第2章 > 第4節 > 2 地球環境問題
【国際社会による取組】
近年、地球温暖化(第1章6(4)を参照)、オゾン層破壊等の地球環境問題が顕在化している。これらは人類の生存に対する脅威になりうる問題であり、一国のみでは対応が困難で、国際社会がその解決に向け共同で取り組むべき課題である。また、環境問題への取組は経済問題と極めて密接に関連している。そのため、異なる発展段階や経済状況にある国や地域が協調行動をとることは容易ではなく、先進国と開発途上国の義務の差異化といった先進国と開発途上国が鋭く対立するような問題も多く見られる。一方で、ますます多様化する環境問題に対応するため、地球環境分野における外交を進めていくにあたっては、人間の安全保障の観点から人間一人ひとりの生存や健康を重視するなど新しい視点を採り入れていくことが求められている。
1992年の地球サミット(注1)において、持続可能な開発(注2)を推進するための方策が話し合われ、包括的な国際的取組の行動計画としてアジェンダ 21が採択された。その後、アジェンダ 21の見直しのため、持続可能な開発委員会(CSD)が毎年開催されている。2001年5月に行われたCSD 10(ヨハネスブルグ・サミット(WSSD)(注3)準備委員会)では、世界的な規模で開催されるWSSDに対し各地域で議論を重ねた成果を反映させていくことが合意された。また、11月のプノンペンでのアジア太平洋地域ハイレベル準備会合では、アジア太平洋地域における重点事項と取組方針を取りまとめた地域綱領が採択された。また、持続可能な開発のあり方について、経済協力開発機構(OECD)が、経済、環境及び社会政策の側面から報告書をとりまとめ、市場メカニズムや科学技術の活用、天然資源の管理等につき政策勧告を行った。2002年8月に開催されるWSSDでは、地球サミットから10年目に当たる節目の年として、アジェンダ 21の包括的な見直しや、新たに生じた課題についての議論が行われる予定であり、21世紀における環境分野での政治的な推進力を強化するとともに、国際的取組の指針を示す会議になることが期待されている。
国際社会が地球環境問題に関してどのようにかかわっていくかというガバナンスの問題については、2001年4月から2002年2月にかけて国際環境ガバナンスに関する閣僚級会合が5回開催され、グローバル閣僚級環境フォーラムの役割や国連環境計画(UNEP)強化のための施策等について協議が行われた。
残留性有機汚染物質(POPs)については、DDT、PCB(注4)及びダイオキシン類等のPOPsの製造・使用及び輸出入の禁止や制限等を定めた条約が、5月、ストックホルムでの外交会議において採択された。森林については、6月の国連森林フォーラム第1回会合(UNFF1)において、持続可能な森林経営等につき議論が行われた。さらに、酸性雨問題に対する地域的な取組を強化するための東アジア酸性雨モニタリング・ネットワークが2001年より本格的に稼働している。
【日本の取組】
このような国際的取組が進展する中で、日本は、地球環境問題への取組を引き続き外交の最重要課題の一つと位置づけ、以下のような協力を実施してきている。
第一は、条約等国際約束の策定・実施における取組である。オゾン層保護の分野では、開発途上国のオゾン層保護対策の実施を支援するために設立されたオゾン層保護基金に対し、日本は、米国に次ぐ大口拠出国として年約3300万米ドルを拠出している。さらに、環境に関する各種多数国間条約の実施・促進のために、2001年度予算において計100万米ドルの拠出を行った。
第二に、環境分野における開発途上国支援を行ってきている。日本の政府開発援助(ODA)は、ODA大綱原則の一つとして環境と開発の両立を謳い、環境分野への協力を重点課題の一つとしている。1999年8月に策定した政府開発援助に関する中期政策では、21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)等に基づき、環境分野の開発途上国支援につき積極的に取り組むこととされており、協力分野は大気汚染、自然環境保全など多岐にわたっている。また、日本は、気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)再開会合において、京都イニシアチブに基づいて温暖化対策についての開発途上国支援に積極的に取り組んでいることを強調し、各国より評価を受けた。
第三に、二国間環境政策協議など二国間対話の促進に向けた取組を行っている。8月に日・オーストラリア環境政策協議、12月に日韓環境保護協力合同委員会及び日露環境保護合同委員会が開催され、気候変動、WSSD等につき活発な意見交換が行われた。
第四に、環境関連国際機関との協力関係を重視している。日本は、UNEPの主要拠出国として大きな役割を果たすと同時に、日本が誘致したUNEP国際環境技術センター(大阪及び滋賀)に対して、大都市の環境問題及び淡水湖沼流域管理に関するプロジェクトへの経費支援などを引き続き行っている。