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QDR2001(4年毎の米国防計画の見直し)報告


 2001年10月1日、米国防省はQDR(Quadrennial Defense Review)報告を議会提出。2000年度国防予算授権法は国防長官に今後20年の国防政策(戦略、戦力構成、近代化、インフラ、予算)の包括的見直しを義務づけた。これに基づきQDRはブッシュ政権国防戦略の大枠と今後2003年度予算等で具体化する戦力構成の基本方針を示すもの。

1.今日の安全保障環境についての認識

(1) 非対称的脅威:テロ多発、非国家アクター登場、CBRNE(化学・生物・放射線・核・強化高性能爆薬兵器)拡散等により安全保障環境は不確実化。

(2) 不安定性を有する地域:紛争発生地予見が困難化。中東-北東アジアの弧、特にベンガル湾-日本海の東アジア沿岸部(East Asian littoral)は危険。アジアに膨大な資源力をもつ軍事的競争相手(a military competitor with formidable resource base)出現可能性。脆弱国家がテロ組織の聖域化。

(3) 軍事における革命(RMA):CBRNE・ミサイルが拡散し宇宙・サイバー空間で軍事競争。

2.国防戦略の基本ライン

(1) 新しい概念

(イ) パラダイムの変更(Paradigm Shift):(a)敵、戦争発生場所の不確定化に応じ、国防計画を「脅威対応型(threat-based)」から、あり得る敵の攻撃方法に対処する「能力対応型(capability-based)」に変更。(b)同時生起の大規模紛争で侵略を撃退し(defeat)、うち一つで決定的勝利(decisive victory)(従来の「2MTW勝利」からの変更)。
(ロ) リスク管理(risk management):現在・将来の脅威に対処のため、リスクを評価・想定し、(a)作戦上、(b)制度上、(c)戦力管理上、(d)将来の4分野に分けて管理。
(ハ) 変革(transformation):将来の脅威に効果的・効率的対処のため作戦目標変更(国土防衛、CBRNE・サイバー戦対応等重視)、統合作戦強化、組織合理化、変革能力開発、組織変革を推進。先端技術によるステルス性、C4ISR(指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・監視・偵察)、長距離精密打撃能力を重視。単一の国家ミサイル防衛(single-sited "national" missile defense)から、多層のミサイル防衛(layered missile defense)に変更。

(2) 9月11日テロを受けて強調されたと思われる概念

(イ) 国土防衛(homeland defense):国土防衛は軍の最優先事項。新設の国土安全保障局(Office of Homeland Security)は連邦・州・地域団体連携を調整。
(ロ) 非対称戦対処(asymmetric warfare):テロ、奇襲、欺瞞、CBRNE・ミサイル攻撃、サイバーテロ等、非対称戦に対処。
(3) 従来から維持されている方針

(イ) パラダイムの変更(Paradigm Shift):前方抑止(deter forward):同盟国・友好国と協力し、地域アクセス・相互運用性・情報協力を維持し、侵略を抑止。
(ロ) 同盟国・友好国の安全保障(assure allies and friends):同盟国・友好国へのコミットメント保障。地域に適合した(reagionally-tailored)前方駐留・前方展開部隊維持。

3.当面の対応

(1) 20世紀後半の西欧・北東アジア重視の態勢の見直し
  • 西欧、北東アジアの他にも基地、駐留強化。重要地域での米軍の一層の柔軟性確保。
  • 恒常的演習場・基地のない地域での米軍の演習訓練のための外国施設アクセス確保。
  • 地域の抑止要請に基づき兵力、装備を再配分。
  • アクセスを拒む大量破壊兵器を持つ敵への遠征作戦のため、輸送、事前集積、基地、新兵站概念等により機動性を確保。

(2) 同見直しに伴う措置

(イ) 世界規模で抑止力を強化するため、前方展開する暫定旅団戦闘チーム(IBCT)の2007年までの欧州駐留を目指す。また、ペルシャ湾の地上戦力強化を模索(陸軍)。
(ロ) 西太平洋で空母機動部隊プレゼンス増強、3~4隻の水上戦闘艦、複数の巡航ミサイル搭載潜水艦の「母港化(homeporting
(ハ) 太平洋、インド洋、ペルシャ湾において緊急事態に利用可能な基地増加を計画し、ペルシャ湾、西太平洋での作戦支援用の補給、兵站中継基地を確保(空軍)。
(ニ) 事前集積、高速海上輸送、新両用作戦概念を開発し、地中海配備の洋上事前集積艦の一部のインド洋・ペルシャ湾への移転検討。同盟国、友好国と協議し、西太平洋沿岸部における戦闘のための海兵隊訓練の可能性を模索(海兵隊)。
(ホ) 国防戦略の新重点地域に対応し特殊部隊の世界配置の変更を勧告。
(ヘ) 他地域紛争への兵力展開のハブの役割も果たし得る西欧及び北東アジアの重要基地を維持。

4.我が国に関係のある記述

【第 I 節 21世紀の米国の安全保障】
  • 同盟国、友好国の安全を保障。重要地域(欧州・北東アジア・東アジア沿岸部・中東・南西アジア)の敵支配を防止。中東-北東アジアの弧は不安定、特にベンガル湾-日本海の東アジア沿岸部は危険。アジアに膨大な資源力を持つ軍事的競争相手の出現可能性。
【第 II 節 国防戦略】
  • 同盟とパートナーシップの強化(新しい防衛協力を発展させ平時の相互運用性向上・共同訓練等の準備の強化)
【第 III 節 合衆国軍隊の世界規模での軍事態勢の新たな方向づけ】
  • 西太平洋で、空母機動部隊プレゼンスの増強、3~4隻の水上戦闘艦、複数の巡航ミサイル搭載潜水艦の「母港化(homeporting)」を模索。
  • ペルシャ湾、西太平洋での作戦支援用の補給、兵站用中継基地を確保。
  • 同盟国、友好国と協議し、西太平洋沿岸部における戦闘のための海兵隊訓練の可能性を模索。
  • 他地域への兵力展開用のハブの役割も果たし得る西欧及び北東アジアの重要基地を維持。
(参考)冷戦後の米国の国防戦略・戦力構成の見直しの経緯

1.ブッシュ(父)政権
  • 新防衛戦略 (New Defense Strategy、90年8月):国防計画の重点をソ連の脅威から地域脅威へ移行。
  • 地域防衛戦略(Regional Defense Strategy、92年2月):大量破壊兵器拡散に対応。効果的戦略抑止、前方展開、危機対応能力、戦力再構築能力を重視。
  • 基盤的戦力(The Base Force、91年9月):冷戦期比25%の戦力削減と10%の国防予算削減を目標。
2.第一次クリントン政権
  • ボトムアップ・レビュー(BUR : The Bottom-Up Review、93年9月):ほぼ同時に生起する2MRC(Major Regional Conflict、大規模地域紛争)に対応するのに必要な戦力を積み上げ方式で算定。
3.第二次クリントン政権
  • 4年毎の国防計画の見直し(QDR、97年5月):関与(engagement)により米の指導力・影響力維持。安全保障環境を「形成(shaping)」、危機に「対処(responding)」、挑戦に「準備(preparing)」。2MRCs対処能力維持(BURのMRCをMTW(Major Theater War、大規模戦域戦争)に用語変更)。MTWからSSC(Smaller-Scale Contingencies、小規模緊急事態)に至る多様な任務遂行能力を要求しつつ、あらゆる分野で特例なく節約・効率化を促進。欧州・アジア太平洋に各10万の兵力維持。
(参考)国防長官府の「国防態勢の見直し」(The Top-to-bottom review)

 ラムズフェルド国防長官を長として国防省長官府で行っている、軍の変革、調達、核戦力、通常戦力、情報・宇宙等の分野毎の見直しは本年5月に完成予定であったが、作業が遅れ未完成。国防予算策定準備の指針ともなり、国防計画に関する実質的決定は、QDRよりも本見直しが重要とも言われる。

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