第1章 > 4 > (1) 東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係
東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国は、1997年に発生した通貨・金融危機によって深刻な影響を受けたが、日本を含む国際社会の支援と各国自身の改革努力により、回復を果たした。一方、経済のグローバル化、地域的な経済統合の進展、中国の急速な経済成長と世界貿易機関(WTO)加盟など、ASEANを取り巻く経済環境は最近急速に変化している。このような中、ASEANが競争力を強化していくためには、ASEANが外国にとって一層魅力的な投資先となることが重要である。日本は、2001年を通じ、ASEAN各国の投資環境改善及びASEAN自由貿易地域(AFTA)、ASEAN投資地域(AIA)といったASEAN全体としての取組強化の重要性を強調するとともに、様々な形で支援を行ってきた。また、ASEANの域内格差を是正するため、情報通信技術(IT)分野や人材育成において具体的な協力を提案するなど、ASEANとの協力関係の更なる強化に努めた。
7月下旬にハノイで開催されたASEAN拡大外相会議(PMC)の際には、田中外務大臣から、日本は、アジアの平和と繁栄に向けたASEANの役割を高く評価し、ASEANと引き続き協力していく方針であるという考えを説明した上で、ASEANが直面している国内的な困難、域内での格差、グローバル化の中での競争力の強化という課題の解決に向けて、ASEAN統合イニシアチブ(IAI)(注1)への協力を含め、積極的にASEANと協力していく意思を表明した。さらに、日・ASEAN関係を様々な分野(政治・安全保障、軍備管理・軍縮、社会、文化等)に広げていきたいという考えを述べた。これに対し、ASEAN各国から、日本の具体的な取組として、特にIT協力や海賊対策、高校生交流プログラム、人材育成等に言及しつつ、こうした協力策を継続し、強化していくことを要請するとともに、日本のIAIへの支持に謝意を示した。また、メコン地域開発への更なる協力や支援に強い期待が表明された。
11月初旬にブルネイで開催された日・ASEAN首脳会議に出席した小泉総理大臣は、日本のASEAN重視政策は不変であることを強調しつつ、人材育成、IT、メコン地域開発等の分野を中心としてASEANへの協力を行っていくという考えを述べた。さらに、テロ、海賊、薬物、感染症等の国境を越える問題への日本の対応を説明し、これらの分野におけるASEANとの協力も強化していくという考えを表明した。ASEAN各国からは、具体的協力策への謝意と今後の協力への期待が表明された。
さらに小泉総理大臣は、2002年1月中旬にASEAN5か国(フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポール)を訪問し、各国首脳と率直な意見交換を行ったほか、最後の訪問地であるシンガポールで行った政策スピーチの中で、ASEAN諸国と「率直なパートナー」として「共に歩み共に進む」との考えの下、東アジア地域において種々の分野で具体的な協力を積み重ねていくとの考えを表明し(注2)、各国から理解と支持を得た。
アジア太平洋における地域協力の枠組み
