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第3章 > 第3節 > 4 科学技術分野の国際協力

4 科学技術分野の国際協力



【総論】
 科学技術は、経済・産業や国の安全保障、人類の生活と福祉の発展を支える基盤的要素であり、日本は、科学技術の進歩によって、20世紀に目覚ましい発展を遂げた。21世紀の国際社会は、地球環境問題、資源エネルギー問題、保健衛生問題等の国際社会が直面している様々な諸課題の解決のために、科学技術の力を駆使して取り組んでいくことが求められている。日本は、こうした諸課題を解決するため、科学技術発展に向けて各国と二国間協力を進めるとともに、一国では実施できない大規模な国際プロジェクトを促進するため、多国間の国際協力を積極的に進めていく考えである。


【科学技術分野の国際協力】

 科学技術協力の推進のため、日本は、各国と定期的に二国間合同委員会等の会合を開催し、科学技術政策に関する情報交換や、具体的な研究協力についての協議を行っている。2002年には、英国、米国、ドイツ、韓国、イタリア等との間でこうした会合を行った。

 大規模な国際プロジェクトの例としては、日本は、米国、カナダ、欧州諸国、ロシアと共に、2008年の国際宇宙ステーション完成を目指しており、2006年から2007年にかけて、日本の実験棟(通称「きぼう」)の打ち上げを予定している。しかし、2003年2月に起きたスペースシャトル・コロンビア号の事故は、今後の国際宇宙ステーション計画にも重大な影響を与えると考えられる。また、エネルギーの分野では、人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの実現可能性を実証するための国際共同プロジェクトである国際熱核融合実験炉(ITER)計画を推進している。日本は、2002年5月に、ITERの国内誘致を視野に入れ、青森県六ヶ所村を国内候補地として提示して、政府間協議に臨むことを決定した。また各国と協力し、海洋に関する国際プロジェクトであるアルゴ計画(高度海洋監視システム)、深海掘削計画(IODP)等も推進している。 

 生命科学の分野においては、近年、バイオテクノロジーの急速な進歩により、人クローン個体の生成が危惧〔きぐ〕されている。日本は、人クローン個体の生成を禁止する国際条約を早期に策定するよう、国連の場等を通じて国際社会に働きかけている。

 軍縮・不拡散問題に取り組むために科学技術を活用している国際科学技術センター(ISTC)は、日本、米国、EU、ロシアが中心となり、モスクワに1994年に設立された国際機関である。同センターでは、旧ソ連諸国の大量破壊兵器関連研究者・技術者の民生転換のための支援を行っており、日本政府は、これまでISTCを通じ約5,600万米ドル(2002年12月現在)のプロジェクト支援を行っている。


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