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緒方イニシアティブ(難民・避難民支援を軸とした地域総合開発支援)
2001年の時点でアフガニスタンの周辺国には350万人にのぼる難民がいました。内戦が終結したことで、170万人という予想を遙かに越えた数の難民が帰還しつつある一方、民族の対立や干魃の影響により100万人以上と言われる国内避難民が発生しています。こうした人々を新しい国造りの一員とするためには、彼らの帰還先での生活手段確保を支援することが必要です。特に、地方支援を拡充し大量の難民、避難民を受け入れる環境を整備することは急務となっています。
緒方イニシアティブは、緒方貞子アフガニスタン問題総理特別代表が、2度のアフガニスタン訪問の際行った難民・避難民の現状視察等を踏まえ、我が国による今後のアフガニスタン支援の方向性について示唆・提案した内容を具体化する地域総合開発支援です。優先3地域として南部のカンダハル、東部のジャララバード、北部のマザリシャリフという地方都市を中心とした地域を選定し、様々な分野にまたがる包括的な支援を行います。目指しているのは、1)地域コミュニティーの自立促進に結びつく総合的な開発支援のあり方の追求、2)人道支援から復興支援への継ぎ目なく速やかな移行の実現、つまり、困窮する人々の人道ニーズを満たす支援、難民・避難民の故郷への帰還の支援、そして彼らの帰還先での自活に向けた取組みと彼らを受け入れる地域社会の能力拡大への支援を適切なタイミングで提供すること、更に、3)移行政権の能力強化と4)中央政府と地方当局の連携強化です。前述のカンダハル・カブール間・幹線道路整備計画、JICAを通じた我が国の二国間支援等との連携を図ることで、日本による総合的な地域開発計画のモデル・ケースとなるべく意図されています。
第1弾として難民・避難民を対象とする再定住化支援に焦点を当て、国連難民高等弁務官(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)などの国連機関等を通じた仮設住居機材の供与、水供給システムの改善、農業再興、児童・教員用教材の配布、仮設教育施設の供与等の他、NGOを通じたコミュニティー復興支援等を行っています。同プロジェクトによって約150万人が受益すると想定されており、7月に発表して以来着々と実施中です。より大規模で包括的な地域総合開発支援計画、緒方イニシアティブ・フェイズ2は、昨年11月より実施されています。想定受益者数は300万人であり、緊急所得創出事業をはじめ、労働の対価としての食糧配布、基礎的なインフラ整備、母子健康保全、教育実施能力強化、地雷対策事業等を行っています。
現在、緒方イニシアティブ・フェイズ1、2をフォローアップし、支援内容の補完・拡充を図るものとしてフェイズ3が実施されています。
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地雷対策
アフガニスタンは世界でも有数の地雷被害国であり、約800平方kmの土地に1,000発以上の地雷が埋設、1ヶ月に300人以上の被害者が発生していると言われています。地雷の除去は、住民生活や難民・避難民の帰還という人道的な観点から重要であるばかりでなく、復興・開発を進める上での障害を取り除くという重要な意味を持っています。日本は地雷対策を支援の大きな柱の一つにしており、アフガニスタンで行われている地雷関係の国連事業全体の30%以上を負担、この分野における最大の拠出国となっています。
昨年1月には、国連機関等による地雷除去機材(トラック、四輪駆動車、地雷探知機など)の整備計画を支援したほか、アフガニスタン人道援助調整官事務所(UNOCHA)の地雷除去活動、赤十字国際委員会(ICRC)による地雷犠牲者への義肢の提供や地雷啓発活動の支援を行いました。また、前述の「緒方イニシアティブ・フェイズ2」の一環として、絵本の供与等の地雷啓蒙活動による新たな地雷犠牲者発生の防止(将来の予防)、地雷除去活動(現在の対処)、地雷犠牲者支援のためのリハビリセンターの修復・設置(過去の回復)を、関連国連機関、NGOと実施しています。
更に、昨年4月、地雷除去が主に手作業で行われている現状を踏まえ、アフガニスタンの環境に適合した地雷除去機材を研究・開発する計画を支援することを決定しました。
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メディア支援
メディアインフラ整備は日本が1970年代から支援しているもので、カブール放送局には、約25年前に日本がODAで建設、整備を支援した建物や機材が、激しい内戦の最中も大切に維持、管理され、ほとんどが使用可能な状態で残っていました。当時JICAの専門家の指導を受けた技術者を中心として、現在はテレビ放送を再開しています。
これを支援するため、日本は、最新の放送技術や番組制作技術を学んでもらうため技術者をJICAの研修員として招聘している他、啓蒙教育、保健・衛生、民主化等に必要な情報を国民に提供するため、カブール放送局に対しスタジオ用番組制作機材等を供与しています。
昨年6月には、代議員1650名を集めカブールで開催された緊急ロヤ・ジェルガ(国民大会議)の、アフガニスタン全土に向けた衛星放送を実現するため、技術支援と機材提供を行いました。今後の和平プロセスの行方を大きく左右するこの会議が、国民の強い関心を集めて広く視聴されたことは、アフガニスタンの民主化を促進する意義深いことであったと高い評価を受けました。
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