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最近の米国情勢


平成17年3月


1.ブッシュ政権の軌跡

  • 2001年9月の同時多発テロを受け、対テロ対策及び国土防衛が第一の政策課題となり、テロとの闘いが推進された。米国内では対テロ法(Patriot Act)の成立、米国本土の安全確保を一元的に担当する「国土安全保障省」の創設等の政策が取られた。

  • 2003年3月19日、対イラク軍事行動が開始され、圧倒的な軍事力の差をもって首都バクダッドを制圧。5月1日、ブッシュ大統領はイラクにおける主要な戦闘の終結を宣言。2004年6月28日、イラク暫定政権への主権移譲が行われた。米国は、2005年1月30日のイラク国民議会選挙を含む政治プロセスを一貫して支持してきた。

  • 内政面でのブッシュ政権第一期目の主な成果は減税及び教育改革。教育改革法は、識字率に基準を設け、定期的に基礎学力テストを実施して達成度を把握、成果があがらない公教育機関については、保護者に選択を与えるもの。

  • 2004年11月2日に行われた大統領選挙では、ブッシュ大統領は選挙人の過半数を獲得、また得票でもケリー候補に330万票差をつけて再選。2005年1月20日、大統領就任式が行われ、二期目の政権が発足した。

  • ブッシュ大統領の支持率は、9.11事件直後90%を記録したが、その後緩やかに低減した。イラク攻撃開戦後は支持率が上昇し、70%に達した。その後はゆるやかに低減し、2003年5~8月まで50%後半から60%を維持。その後、イラクの治安が安定しない状況が報道され50%台となり、12月、フセイン前大統領の拘束後は60%を越えたが、2004年3月末からのファルージャを中心とする情勢の悪化や、4月、アブグレイブ収容所における捕虜虐待事件が明らかになり、40%台後半に低迷。大統領選挙まで40%台後半から50%前半にて推移した。大統領再選後、ブッシュ大統領の支持率は55%に回復し、イラク国民議会選挙後の2月4~6日の調査では57%に上昇した。
(参考)CNN/USA Today/Gallup社調査

2.二期目のブッシュ政権

(1)2004年大統領選挙

  • 2003年5月16日、ブッシュ大統領は選挙管理委員会に対し2004年大統領選挙出馬のための登録を行った。共和党内には対立候補はなく、ブッシュ大統領は党内基盤を早々に固め、2004年8月30日~9月2日にニューヨークにて開催された共和党大会において正式指名を受けた。ブッシュ大統領は、自らをテロと闘う強い指導者であること、自由を拡大する信念の人として支持を訴えた。

  • 民主党の大統領候補にはジョーゼフ・リーバーマン上院議員、リチャード・ゲップハート下院議員、ジョン・F・ケリー上院議員、ハワード・ディーン・ヴァーモント州前知事、ジョン・エドワーズ上院議員、キャロル・モスリー・ブラウン元上院議員、アル・シャープトン牧師、ボブ・グラム上院議員(2003年10月離脱)、デニス・クシニッチ下院議員、ウェズリー・クラーク元NATO軍司令官の10人が立候補。2004年1月19日アイオワ・コーカス及び1月24日のニューハンプシャー予備選にて勝利したケリー上院議員(マサチューセッツ州選出)が、3月2日に行われたスーパーチューズデーにおいて事実上の大統領候補者の座を獲得、16日のイリノイ州予備選で必要な代議員数2162人を獲得し、勝利宣言を行った。7月6日、ケリー上院議員はジョン・エドワーズ上院議員を副大統領候補に指名した。7月26日~27日ボストンにて開催された民主党大会は、「より強く、世界において尊敬されるアメリカ」をテーマとし、ケリー上院議員が「ベトナム戦争の英雄」であり、安全保障問題に強い候補であることを強調した。

  • 2004年11月2日に行われた選挙の結果、ブッシュ大統領が31州で勝利し選挙人286人を獲得(得票数60,645,644、得票率51%)、これに対しケリー上院議員は19州及びワシントンDCにて勝利し、選挙人252人(得票数57,313,461、得票率48%)を獲得し、ブッシュ大統領が選挙人の過半数(270以上)を得て、得票でもケリー候補に330万票差をつけて再選された。投票率は60%に迫る1960年代以来の高い水準となった。
(2)第二期ブッシュ政権の課題

    (総論)
    2005年1月20日、ブッシュ大統領は2回目の大統領就任式に臨み、二期目のブッシュ政権が正式発足した。ブッシュ大統領は、2005年1月20日の就任演説、同年2月2日の一般教書演説において、国内外で自由と民主主義を推進するとのビジョンを、テロの過激思想に対抗する根本的理念として打ち出した。第一期から掲げてきた政策目標に大きな変更はなく、同盟国や友好国との協調に、より重点を置く姿勢を示している。

    (人事)
    主な閣僚人事としては、パウエル氏の辞任を受けてライス安全保障担当大統領補佐官が国務長官に任命され、ライス氏の後任としてハドレー次席大統領補佐官が昇格した。ラムズフェルド国防長官は留任し、司法長官には、アシュクロフト氏の辞任を受けてゴンザレス法律顧問が就任した。国土安全保障長官にチャートフ氏、農務長官にジョハンズ氏、商務長官にグティエレス氏、エネルギー長官にボドマン氏がそれぞれ任命された。

    (外交)
    基本的には、第一期目からの最重要課題である、テロとの闘いやイラク政策を同盟国と協調しつつ継続し、イラクにおける警察・軍隊の訓練をはじめ、可能な限り早期にイラクの安定と民主主義を実現するための支援を行っていく姿勢を明確にしている。中東和平プロセスへコミットしつつ、中東諸国の自主的な民主化を引き続き支援。北朝鮮に対しては、六者会合を継続、イランに対しては、英、仏、独と共同し、大量破壊兵器開発を阻止していく方針を確認している。世界における米軍再編も引き続き推進されると考えられる。中国とは、価値観の差異も認識しつつ、建設的な関係を築く方針を取っている。

    (日米関係)
    日米関係は極めて良好。小泉総理とブッシュ大統領の緊密な信頼関係の下、両国関係を強化している。第二期ブッシュ政権においても、「世界の中の日米同盟」との考え方に従い、世界が直面する諸課題に対し日本との緊密な協力関係を維持していくものと考えられる。また、ブッシュ大統領は、2005年1月、ベーカー大使の後任としてシーファー前駐豪大使を指名した。

    (内政・経済)
    ブッシュ大統領は一般教書演説において、社会保障制度(公的年金制度)改革を内政面の最重要課題と位置づけた。その他の国内制度改革として、財政改革、訴訟制度改革、教育改革、ヘルスケア改革、税制改革、移民制度改革等も提唱。

3.米国情勢概観:内政

(1)テロ対策・国土安全保障・9.11特別委員会・情報機関再編

  • 2002年7月16日、ブッシュ大統領は2001年9月の同時多発テロ後初めて、テロリストの攻撃を予防し、脆弱性を減らし、攻撃があった場合の被害を最小化し回復するための「国土安全保障戦略」を発表し、国土安全保障省の設置を呼びかけた。同戦略及び「国家安全保障戦略」(2002年9月20日)を補完するものとして、「テロと闘うための国家戦略」及び、その一部を実施に移すための「サイバー防護戦略」、「重要インフラ防護戦略」を2003年2月14日に発表。

  • 国土安全保障省は、2003年1月24日に設置され、主要関連機関の移管を3月1日までに終えた。リッジ初代長官の下に5人の次官が配置され、22の政府機関に分散していた任務を統括。職員の規模は全米で約18万人になり、全国的な移管作業は同年9月までに完了した。

  • 2002年11月、米連邦議会は米国へのテロ攻撃に関する調査特別委員会(いわゆる「9.11委員会」)を設置し、キーン元ニュージャージー州知事を委員長に任命した。7月22日、9.11委員会は最終報告を発表し、米情報機関がアル・カーイダによる攻撃計画を防ぐ機会を複数逃したと指摘し、関係情報機関を統括する「国家情報長官」(Director of National Intelligence)ポストの新設を含む政府機関の改革を提言した。同提案を受け、ブッシュ大統領が議会に情報機関の編成を促し、上下両院にて米国情報機構改革が審議され、最終的に可決した。2005年2月17日、ブッシュ大統領はネグロポンテ駐イラク大使を国家情報長官に指名した。
(2)議会の動き

  • 2004年11月2日の連邦議会選挙の結果、連邦上下両院とも、共和党が多数党を維持し、更に議席を上積みした。上院は南部5州の民主党議員引退による新人候補の選挙戦は、全て共和党候補が勝利したが、イリノイ・コロラドでは民主党候補が勝利。選挙の結果は、上院(共55、民44、独1)、下院(共232、民202、独1)。上院民主党ダッシュル院内総務が落選したため、リード氏が院内総務に昇格した。
(3)同性結婚を巡る動き

  • 2004年2月4日、マサチューセッツ州最高裁判所が、同性愛者に対し「結婚」としての法的立場を与える判決を下し、同州においては、5月16日より同性愛者のカップルに対して法的立場が与えられることになった。加えて、2月12日より、カリフォルニア州サンフランシスコ市が同性愛者のカップルに対して結婚証明書発行を開始したことを受け、同性愛者の結婚の是非を巡る議論が活発になった。2月24日、ブッシュ大統領は婚姻を男女間のみとする憲法修正案を支持する旨表明し、その通過を議会に対して求めた。同趣旨の憲法修正に関する提案は、連邦議会で否決された。同性愛者の結婚は、大統領選挙における争点の一つになった。

  • 11月2日の大統領選挙・連邦議会選挙と同時に、11州(アーカンソー、ジョージア、ケンタッキー、ミシガン、ミシシッピ、モンタナ、ノースダコタ、オハイオ、オクラホマ、オレゴン、ユタ)にて婚姻を男女間に限る(同性結婚を禁止する)住民投票が行われ、いずれも成立した。
(4)地方政治

  • 2003年10月7日、デービス・カリフォルニア州知事(民主)に対するリコールが成立し、シュワルツネッガー候補(共和)が当選。残り任期07年1月まで知事を務める。知事のリコールは1921年ノースダコタに次いで米国史上2番目。

  • 2004年6月21日、ローランド・コネチカット州知事(共和)が公共事業の受注に収賄疑惑の中辞任し、ジョディ・レル副知事が知事に昇格した。また、マグリーヴィー・ニュージャージー州知事(民主)がゲイであることを告白・辞任し、11月16日、コーディ同州上院議長が知事代行に就任した。
(5)その他

  • 2004年6月5日、レーガン元(第40代)大統領がカリフォルニア州にて死去。11日、ワシントンにおいて国葬が行われた(1973年のジョンソン大統領以来31年振り)。

4.米国情勢概観:外交

第二期ブッシュ政権の主要外交政策目標に大きな変化はないと思われる。引き続き、テロとの闘い、大量破壊兵器の拡散防止、国土安全保障、イラクの安定化が主要課題である。ブッシュ大統領は、就任演説、一般教書演説で世界における自由と民主主義を広めるとの理念を提示した。これらをテロの過激思想に対抗する根本理念として明確に打ち出した。上記の政策目標を米国一国のみで推進することは困難。同盟国、友好国との協力を一層強化すると見られる。ブッシュ大統領は、米国と友好国を守るために必要な場合には、武力を使うものの、一義的に武力行使を想定せず、また、米国式の統治形態を押しつけることはしないと表明した。 主要地域ごとに見れば以下のとおり。

(1)アジア

(イ) 北朝鮮六者会合の枠組みを通じた核問題の解決を追求。北朝鮮外務省の「核保有」、「六者会合参加の無期限中断」に関する声明について、北朝鮮の孤立を深めるだけとして、六者会合の早期再開を呼びかけ。
(ロ) 中国:六者会合において北朝鮮に対して影響力を有する国としてその役割を重視。協力的かつ建設的な関係を構築しつつあるが、一方で価値観において大きな差異があることも認識(ライス長官)。
(ハ) 韓国:六者会合におけるパートナーおよび同盟国として、引き続き関係を重視。

(2)中東

(イ) 拡大中東地域の民主化:自由・民主主義の推進において、その対象の中心は、拡大中東地域。ブッシュ政権は、米国の国土安全保障とも密接に関連する拡大中東地域の民主化を精力的に推進していく。アフガニスタン、イラクにおける選挙、パレスチナ自治政府長官選挙のような前向きな成果を強調しつつ、今春のレバノン議会選挙についても自由な選挙となるよう要求。
(ロ) イラク:1月末の国民議会選挙の成功はブッシュ政権にとり大きな自信。先の一般教書演説でも、関係国・機関との連携を強調し、今後、政治プロセスの進展、治安の改善等に向けた協力を強化していく趣。軍の撤退期限は、テロリストを利するのみとして明らかにせず。警察や軍隊といった治安組織の訓練を通じ、イラク政府の能力強化に努力
(ハ) 中東和平:アラファト前議長の死去を受け、新たな機会が訪れたとし、ロードマップのプロセス再開を関係国に呼びかけ。3億5千万ドルの対パレスチナ支援を発表(一般教書演説)しつつ、当事者自身が責任を果たすことを重視する姿勢を堅持。
(ニ) イラン:核兵器を追求していること、中東和平を破壊するようなテロ活動を支援していることを強く批判(含む一般教書演説)。核問題については、現時点では、英、独、仏による交渉を見守っている。イランとの直接対話を行うことは拒否
(ホ) シリア以前からシリアのテロ支援を非難(含む一般教書演説)。ハリーリ・レバノン前首相の爆破テロによる殺害を受け、レバノンに対する干渉が情勢を不安定化させようとしていると批判を強め、駐シリア米大使の事実上の召還を発表(2月15日)。

(3)欧州

(イ) 2月にライス国務長官とブッシュ大統領が訪欧。米欧は自由、民主主義という価値を共有しており、これら価値を実現する上でのパートナーとして前進すべきと前向きなメッセージを発信。
(ロ) EUの対中武器禁輸解除については、アジアの安全保障への戦略的影響、中国の人権状況への懸念を表明し、解除に強く反対。



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