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午後2時20分頃、関係者5名全員が武装警察詰所に収容された後、査証事務担当副領事は、航空機事故の関係で邦人保護のため大連へ向かっていた総領事に携帯電話で第一報を入れ、その後、総領事の指示により、中国大使館公使に連絡した。また、第一報を受けた総領事は、直ぐに外務本省に連絡を取り、状況を説明した。これに対し、本省担当者からは、とりあえず国際法上の問題を指摘しつつ、追って連絡する旨述べた。 |
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午後2時30分頃、総領事館からの連絡を受け外出先より戻った警備担当副領事が、武装警察詰所内に入り、詰所の奥の部屋の中に男性2名、幼児を含む女性3名がいるのを確認した。その時点で、20名以上の武装警察官が応援のため総領事館正門付近に集まってきていた。 |
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同副領事が、中国語で国籍とどこから来たのかを尋ねたところ、男性の内の1名が、中国語で北朝鮮と答えた。そこで、5名の関係を質問したところ、同じ男性が、他の4名は自分の弟、妻、娘、母親であると紹介した。 |
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以上のやりとりにより、5名が北朝鮮から来た家族であることが判明したため、同副領事は、総領事に携帯電話でその旨報告し、今後の対応につき指示を仰いだ。また、外務本省との連絡のため事務所内に戻っていた査証担当副領事は、本省関係者から、更なる指示があるまで現状を維持せよとの指示を受けた。こうしたことを踏まえ、警備担当副領事は、現状維持のため、武装警察詰所の入口付近で立ちふさがり、5名が他の場所へ移されるのを阻止していた。 |
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午後2時50分頃、瀋陽市公安局の警察車両1台が到着し、武装警察詰所の前に横付けされた。その後、武装警察官が5名の両脇を抱えるようにして詰所から出てきそうになったため、警備担当副領事は、待つように中国語で何回も繰り返し、両手を大きく広げて入口をふさぐことにより、身振りで彼らの動きを制止し、詰所内部に押し戻した。この間、外務本省からは、抗議の上、5名の身柄を総領事館構内に戻すよう指示を試みたが、電話が通じなかった。 |
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その後、武装警察官が再度5名を詰所から出そうとしたため、警備担当副領事は、再び待つように中国語で言った。この時、そのすぐ傍らにいた査証担当副領事が中国大使館公使に改めて携帯電話で電話し、現場の状況が緊迫しつつあることを説明の上、対応振りにつき指示を仰いだ。同公使は、5名が既に総領事館敷地外に出されてしまっていること、また、状況が緊迫の度合いを増す中で、武装警察にこれ以上抗って物理的に押しとどめることもできないとの認識の下に、無理はするな、最終的には連行されても仕方がないと述べた。この間、総領事からも警備担当副領事に同様の趣旨につき連絡があった。 |
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警備担当副領事は、このような指示を受け、広げていた両手を下ろし、武装警察詰所入口をふさぐ形になっていた体の向きを変えた。この後、午後3時過ぎ、5名は横付けされていた警察車両に乗せられ、現場を去って行った。その際、総領事館員が武装警察官に対して、感謝の意を表明した事実はない。 |