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留学生=親善大使


東京大学教養学部 小山里司


 日中韓関係が成熟するにつれ、日本に来る留学生が増えつつある1。しかし、日本留学の現状を留学生の立場から見ると問題点は山積している。その根底には、留学生は日本に一時滞在するだけのお客様である、という意識があるように思える。留学生は帰国した後は、その国と日本とを結ぶいわば親善大使たる存在になるのだから、彼らに満足のいく留学生活を送ってもらうことは長い目で見ると相互理解の深化、ひいては国益の増進へとつながる、というのが私の問題意識である。そしてそれは一、二年間のみを日本で過ごす語学留学生においてもあてはまる。本レポートではこの問題意識と日本語学校に通う学生の増加率が著しいことから、日本語学校における問題点とその解決のための提言を示した。これを書くにあたって日本語学校に通う中国人(大陸、香港)、韓国人の3人にインタビューを行った。調査対象は限られているが、問題点の一端は見えてくるだろう。

 問題点は主に3つに分けられる。費用、学校、交流である。

I.費用

 一般的に日本語学校の一年間の経費(入学金、学費、選考料などを含む)は60万円前半から80万円後半にわたる2。また家賃、交通費、食費などを合わせると200万円以上は必要となる3。留学生はこれらの費用を捻出するために、基本的にはアルバイトをしなければ生活ができない。奨学金制度4を整備する他にも、留学生を金銭面から援助する政策が必要である。具体的には全学校の学生に通学定期を買えるようにする、留学生寮を安い価格で利用できるようにする、各種割引を適用する、などである。定期券についてはビザの種類により、通学定期が買える学生と買えない学生がいる。ビザの制度上一律に通学定期を与えるのが難しいという意見もあるが、外国人留学生については一律に交通費免除にするという特例法を作ることが再反論として挙げられる。

II.学校

 ここでは転校制度をとりあげる。現状では留学生が学校に不満があったとしても、原則として転校はできない。ビザ取得時に日本語学校と結ぶ契約には転校禁止という約款はないが、転校の際は受け入れる側と送り出す側の双方の同意がいるほか、入国管理局の許可が必要であり、実質上転校不可能となっている。留学生は高い料金を払っている以上、良いサービスを受ける権利があると感じており、この制度に疑念を持っている。原則として転校可能とすることで、日本語学校の淘汰を進め、良いサービスを提供するよう努めるべきである。
 また、留学生の相談窓口がないことは大きい問題である。日本語学校には事務所があるものの、言葉の問題があったり、職員の態度がよくなく親身に相談にのってくれないという声があったりする。問題が生じたとき、困難に陥ったときの統一された窓口がないため、留学生の問題がそのまま放置される。学校への不満なり、病院紹介なりと留学生側のニーズは多いが、現状ではNPOに頼らざるを得ず、またそのようなNPOの存在はあまり知られていない5。留学生相談センターを設け、それを留学生に認知させることが求められる。

III.交流

 留学生は日本に来て日本語を学んでいる以上、日本を理解し日本人と交流したい、と考えている。しかし前述のように留学生はアルバイトで忙しく、時間がとれない。また、普段日本人と交流する機会もほとんどない。交流機会を作るために、私は日中学生会議方式と地域コミュニティー方式を提案する。前者は私が以前所属していたサークルであり、在日中国人留学生との毎週一度の交流会・討論会を主とするほか、一年に一度中国の大学生とともに日本か中国で二週間の交流会・討論会を催すものである。日韓学生会議も存在するが、ともにより知名度をあげ、多くの留学生と日本人学生が交流する場を設ける。また、同様の組織が大学ごと、地域ごとにあってもよいし、中国や韓国においても中国人・韓国人が主体となって組織的に交流を深めることは三ヶ国それぞれに留学している学生にとって有益なことである。後者は地域の住民とともに文化交流を行うものであり、留学生にとっては語学の勉強になり、茶道・書道など日本文化にも触れられる。地域住民も留学生もコミュニティーの一員であるという意識を持つことで相互理解を深めることができる。前者は学術方面に、後者は文化方面に重点をおくことで両者の差異をつけられるだろう。

 以上3点のほか、留学前に日本留学に関する情報を提供する機関が必要である。留学生の多数は自国内の仲介業者に日本語学校入学手続きを委託するが、会社は限られた学校の情報しか提供しない。たとえば領事館にて留学に関する情報を十分に提供することは、留学生に状況を事前に把握させることにつながり、予期せぬ困難を防ぐことができるだろう。

 留学生は日本にとって大事な財産であり、その財産を生かし相互理解を深めるためには、留学生数をただ増やすのではなく、制度をしっかりと整備することが必要である。「留学生受入れ10万人計画」が達成されようとしているが、今後質を高めることに重きをおき、「留学生に優しい国、日本」というブランドを作り上げれば、それは国際社会に向けての大きなアピールとなるはずである。


注1.以下の数字は文部省HP「留学生受入れの概況(平成14年版)」より
   http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/11/021114.htm
  1. 留学生総数及び対前年の増加数が過去最高
    平成14年5月1日現在の留学生数 95,550人(過去最高)
    (対前年度16,738人(21.2%)増)

  2. 学部及び専修学校の留学生数が大幅増加
    大学院 26,229人 (1,083人(4.3%)増)
    大学(学部)・短大・高専 50,321人 (10,819人(27.4%)増)
    専修学校(専門課程) 17,173人 (4,849人(39.3%)増)
    準備教育課程 1,827人 (▲13人(▲0.7%)増)

  3. 出身国の上位5ヶ国は変化なし 中国が大幅増加
    中国 58,533人 (14,519人(33.0%)増)
    韓国 15,846人 (1,121人(7.6%)増)
    台湾 4,266人 (14人(0.3%)増)
    マレイシア 1,885人 (82人(4.5%)増)
    タイ 1,504人 (93人(6.6%)増)
注2.全国日本語学校データベース
   http://www.aikgroup.co.jp/j-school/japanese/index.htm

注3.インタビューの中で中国(大陸、香港)からは家賃・交通費・食費につき、具体的な数字をあげてもらった(単位は万円)。その他費用については含まれていないが、電気・ガス・水道、衣服、生活用品、旅行などが考えられる。交通費に大きな差がある理由の一つは、前者は就学ビザなので通勤定期しか買えず、後者は留学ビザなので通学定期が買えることである。
       家賃      交通費      食費
大陸      67.2      24      48
香 港      72      12      50

注4.奨学金制度はそれぞれの日本語学校によるが、インタビューでは(1)100人の生徒のうち3人が月6万円の奨学金を得ていたり、(2)制度がなかったりした。

注5.例えばNPO法人東京エイリアンアイズ
   http://www.annie.ne.jp/~ishn/index.html#manzokudo




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