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(5) 日欧関係



【総論】
 国際的なルール造りを始め、国際社会のグローバルな諸課題への取組に対し大きな影響力を有している欧州では、現在、欧州連合(EU)の統合の深化と拡大が進行しており、国際場裡において重みを増すEUとの関係の構築を一層積極的に図っていくことは日本外交において極めて重要である。一方、各国との間の伝統的な二国間関係を一層拡充し、発展させていくことも引き続き重要である。このような認識に立ち、2001年に、日本は、EU及び欧州諸国との間で以下のような外交を展開し、関係強化に向けた努力を行ってきた。特に、9月の米国同時多発テロ以降、先進民主主義国を含む国際社会との協力が極めて重要となり、日本は、G8の構成国である英国、フランス、ドイツ、イタリアを始めとする欧州諸国やEUと協調してテロに対抗する姿勢を明確にした。

【「日欧協力の10年」と日・EU定期首脳協議】
 2001年は、日・EU関係の基本文書である日・EC共同宣言の発表から10周年に当たる節目の年であった。1月には、河野外務大臣が当時のEU議長国であるスウェーデンを訪問して日・EUトロイカ外相協議(注1)を開催し、「日欧協力の10年」(注2)の開始を確認した。
 12月には、小泉総理大臣が当時のEU議長国であるベルギーを訪問し、フェルホフスタット・ベルギー首相(欧州理事会議長)及びプローディ欧州委員会委員長との間で、「日欧協力の10年」の下での最初の首脳協議となる第10回日・EU定期首脳協議(注3)を行った。
 同協議では、「日・EU協力のための行動計画」(以下、日・EU行動計画)を採択したほか、テロに対する取組を示したテロに関する日・EU共同宣言を発出した。この宣言は、米国同時多発テロの発生を受け、テロ撲滅に向けた日・EUの断固たる意思と決意、米国を含む国際社会との連帯を世界に示すものであり、そのための具体的措置は、日・EU行動計画にも盛り込まれた。

【日・EU協力のための行動計画】
 日・EU行動計画は、「日欧協力の10年」の下での日欧協力を具体化するものである。行動計画では、平和と安全の促進、万人のためにグローバル化の活力を活かした経済・貿易関係の強化、地球規模の問題及び社会的課題への挑戦及び人的・文化的交流の促進の四つを重点目標として定め、その下で21の分野毎に、直ちに開始すべきイニシアチブとその他追求すべき措置の二つに分けて、具体的な措置を列挙している。
 今後は、この日・EU行動計画を着実に実施することにより、日・EU関係を一層強化し、日欧関係に新たな弾みを与えていくことにしている。なお、各分野に盛り込まれた具体的措置は、必要に応じ、毎年開催される首脳協議の際に改訂されることになっている。2002年1月に発効した日・EU相互承認協定は、日・EU間の貿易関係を一層促進することが期待されており、直ちに開始すべきイニシアチブとして実施を進めていくことになっている。


 日・EU協力のための行動計画(概要)

日・EU協力のための行動計画(概要)



【主な欧州諸国との関係】
 2月にはフェルホフスタット・ベルギー首相が訪日し、日・ベルギー首脳会談が行われ、共同声明を発表した。また、ベルギー政府及びベルギー進出の日系企業から強い要望のあった社会保障協定締結について交渉を開始することが合意された。これを受けて11月にブリュッセルにおいて第1回年金制度に関する日・ベルギー情報・意見交換会が開催された。また、2月に、アイスランドの首都レイキャビクに日本大使館が開設された。なお10月には在京アイスランド大使館が開設され、アスグリムソン外相が訪日し、日・アイスランド関係の強化に大きな進展が見られた。
 3月には、ディーニ・イタリア外相が「日本におけるイタリア2001年」開幕行事に参列するため来日し、河野外務大臣と会談した。また、5月には、秋篠宮同妃両殿下が訪欧され、コンスタンチン・オランダ王子の結婚式に御出席された。さらに、同月、皇太子殿下が英国を訪問され、参加と交流及び地方展開を柱に教育関連行事も重視する大型日本紹介事業Japan 2001が開始された。2002年3月までに全英各地で約2000件のJapan 2001関連行事が行われてきた。
 7月、小泉総理大臣は、米国に引き続き英国、フランスを訪問し、6月の総選挙で勝利し盤石の体制で国内外の課題に取り組もうとしているブレア英首相、欧州の外交政策に大きな影響力を有しているシラク仏大統領及びジョスパン仏首相と意見交換を行った。また、同月開催されたジェノバ・サミットの際に、G8を始めとする欧州各国要人との間で、二国間の首脳会合や外相会合が実施された。さらに米国同時多発テロ以後、G8を始めとする欧州各国要人との間で、首脳・外相会談や電話会談を行い、テロに対抗する協調姿勢を確認した。
 10月には、フェレーロ=バルトナー・オーストリア外相が訪日し、日・オーストリア外相会談が行われた。また、同じく10月にバルト三国との新たな外交関係開設10周年を迎えたことから、12月に、植竹外務副大臣がバルト三国のうちラトビア及びリトアニアを訪問するなど、要人往来、経済交流、文化交流を三本柱として、これら諸国との関係強化が図られた。2002年1月には田中外務大臣がトルコ、ポルトガル、英国、スペインを訪問し、外相を始めとする各国要人と会談を行った。
 以上のような日欧双方の要人訪問や様々な機会における協議以外にも、日本と欧州諸国との間では、随時電話会談等が行われており、特にソラナEU共通外交安全保障政策(CFSP)上級代表との間では、頻繁な電話会談が行われてきた。


 日・EU関係 ─協力と対話─

日・EU関係 ─協力と対話─



 Japan 2001にて華道に挑戦した子どもたちとお話される皇太子殿下(5月)

Japan 2001にて華道に挑戦した子どもたちとお話される皇太子殿下(5月)



 Japan 2001

Japan 2001

(column1参照)


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