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第2章 > 第3節 > 3 ODA改革への取組

3 ODA改革への取組



【総論】
 ODAに対しては、これまでも国民から厳しい見方があったが、最近になり、一層厳しい国民の批判の目にさらされている。具体的には、個々のプロジェクトの選定や実施、実施後のフォローアップが不透明であるとの観点からの批判が上がっている。また、個々の特定プロジェクトの決定に対し、特定議員の関与があったのではないかという点につき、国会等の場で議論がなされている。このうち、ケニアの円借款案件であるソンドゥ・ミリウ水力発電計画については、関係者からの聴取等による事実関係の調査を行い、特定議員の関与はないとの調査結果が得られた。
 ODA改革については、川口外務大臣が2月に発表した「開かれた外務省のための10の改革」の中にも、国民の税金を無駄にしないようODAを透明性を持った形で実施することを明記しており、そのための具体的な方策が検討されることになっている。国民に対する説明責任を果たす観点から、政府としては改革への取組に一層努力を行う必要がある。
 以下、2001年及び2002年初頭までのODA改革への具体的取組につき論じることにする。

【第2次ODA改革懇談会】
 2001年5月、ODA改革の具体策について提言を得るために、外務大臣の私的懇談会として、学識経験者、非政府組織(NGO)、財界、報道関係者等の外部有識者からなる第2次ODA改革懇談会(注1)を設置した。
 8月、同懇談会は、ODA改革の方向性を示した中間報告(注2)を発表し、さらに、ODA改革についての国民の生の声を聞くためにODAタウンミーティング(注3)を東京、神戸、仙台、福岡の4か所で開催した。
 同懇談会は、タウンミーティングやODAホームページに寄せられた国民の声を踏まえ、9月から更に深い議論を行い、2002年3月、最終報告(注4)を川口外務大臣に提出した。最終報告は、いま、日本のODAに求められているのは、日本の潜在的な意欲、能力を積極的に引き出し、開花させるための具体的な取組、さらにはODAの透明性を高め、国民に対する説明責任を果たすことであるとの認識に立ち、国民の心、知力と活力を総結集したODA、戦略を持った重点的・効果的なODA、ODA実施体制の抜本的な整備を三つの柱とする具体策を提示している。また、国民各層の代表からなるODA総合戦略会議の設置、一層の情報公開や第三者による評価体制の強化、監査システムの導入等を内容とする透明性の確保、NGOとの連携等を提言している。
 今後は、第2次ODA改革懇談会の最終報告に盛り込まれた提言及び「変える会」での議論を踏まえつつ、改革を進めていく必要がある。

【評価体制の充実】
 効果的・効率的なODA実施に役立てるとともに、国民にODAの成果を明らかにしていくために評価体制の充実を図る必要がある。
 それには、ODA評価を拡充する一方で、評価によって得られた教訓・提言を、今後の援助政策に反映させていくことが欠かせない。そのために、2001年1月、外務省内にODA評価内部フィードバック連絡会議を設置した。また、より公平性、客観性の高いODA評価体制の確立を図ることを目的として、12月、経済協力局長の私的諮問機関として、外部有識者評価フィードバック委員会を設置した。
 日本のODAは、外務省のほか、複数の関係省庁等により実施されており、それぞれのODA事業に対する評価も各省庁等が独自に行っている。このような中、各省庁間の連携・調整を行うことで、政府全体としてODA評価体制の一層の充実を図るために、7月、ODA関係省庁評価部門連絡会議を設置した(注5)


 外務省とNGOとのパートナーシップ

外務省とNGOとのパートナーシップ



【国民参加の推進】
 開発途上国の人々の多様なニーズに応じたきめ細やかな援助のため、また、迅速かつ柔軟な緊急人道支援活動のため、国際協力活動におけるNGOの役割はますます重要になっている。日本政府はこのようなNGOの重要性を認識し、従来からNGO事業補助金、草の根無償資金協力等によりNGOによる国際協力活動を支援するとともに、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の枠組みを通じた連携の強化やNGO・外務省定期協議会の開催を通じた対話の促進等にも努めてきている。また、長い歴史と強固な財政基盤を有する欧米諸国のNGOと比べ、日本のNGOは、活動を拡大し、強化する余地がまだ大きいため、1999年度からはNGOのキャパシティー・ビルディング支援(組織・活動能力の向上)に努めており、さらに、2001年度からは、NGOの専門性向上に着目し、特に保健・医療、教育、農業・農村開発等の分野で活動するNGOを対象にした支援を実施している。
 また、緊急人道支援として、1月のインド西部地震の際に、被災民支援を行う日本のNGOを支援するため、約2億3000万円の資金供与を行った。また、NGOが現地において行う緊急人道支援活動の初動活動を支援するため、JPFに5億8000万円の資金(プールマネー)を拠出した。アフガニスタン難民支援に際しては、JPFによって、このプールマネーが効果的に活用されている(第1章2(3)を参照)。
 日本政府は、開発途上国の人々と生活をしながら協力活動を行う青年海外協力隊派遣事業や、高度な技術や豊富な知識、経験を持つ中高年層を対象とするシニア海外ボランティア派遣事業の推進に取り組んでいる。特に、1990年に導入されたシニア海外ボランティア派遣事業は、国際協力に対する国内の関心が高まる中で応募者数が増加しており、開発途上国の多様なニーズに応えることができる協力として、受け入れ国からも高い評価を得ている。このほかにも、ODA民間モニター制度の充実や地方自治体との連携強化等にも引き続き努めており、今後とも様々な主体と協力しつつ、効果的、効率的かつ透明なODAの実施に向け、積極的に取り組んでいく考えである。

(column5参照)


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