第2章 > 第2節 > 2 地域的な経済連携の強化に向けた取組
【世界的な動向】
戦後の世界貿易の自由化に向けた取組は、一貫して、関税と貿易に関する一般協定(GATT)を中心とする多角的貿易体制の下で進められてきた。
同時に、欧州共同体(EC)に代表されるように、地域的に関係の深い複数の国の間で貿易自由化を進めていこうとする地域的な経済連携の強化に向けた動きも見られ、特に近年は、そうした傾向が強化され、拡大されてきている。例えば、欧州連合(EU)は、1993年のマーストリヒト条約に基づき1999年に単一通貨ユーロを導入し、2002年にユーロ貨幣の流通を開始させるなど、その深化と拡大を着実に進めている。
また、北米では、北米自由貿易協定(NAFTA)、中南米では南米南部共同市場(メルコスール)を中心として地域経済統合が発展している。2001年の米州サミットでは、北米、中南米の34か国で構成する米州自由貿易地域(FTAA)の2005年末までの発効を目指すことが合意された。
このように形式・内容とも様々な地域協力の強化の動きは、アジアでも見られ、これまでもアジア太平洋経済協力(APEC)や東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)などを中心に重層的に進められてきたが(第1章4を参照)、こうした動きは近年、更に強まっている。例えば、2001年11月の中国とASEANとの首脳会議では、中国とASEANとの間で自由貿易地域を今後10年以内に創設するために協議を開始することが合意された。
【地域的な経済連携の強化(自由貿易協定(FTA)を含む)に向けた日本の取組】
日本は、1955年のGATT加盟以降、GATT及び世界貿易機関(WTO)を中心とする多角的貿易体制の維持・強化を対外経済政策の基本としてきた。一方で、二国間や地域内において、WTOで定められた水準を超える貿易自由化や、現在のWTO協定では十分規律が及んでいない分野でのルール作りを推進することによって、こうした多角的貿易体制を補完し、強化していくべきであるとの考えから、近年、地域間、地域内、二国間での経済連携の強化も検討するようになっている。
例えば、シンガポールとの間で、経済連携協定の締結交渉が開始され、2002年1月には両国の首脳により署名が行われた。この協定は、日本にとって最初の地域的な経済連携の強化のための協定であり、二国間での貿易・投資の自由化のみならず、金融、情報通信、科学技術、人材養成、貿易投資促進、中小企業、放送、観光といった幅広い分野での経済の連携の強化を図るものである。
また、メキシコとの間では、将来的な自由貿易協定(FTA)締結の可能性を含め二国間の経済関係の強化の方策を包括的に議論するための産業界、政府、学界の有識者からなる「経済関係強化のための日墨共同研究会」が立ち上げられ、2002年夏までの可能な限り早い時期までに報告書をまとめる予定となっている。
韓国との間では、2000年9月の日韓首脳会談での合意に基づき、民間の経済人及び有識者からなるビジネス・フォーラムが立ち上げられた。このフォーラムは、2002年1月には、日韓FTAを包括的な経済連携協定として早期に推進すべきとする共同宣言文を発出した。この提言を受けて、3月の首脳会談では、日韓FTAに関する産官学研究会を設置することで一致した。
また、チリとの間でも民間レべルの研究会が開催され、その報告書でFTA早期実現に向けた努力が提案されている。
地域的な経済連携の強化については、法的拘束力を有するもの、非拘束的なもの、貿易の自由化を含むもの、含まないものなど様々な形態があるが、日本は、WTOを中心とする多角的貿易体制を維持し、強化していくことを基本とし、WTOとの整合性を確保しながら、相手国・地域の特質や日本との関係を十分に踏まえて、日本にとり最も望ましい形で柔軟な経済外交戦略をとっていく考えである。
日本と主要な貿易相手との貿易額
