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(1) 日米安全保障体制



【日米安全保障体制】
 6月の日米首脳会談において小泉総理大臣とブッシュ大統領は、日米安全保障関係50周年を歓迎し、日米同盟がアジア太平洋地域の平和と安定の礎であることを改めて確認した。さらに9月、旧日米安全保障条約の署名が行われたサンフランシスコにおいて、田中外務大臣、中谷防衛庁長官、パウエル国務長官及びウォルフォビッツ国防副長官の出席の下、旧日米安全保障条約署名50周年記念式典が開催された。
 また、9月11日の米国同時多発テロ後、日本はテロとの闘いを自らの問題として主体的かつ積極的に取り組んでいるが、特に、テロの脅威の除去のために活動する米軍に対し、日本がテロ対策特別措置法に基づく協力支援活動を行っていることは、日米同盟関係の強化という観点からも大きな意義を有している。
 アジア太平洋地域の情勢は好ましい方向に向かう兆候も見られる一方で、依然として不確実性、不安定性が存在している。このような状況の下、日米安全保障体制は、依然としてアジア太平洋地域の平和と安定を維持する上で極めて重要である。日本が自らの自衛力のみでは日本の安全が脅かされるようなあらゆる事態に対処できない以上、米国との安全保障条約を引き続き堅持することで、米軍の前方展開を確保し、その抑止力の下で日本の安全を確保することが必要であり、そのような観点から、日米安全保障体制の信頼性を一層高めるために、たゆまない努力を続けていく必要がある。
 

【新たな日米防衛協力のための指針】
 日米安全保障体制の信頼性の向上のための努力の一環として、新たな日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の実効性の確保が重要である。ガイドラインは、平素及び緊急事態に際して、より効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための堅固な基礎を構築することを目的とするものである。日本は、今後とも、ガイドラインの実効性の確保に努めていく考えであり、日本有事の際の日米共同対処や周辺事態の際の日米協力につき規定する計画についての検討作業を引き続き実施している。
 6月の首脳会談において日米両国首脳は、日米防衛協力のための指針の継続的な実施を基礎として、安全保障協力における今後の方途につき、様々なレベルで安全保障協議を強化することを決定した。ブッシュ政権において、ミサイル防衛、国防態勢の見直し(注1)等について新たな取組がなされており、こうした動き等を踏まえて、両国間の安全保障協議を強化することが重要である。

【ミサイル防衛】
 5月、ブッシュ大統領は、大量破壊兵器やそれらを運搬する手段である弾道ミサイルの拡散などの脅威に対処するため、核兵器の大幅な削減を含む新たな戦略枠組みの一環としてミサイル防衛を推進する考えを発表した。
 日本は、冷戦後、弾道ミサイルの拡散が安全保障上の脅威の一つとなっていることについて米国と認識を共有しており、6月の日米首脳会談では、両国が不拡散関連措置を強化するとともに、ミサイル防衛に関し緊密な協議を継続すべきであることで意見の一致を見た。また、日米両国首脳は、1999年から実施されている弾道ミサイル防衛(BMD)技術に関する共同研究の重要性についても改めて確認した。BMDの開発段階、配備段階への移行については、今後、技術的実現可能性、日本の防衛政策のあり方等を検討した上で、別途判断することになる。


 安全保障に関する日米間の協議の場(2001年現在)

安全保障に関する日米間の協議の場(2001年現在)




【在日米軍関係】
 日米安全保障体制の円滑な運用のためには、在日米軍の活動が施設・区域周辺の住民に与える負担を軽減し、米軍の駐留に関する住民の理解と支持を得ていくことが重要である。米国も、この点を十分に認識しており、様々な機会において、在日米軍が地元住民と良き隣人関係を築くことが重要であるとの考えを明らかにしている。日米両国は、このような観点から、地元社会に対する負担を軽減するための様々な取組における緊密な協力を行っている。
 特に、日米両国政府は、在日米軍の施設・区域が集中する沖縄県の県民の方々の負担を軽減することが極めて重要であるとの認識に立ち、1996年12月に取りまとめた沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施に向け、取り組んでいる。SACO最終報告に盛り込まれた事項については、訓練及び運用方法の調整や地位協定の運用の改善に関する措置が既に実施に移されているほか、土地の返還についても、沖縄における米軍専用施設・区域の約21%に当たる約5000haの返還が予定されている。このうち安波訓練場が既に返還され、楚辺通信所及び読谷飛行場の2件につき2005年の返還の見通しが立っているほか、北部訓練場の一部返還等、面積にして約8割の部分についての返還の段取りにつき合意済みである。
 普天間飛行場の移設・返還については、1999年末の閣議決定「普天間飛行場の移設に係る政府方針」に基づき、代替施設協議会において地元自治体と協議するとともに、米国とも緊密に協議しつつ、全力で取り組んでいる。2001年12月27日の第8回代替施設協議会では、地元の意見、要望のとりまとめに関する稲嶺沖縄県知事を始めとする各地元首長からの報告を踏まえ、代替施設の基本計画の主要事項にかかわる取扱い方針が決定された。
 日米地位協定の運用改善に関しては、在日米軍にかかわる事件・事故の通報体制の整備等、SACO最終報告に盛り込まれた運用改善措置は既に実施に移されているが、更なる運用の改善に努力しているところである。
 特に、在日米軍施設・区域にかかわる環境問題については、2000年9月の日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)において環境原則に関する共同発表を発出し、同問題について日米間の協力と協議を強化していくとの決意を閣僚レベルの政治的意思として表明した。現在、この共同発表を踏まえ、日米協議を強化し、在日米軍の環境管理基準の見直し、情報交換の強化等を通じた環境問題に関する日米間の協議・協力の強化に取り組んでいる。
 また、沖縄における、いわゆるアメラジアン問題(注2)の改善を図るため、2002年3月の川口外務大臣の沖縄訪問の際、相談窓口の体制整備につき県知事との間で合意され、既に窓口の運用が開始されている。

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