸増している。第三に、朝鮮半島をめぐる情勢、インド・パキスタン関係、台湾海峡等の国家・地域間の緊張及び東南アジアにおけるテロ事件の発生や海賊行為といったいわゆる「国境を越える犯罪」など、域内の平和と安定を確保する際の不安定な要素が依然として存在している。第四に、ASEAN+3、日中韓三国間協力や経済連携協定・自由貿易協定の推進といった形で幅広い分野での地域協力推進へ向けた動きが着実に育っている。
これらの要素を踏まえ、日本は以下の3点を基本的な方針として、アジア・大洋州外交に取り組んでいる。一つは、この地域に安定した国際関係を構築するため、不安定化の動きに対する抑止力を引き続き確保しつつ、「対話」を重視し問題の解決を図り、また、「平和の定着」のための様々な努力を継続していくこと、二つめは、経済分野をはじめとする幅広い分野において地域協力を積極的に主導し、この地域全体を先進的な地域へと発展させること、さらに、アジア・大洋州地域の域内のみならず、必要に応じて域外の国・地域との間で引き続き対話・協力を継続・強化し、アジア・大洋州地域を「開かれた」地域にすることである。
この方針の下で、2003年、各国・地域の首脳・閣僚と種々の二国間会談及び日・ASEAN特別首脳会議、ASEAN+3首脳会議、日中韓首脳会合、島嶼国サミットなどの多国間会議を通じた対話を進めた。さらに、北朝鮮情勢をめぐる日本、米国、韓国、中国、ロシア、北朝鮮による六者会合等の安保分野における問題解決の努力、日中経済パートナーシップ協議、日韓FTA共同研究会、日・ASEAN包括的経済連携構想等の経済分野における協力など様々な分野での協力を積極的に推進している。また、APEC(アジア太平洋経済協力)、ASEM(アジア欧州会合)、ARF(ASEAN地域フォーラム)、FEALAC(東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム)等の多国間の枠組み及び二国間の首脳・閣僚会談を通じ、域外の国・地域との間においても、幅広い分野において、協力関係を強化してきた。
以上のように、日本はアジア・大洋州地域の安定した友好的な国際環境、及び貿易や投資など日本の経済活動の促進に資するような経済環境の確立のため、民主的な統治制度や先進的経済システムを徐々に根付かせるべく、この地域の諸国を支援し、アジア・大洋州地域の安定と繁栄の確保に努めている。
なお、2003年1月及び2004年1月の小泉総理大臣の靖国神社参拝に対しては、中国や韓国から、遺憾の意が表明された。