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5 感染症対策



【総論】

 開発途上国において深刻な問題となっているHIV/AIDS、結核、マラリア等の感染症対策は、感染症の蔓延〔まんえん〕に苦しんでいる国々だけの問題でなく、国際社会の安定と繁栄を実現するために、国際社会が一致団結して、早急に取り組まねばならない課題である。特に、HIV/AIDSは、現在、世界の感染者数が4,000万人を超え、第4位の死因(サハラ以南のアフリカでは、死亡原因の第1位)となっており、今後は、中国やインドにおいて感染者が激増することが予想されるなど、非常に深刻な問題となっている。

 こうした認識の下、日本は、官民を含めた国際社会全体による取組を推進するため、2002年1月の世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)の設立及びその後の運営に積極的に貢献しているほか、G8九州・沖縄サミットの際に、日本が表明した沖縄感染症対策イニシアティブの下、二国間で開発途上国の感染症対策を支援してきた。



日本のHIV/AIDS対策の支援強化 ―沖縄感染症対策イニシアチブの枠組みでの主な取組―

日本のHIV/AIDS対策の支援強化 ―沖縄感染症対策イニシアチブの枠組みでの主な取組―


【世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)の立ち上げと活動】

 2000年7月のG8九州・沖縄サミット、2001年6月の国連AIDS特別総会、7月のG8ジェノバ・サミットでの議論を受けて、2002年1月にGFATMがスイス法に基づく民間財団としてジュネーブに設置されることが決定された。同じく1月には、日本を含むドナー国、開発途上国、NGO、民間団体の18代表で構成される理事会(基金の最高意思決定機関)の第1回会合がジュネーブで開催され、GFATMは活動を開始することになった。日本はこの基金に対して、2001年6月の日米首脳会談において小泉総理大臣から2億米ドルを拠出する意図表明を行っている。この基金に対しては、G8や他の先進国、開発途上国、民間団体等から合計で約21億米ドル(2002年10月現在)の拠出又は寄付の意図が表明されている。

 GFATMは、官民の新しいパートナーシップにより、開発途上国におけるHIV/AIDS、結核、マラリアの予防・治療等を実施・促進するための事業に対して資金支援を行い、開発途上国の感染症対策の強化に貢献するものである。具体的には、開発途上国の政府機関・NGO等から提出される案件提案が各国ごとに設置される国別調整委員会(政府機関、NGO、民間セクター、多国間の開発機関、二国間の援助機関等で構成)で審査・調整され、独立の専門家から構成される技術審査パネルでの審査を経て、最終的に基金理事会で承認された案件が支援対象案件となる。GFATMは、2002年4月の理事会において最初の基金支援案件として、40件(31か国)を承認し、また、初代事務局長を選出して本格的な活動を開始した。日本は、2002年までに8,000万米ドルを拠出したほか、初年度には理事会の副議長を務めるなど、基金の適正な管理運営を確保するため積極的に貢献している。



2002年末時点でのHIV/AIDS感染者(大人及び子ども)の推定数

2002年末時点でのHIV/AIDS感染者(大人及び子ども)の推定数

(トピック:世界エイズ・結核・マラリア対策基金とは?)
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