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東アジア・ラテンアメリカ知的交流シンポジウム(SIEALA)
<共同議長サマリー仮訳>

2月21日、東京

 中国、インドネシア、シンガポール、タイ、韓国、アルゼンティン、ブラジル、チリ、コロンビア及びメキシコからの有識者の参加を得て、東アジア・ラテンアメリカ知的交流シンポジウム(SIEALA)が、2月20日及び21日、東京において開催された。日本はシンポジウムの主催国としてコーディネーターを務めた。
 本シンポジウムはEALAFの枠組みの下、東アジア及び中南米の将来的な協力に関する革新的な枠組み作りを目指した国際的なブレインストーミングの場であった。議論の結果がEALAFにおける対話について新しいアイデアを提供することを期待しつつ、3月29日及び30日、チリのサンチャゴにて開催されるEALAF第1回外相会合において、同サマリーを提出することに同意した。
 参加者は、EALAFは依然として生まれたばかりの段階にあるが、近い将来、アジアと中南米における有益な相互協力のためのきっかけとなることが期待されており、右フォーラムを重視していく必要がある旨確認した。以下は、参加者が2日間のシンポジウムにおいて討議した主要な点である。

1.実質的な両地域間関係に向けての夜明け

 東アジア・中南米間の交流は21世紀初頭よりかなり以前から開始されてはいたものの、これら両地域間には有機的関係は事実上存在しなかったというのが、参加者の共通の理解であった。実際、その関係は「ミッシング・リンク(missing link)」とも表現されてきた。両地域間関係は、世界の成長センターとしての両地域の潜在力にもかかわらず、我々の期待し得るものを越えないものであった。
 多数の人口及び豊かな文化的多様性を有する両地域には協力のための大きな可能性がある。参加者は、従来の両地域間関係の希薄さを克服するためには、両地域は相互理解のための努力を強化し、協力関係促進のための努力をすべきであると考えている。相互理解を深めるための方法として考えられることは、急速に進むグローバリゼーションの中で我々が直面する共通の課題について経験を共有し、互いに学ぶことである。
 こうした課題に取り組みつつ、両地域における各国は、国際社会の利益のために共同でイニシアティブを取り、新しいグローバルな規範及び制度を策定し強化することを期待されている。我々は、東アジア・中南米間における実質的な関係の発展への夜明けを迎えているのである。

2.SIEALAにおいて提起された議論

 過去十年間にグローバリゼーションが深化するにつれて、「国境」の意義はますます小さくなってきた。人々はこの過程から恩恵を受けてきた反面、数多くの新たな課題がその結果として現れ、国際社会による取り組みが待たれるようになった。本シンポジウムの参加者は右認識を共有し、相互の知的交流の促進を通じて経験を共有することが重要であると考えられる政治、社会、文化及び経済の分野における課題につき議論を行った。

(1)政治、社会および文化

 東アジア・中南米間においては、経済的な結びつきが最も顕著であるが、両地域間関係のより深い協力関係の強固な基盤を作るためには非経済分野における相互理解もまた不可欠である。
 政治分野に関しては、政策決定プロセスの透明性、軍に対するシビリアン・コントロール、地方分権、伝統的政治制度の正当性の喪失、及び市民社会の役割を含む統治(ガバナンス)の問題に言及した参加者もあった。
 多くの参加者は、社会問題というテーマが最も重要で緊急に取り組む必要のある分野の一つであるということを認識した。グローバリゼーションの過程は、市場において勝者と敗者の間の格差を広げつつある。グローバリゼーションの長期的インパクトについては未だ確かなことを言える段階ではないが、少なくとも短期的には、我々は貧困、失業また社会福祉制度の脆弱化といった深刻な問題に直面している。同様の社会的混乱は、交通手段及び通信技術が発達するに伴い、違法な麻薬売買やその他の犯罪の蔓延を間接的に促進することとなった。従って、厳しい予算制約の下でいかに社会保障制度の改革を行うか、また、社会福祉と、より的を絞った社会的セーフティー・ネットのどちらが適切であるか、さらにはいかにして人々への権限付与を助長するかを考えることは、両地域にとっての共通課題である。
 環境、気候にまつわる自然災害、感染症問題を検討する必要性についても言及があった。
 協力関係を深めるための第一歩として、文化交流を通じた相互理解が非常に重要であるというのが参加者の共通認識であった。EALAF基金あるいは東アジア・ラテンアメリカ文化基金の設立という提案が、そうした交流の制度的基盤として提案された。その他、マスコミ、若手政治家や青年リーダー、及び有識者等の重要な交流も右基金を通じて行い得るとの意見があった。

(2)経済問題

 経済分野については、東アジアのマクロ経済的基盤が中南米よりはるかに優れているという事実を直視して、とりわけ教育と人的資源開発の役割に焦点を当てながらこの相違の理由を分析する価値があるとの見解を述べる参加者があった。財政危機再発防止のために情報及びデータの交換を実施するという提案もなされた。また、ITやその他革新技術の可能性を含む新しい経済開発戦略の模索を提案する参加者もあった。さらに、こうした新しい開発戦略の中で中小企業の質的向上を考慮すべきとの指摘もあった。
 多くの参加者が、アジアと中南米における統合への動きの特徴を比較研究して、より良く理解することの必要性を認めた。東アジアと中南米の経済統合について語るのは時期尚早ではあるが、その方向への第一歩として二国間交渉を促進すべきであるとの意見があった。

(3)その他関連事項

 多くの参加者が、EALAFの扱うべきテーマと他の同様なフォーラムが行ってきたこととの重複を避け、現段階においてEALAFは、国連、WTO、IMFのような国際機関と、二国間政府協定や民間のイニシアティブのような補完的地域枠組の中間に位置づけられる地域間協力のフォーラムと考えるべきであるという点において一致した。参加者の中には、EALAFは有益な政府間フォーラムではあるが、両地域の地域開発銀行やシンクタンクのような関係国際団体と連結することで、EALAFの発展に寄与できるであろうとの意見があった。

3.将来においてEALAFの対話の基盤となる問題

 本シンポジウムにおける集中的かつ幅広い議論を通じ、参加者は、EALAFの枠組の下で将来的に議論されうるものとして、いくつかの分野を3月の外相会合に提案することにつき合意した。参加者は、両地域が抱える共通課題の複雑さを特定・分析する過程において、両地域の経験を共有するためには以下の分野が最も重要であると考える。

(1) 国内的及び国際的な統治

 世界がますます相互依存的になっている中で、各国政府の統治能力は以前より制限されている。一方においては、各国政府は今やその権力の一部を国際的あるいは超国家的機関と共有する必要がある。他方、各国政府の責任と対応が要求される官民双方のレベルにおいて国家に準ずる組織の出現が見受けられる。しかしながら、より多くの課題と期待が各国政府に寄せられていることもまた事実である。いかにして公正な国際的ルールを作り上げるか、また、いかにして効率的で透明性のある政府を確立するかは、すべての国々にとって共通の課題である。

(2)社会問題と社会政策

 経済分野におけるグローバリゼーションの進展によって企業間の国内・国際競争の激化を招き、勝者と敗者の格差が拡大する。右結果として生ずる社会問題を検討し、社会保障と貧困削減のための最善策を模索することが課題の一つとなる。共同参加型のセーフティーネット及び権限付与のような国民主体の解決策にも注目すべきである。

(3)新開発戦略

 グローバリゼーションは、過去20年の間に自由化、規制緩和および急速な輸送・通信技術の発展によって急速に進んだ。この文脈の中で我々は各国の経済競争力の強化という新たな課題に直面している。公正で持続的な発展を遂げるために、すべての国々が国内及び国際レベルにおいて情報格差(digital-divide)の問題に対処する必要がある。また、持続的な社会経済開発の鍵となる基幹産業(とりわけ中小企業)を育成し、産業構造を強化することも重要である。

(4)貿易、投資及び地域間協力

 両地域におけるマクロ経済状況、貿易及び投資に関する情報格差には比較分析を通じて取り組むべきである。この課題は両地域間経済協力のための前提条件である。また、地域間及び二国間における統合と協力関係、及び太平洋を挟んで実施されうる協力関係に関する性質を理解し、右プロセスによって生じ得る各国及び相互に与えうるインパクトを評価することも重要である。

(5)文化面の相互理解の促進

 グローバリゼーションと通信技術の発展は、文化的及び制度的標準化を促している。各地域及び各国の文化がこの課題にいかに対処するかは、両地域間の「経験の共有」といった文脈において重要なテーマである。相互理解に向けたこのような努力に基づき、両地域は、異文化間のプログラムや行事、奨学生制度や奨学金、相互理解のために尽力した者に対する褒賞を含め、効果的な文化交流・協力を促進する手段を模索すべきである。文化活動の複雑さと多様性という観点から、参加各国が東アジア・ラテンアメリカ文化財団のような特別機関を創設することが望ましいが、その設立はなお検討される必要があろう。

(6)環境問題

 環境の悪化は、経済成長及びその結果としての都市化や人口増大、また競争的な生産活動等多くの要因によって生じる。経済競争による環境保護基準の低下を防ぐために、各国は自国の環境問題を把握し、政策調整を行う必要がある。加えてEALAF加盟国は、太平洋の両岸に影響を及ぼし悲惨な自然災害を引き起こす「エル・ニーニョ」あるいは「エンソ」のような現象に特別な注意を払うべきである。

(7)教育・科学技術

 教育はすべての国々にとって持続的で持久的な発展の鍵である。東アジアと中南米は新たな国際競争時代に向けた各国の人的資源開発戦略を研究することによって互いの地域から学ぶことができる。両地域は、世界の科学技術の急速な発展に遅れをとらないためにも科学技術交流を拡大する手段について模索すべきである。

4.EALAFの枠組みの下、上記の問題に取り組むために、数名の参加者より、加盟国の自発的参加を前提とし、有識者、企業家及び政府職員から成るいくつかのワーキング・グループ(WG)の結成が提案された。これらのWGは、個々の問題について合同研究を行い、政府関係者が両地域間関係の強化のための具体的な措置を提案する際参考とするために、報告書や研究成果を高級実務者会合及び外相会合に報告することを目的とする。EALAF参加国が有識者による考察と助言を求められるよう、東アジアと中南米の主要なシンクタンクのネットワークを緊密化することが提案された。我々、東アジア・ラテンアメリカ知的交流シンポジウム(SIEALA)参加者は、上記提案を強く支持するとともに、本シンポジウムがEALAFの発展プロセスにおける第一歩を印すものと考える。


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