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在サマーワ連絡事務所より
サマーワ「キャプテン翼」大作戦 -給水車が配る夢と希望- その2 平成16年12月
在サマーワ外務省事務所 江端康行 1.ロード・トゥ・ウィング 「これはいける!」と思わず膝を叩きました。丁度、日本のODAで給水車26台がムサンナー県水道局に供与されることが決まっていましたので、その給水車にキャプテン翼をペイントして走らせれば、どんなに子供たちは喜ぶだろうか。早速、企画書を作り東京に打電します。その時は、どうやって給水車に翼君をペイントするか、キャラクター肖像権をどうするか、そんな細かいことはあまり気にしていませんでした。とにかく、ムサンナー県の子供たちをあっと言わせてやろう、それだけしか考えていませんでした。ただ、私は1ヶ月ごとにサマーワと東京を往復して勤務していますので、東京に帰ってから直接企画を進められるだろうと楽観的に考えており、帰国するのを待ちわびていました。 (1)キャラクター肖像権 まず企画の前に立ちはだかったのが「キャラクター肖像権」です。漫画やアニメのキャラクターには肖像権という権利があり、権利を持っている人や会社の了承なしには勝手に使うことは出来ません。誰が許可を持っていて誰の許可を得たらいいのか、これが問題です。どうやって調べようかと思っていたところ、幸運が舞い込みました。帰国する前に夕食を共にした在クウェート日本大使館の高橋参事官夫妻に「キャプテン翼」計画の話をしたところ、高橋夫妻が集英社の「少年ジャンプ」(キャプテン翼が連載されていた)の関係者と知り合いで、この企画を集英社に繋いでくれることとなったのです。帰国すると早速、集英社のライツ事業部というキャラクター肖像権を管理している部署に赴き、日本が供与する給水車にイラクで大人気のキャプテン翼を使わせてもらいたいとお願いをしました。 イラクの子供たちが喜ぶのなら、きっと集英社も二つ返事で引き受けてくれるだろう、そう思っていのは大間違いでした。イラクへの陸上自衛隊の派遣にキャプテン翼を協力させていると見られるのではないか、社内は大激論となったそうです。集英社が結論を出すまでの間、時間だけが無情に過ぎていきます。 そして、1週間。集英社の担当の方から、「高橋先生の意見も伺って相談した結果、お受けしたいと思います」との返事がありました。最終的に、イラクの子供達やサッカー交流のためにODAに協力することは良いことではないか、との判断があったようです。 道は開けた!頭の中にしかなかったプロジェクトが音を立てて動き出した瞬間でした。 (2)塗装ステッカー 肖像権の許可は出ましたが、次の問題はどのように給水車にキャプテン翼をペイントするか、です。まさか、高橋陽一さんにイラクに行って描いてもらうことなど不可能ですし、そもそも現状では一般の民間人がイラクに入ることすら出来ませんから方法は極めて限定されます。そこで目に付いたのが山手線です。日頃目にする山手線ですが、最近は車体にカラフルな塗装がなされています。実はあれはペイントされたものではなく、塗装ステッカーと呼ばれるものだということを何かで読んだ記憶がありました。そこで、塗装ステッカーの会社を当たってみることにしました。 しかし、気温が50度以上にもなるサマーワですから、日本では考えられないような強度が必要とされます。また、給水車は縦2m×横6mの大きさですから、ステッカーも大きなものでなければいけません。色々な会社に連絡をしましたが、なかなか条件を満たす会社がありません。いくつもの会社に断られ、また、条件は満たしていても価格が折り合わなかったりもしました。そんな中、ようやく引き受けてくれる印刷会社が見つかりました。 (3)ステッカーの貼付 ステッカーの大きさは縦1.5m×横2mという大きさです。それを貼るのは普通職人さんです。しかし、職人さんにイラクへ行ってもらうことは出来ません。結局、私が自ら貼り方を覚え、サマーワの陸上自衛隊と協力して貼ることとなりました。印刷会社の方々は非常に親身に協力してくださり、十人くらいのスタッフの方と共に素人にも貼り易い方法を一から研究しました。私も実地に2枚ほどのステッカーを貼らせてもらいました。思った以上に難しく、空気が入ってしまいます。どうしたら空気を入れないように簡単に貼れるのか、改良が加えられていきました。4~5時間の試行錯誤の末、ようやく「サマーワ式」貼付方法が完成しました。 同時にステッカーは急ピッチで製作され、私が次にサマーワへ出発するまでに完成されることとなりました。 2.チーム翼 ![]() サマーワの宿営地に着くや、陸上自衛隊の方にお願いし、塗装ステッカー貼付のための特別チームを編成して頂きました。名前は「チーム翼」。早速、ミーティングを行い、貼付方法の説明を行いました。チームの皆さんはとても真剣に説明に耳を傾けていました。ムサンナー県水道局に給水車を引き渡す日取りも決まり、準備万端と行きたいところですが、給水車がなかなか到着しないという事態が発生しました。ようやく給水車3台が到着したのが、供与式の5日前でした。時間がありません。急いでステッカーを貼らねばいけません。しかし、給水車の表面は長旅のせいか土埃で汚れきっていました。巨大な20tタンカー3台を洗わねばなりません。これが本当にやっかいな仕事で、腰痛持ちの私は腰が痛くてたまりませんでした。まさか、この年になって20tタンカーの洗車をするとは思ってもみませんでした。しかし、苦労の甲斐もあって、給水車はピカピカになりました。これで貼付作業に進めます。 ![]() (つづく) |
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