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無線局免許に対する外資規制
米国は、連邦通信法第310条において、無線局免許における直接投資20%の規制を維持している。このため、例えば、日本事業者が衛星を利用した米国との国際通信サービスを提供するに当たり、米国に設置された地球局の無線局免許を取得しようとしても不可能であり、柔軟なネットワーク構築が困難となっている。
日本国政府は、米国政府が、連邦通信法第310条に掲げられた電気通信業務を行うことを目的として開設する無線局免許について、日本と同様に外資規制を撤廃することを引き続き要望する。
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外国事業者等の米国市場参入に関する審査基準
連邦通信法214条及び310条(b)(4)に関する外国事業者等の米国市場参入に当たっての審査基準のうち、「通商上の懸念」及び「外交政策」との基準は、電気通信政策と関係ない事項を理由とした認証・免許付与拒否も可能とするものであり、米国政府はこれらの基準を撤廃されたい。
また、「競争に対する非常に高い危険」という基準については、発動に当たっての運用基準を明確にし、公表されたい。
さらに、47CFRPart63にある国際サービスを提供する事業者への支配的事業者規制の適用に当たっての運用基準を明確にされたい。
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州レベルの規制
米国では、事業者に対して、サービスを行っている州の政府への収益実績等の報告が義務付けられているが、その報告様式は州ごとに異なっている。多数に及ぶ州政府に対してそれぞれ異なる様式による報告を行うことは事業者にとって過度の負担となっている。
米国政府は、州ごとに異なる収益実績等の報告による事業者の過度の負担を解消するために、全米公益事業委員協会(NARUC)に対し、報告様式の簡素化及び統一化の措置が採られるよう積極的に働きかけられたい。
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アクセス・チャージ
FCCは、州際アクセス・チャージが、常に最新のLRICモデルにより算定される範囲内にあることを確保されたい。また、米国政府は、州内市外アクセス・チャージの算定にLRICモデルを導入し、州際アクセス・チャージと州内市外アクセス・チャージとの格差を解消あるいは縮小されたい。
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商用衛星に係る輸出許可及びTAA許可等の処理手続
米国による商用衛星の輸出に係る権限が1999年3月に商務省から国務省に移管され、商用衛星に係る輸出及び技術情報移転について国務省の許可が必要になった。これ以来、日本の衛星通信事業者が自ら発注した衛星の技術情報を得るのに長期間を要する状態が続いており、衛星打ち上げ計画への影響に関し、日本の衛星通信事業者の将来にわたる懸念となっている。
米国政府は、商用衛星に係る輸出許可及びTAA許可等の処理に要する期間をさらに短縮されたい。
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連邦・州の規制の二重構造や州毎に異なる規制の改善
米国では、電力に関して、連邦政府と州による双方の規制が課せられており、参入をしようとする際に、連邦の規制とは別に州ごとの規制を検討する必要がある。実際に自由化の範囲や形態が州によって異なるなど、事業者の円滑な事業展開を阻害している例が見られる。卸市場に関わる権限については連邦(連邦エネルギー規制委員会(FERC))、小売市場に関わる権限は州(公益事業委員会)に分離された状態に変化は見られない。
また、州により小売自由化実行の有無及び自由化スケジュールが明示されておらず、小売市場に参入する際の事業展開の障害となっている。
外国事業者に円滑な事業展開を可能にする観点からも、規制の二重構造や各州により異なる規制について、より一層改善するための措置を迅速にとることを要望する。
さらに、環境関連規制に関しては、新規の発電所や送配電線網の建設が現実的に不可能であるほど厳しい場合は、これを緩和する必要があると考える。
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公益事業持株会社法(PUHCA)の廃止
公益事業持株会社法の規制に関しては、1992年のエネルギー政策法(EPA)において、卸発電事業者については適用除外となったが、小売事業者に関しては適用除外とされておらず、複数の州で活動する場合に煩雑な認可手続き等を課すことでその活動の妨げとなっている。よって米国政府が、PUHCAの廃止を盛り込んだ2002年エネルギー政策法案を早期に成立させるよう努力することを要望する。
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公営事業のあり方
電力市場における競争の進展に伴い、公営の事業体のあり方について検証が行われるべきである。エジソン電気協会年次統計によれば、米国における発電設備の23%が、連邦営を始めとする公営事業体によるものとなっている。オープンアクセスの確保について、2002年エネルギー政策法案により措置されることは有益であるが、自由化された競争市場において公正な競争を確保する観点から、公営事業体の民営化の促進などの改善策を要望する。
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標準市場設計(SMD)について
2002年6月の首脳への報告書の米側措置においては、FERCが推進するSMDについて言及されている。FERCは7月末、SMDについての提案されたルール設定に関する告示(NOPR)を公表したが、この設計はニューヨークISO(独立系統運用機関)の設計に極めて類似したものである。このニューヨークISOの卸市場では、供給力確保義務や地点別価格などの仕組みを入れているが、必要な電源設備がこのような措置により十分建設されているのか検証が必要である。SMDを全米で展開する場合には、協調のとれた発電・送電設備の確保に配慮した制度設計を実施することを要望する。
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市場規制方針の明確化
FERC内に市場監視・捜査局(Office of Market Oversight and Investigations)を設置する等競争市場に対する規制を強化する方向にあるが、監視方法や価格設定の適否に関する判断基準等が不明確なために事業予見性を損ない、発電所建設計画のキャンセルが相次ぐことが危惧される。米国規制当局は、早急に市場に対する具体的な規制方針を明確化していただきたい。
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卸市場での上限価格(プライスキャップ)
いくつかの州では、電力の卸市場において上限価格を設定している場合があり、事業者が投下した費用を回収する際の障害となるおそれがある。卸市場での上限価格を設定する際には、事業者にとって投下費用の回収が容易であるとともに円滑に事業計画を立てられるよう、事業者の予測可能性に充分に配慮した方法を採るべきであり、上限価格により需要に対する価格シグナル効果が減じられることも考慮すべきである。また、連邦エネルギー規制委員会(FERC)の標準市場設計(SMD)NOPRが提案する全米統一または東西地域別等広範囲に適用する上限価格については、安定した送電網の運用のために稼動が必要な電源を特定し、その電源からの供給に当たっては上限価格を設定するとのことだが、その電源の特定を客観的・統一的基準に基づいて行うことは困難であると考えられるため、プライスキャップについて再検討すべきであると考える。
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電力取引市場の正常化
エネルギー市場の自由化に伴い、実際の生産・流通過程に関与せず、専ら金融取引による裁定取引を行う投機的事業者が増大し、エンロン社等の事業者による市場操作や会計操作により、市場に対する信認を著しく失墜させた。
電力取引市場を正常化させるため、投機的取引の制限、市場支配力行使による弊害防止等のための施策を検討するよう要望する。
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エネルギー・デリバティブに関する会計処理方式の信頼度向上
エネルギー・デリバティブの会計処理において、米国では時価評価方式が採用されているが、その評価を行う際の鍵となる電力価格の将来予測については、標準化した先物商品がほとんど存在しないため不透明感が払拭できない。極論すれば、恣意的な将来予測を行えば、デリバティブの時価評価を押し上げて利益を水増しすることも可能である。
ついては、電力市場の信頼回復のため、このような行為を防止するための措置を講じることを希望する。
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