外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 外務省案内 聞きたい!知りたい!外務省
聞きたい!知りたい!外務省

OPEC総会及び国際エネルギーフォーラムの大阪開催
経済局国際エネルギー課 片山和之課長に聞く

収録:平成14年9月10日

筑波大学国際総合学類2年 高木功介さん
筑波大学国際総合学類2年
高木功介さん

 エネルギー資源の80%以上を海外に依存している我が国にとってエネルギー問題は最重要課題と言えよう。今回は片山和之国際エネルギー課課長に我が国のエネルギー問題の展望について今月大阪で開催されるOPEC総会、国際エネルギーフォーラムとの係りを含めてお伺いした。(高木)


高木:国際エネルギーフォーラム(以下IEF)は石油などのエネルギー生産国と消費国の閣僚レベルでエネルギー政策に係る情報交換・意見交換をする目的があると言われています。そこで、片山課長にOPEC総会及びIEFの注目点は何か?という所から本日のインタビューを始めたいと思います。

片山:まず、OPECは昨年末の会議で150万バーレル/日の減産を決議し、今日まで維持されています。今後、イラク情勢・世界経済の動向を睨みつつOPECが19日に大阪で開かれる今次総会で石油生産の現状維持を決議するのか、増産するのか注目しています。日本はOPECの加盟国ではないですから、会議に参加出来ませんが開催国として総会が円滑に進行するように見守っていきたいと考えています。次に、今次IEFのテーマは「共通のエネルギー問題への対処」というもので、各セッションのテーマを見てみますと、「エネルギー情勢」「投資の円滑化」「エネルギー安全保障」「環境問題と経済成長の相互利用」「国際エネルギー問題対処のためのIEFの前進」と多岐にわたっています。また、IEFはおっしゃる通り70ヶ国と13の国際機関が一同に集いエネルギー生産国と消費国との間で情報交換・意見交換をする場です。今総会ではまた2000年にリヤドで開催された前回の会議においてサウジアラビアが提案したIEFの常設事務局設置の結論が出ると期待されています。

高木:興味深いですね。OPECがウィーンに本部を置き、年2回の定例総会を開いていることを考えますとIEFは本部もなく、会議も1~2年に1回ということに憤りを感じていた私にとって朗報に思えます。さて、日本はエネルギーの80%以上を海外に依存する経済大国です。殊に石油は日本の第一次エネルギーシェアの52%も占めている重要な資源です。このような特殊なお国柄を持つ日本のIEFにおける役割はどのようなものなのでしょうか。加えまして、開催国であるがゆえの国益はあるのでしょうか。

片山:今回、日本政府がIEFを主催し会議をリードしていきます。日本が主催することは国益にも当然繋がると考えています。我が国は今大会ではエネルギーの生産国と消費国の意見が十分反映されるように努力しますよ。つまり、エネルギーの安定供給と言う事が両者の長期的な理解であるとの観点から、会議を展開して行くつもりです。期待していてください。

高木:そう期待したいですね。ところでOPECは石油メジャーズの一方的な石油価格値下げに怒った石油輸出国が共同して石油を管理しようとして1960年に設立されました。そのため、石油危機のような石油戦略をも行使する巨大な組織として国際社会に君臨しています。一方、石油に依存しなればならない先進諸国は国際エネルギー機関(以下IEA)を組織しエネルギーの安全保障を確立しようとしています。また、OECD加盟国以外の国々も様々な形でエネルギーの安全保障を求めています。この度、2つに参加勢力を、つまり「石油輸出国」と「石油輸入国」に大別できようかと思います。しかし、石油を輸出する国に比べ、輸入する国の方が圧倒的に多いわけで、一見すると「石油輸出国」対「石油輸入国」という構造ができるようにも思うのですが、IEAやIEFの目的はOPEC等の巨大石油カルテルの権力を弱めることを考えていないのでしょうか?

片山:まずIEFは何よりも対話を促進するという点が一番の要素であることを強調したいですね。

経済局国際エネルギー課片山和之課長
経済局国際エネルギー課 片山和之課長
高木:なるほど。しかし、OPECに対抗してキッシンジャーの提唱によりIEAが設立した経緯を鑑みると、この世界は単なる対話や友好親善だけではない感じがいたしますが・・。

片山:確かにおっしゃるとおりです。しかし、OPECも現在では国際的協調の枠組みの中で活動していくことが自分たちの長期的利益につながるとの認識も広まり、明確な対立図式が必ずしもある訳ではありません。ただ、IEF期間中、各国が個別会談をする時間と機会を設けていますので、ここで白熱した議論が行われることはありえます。

高木:ところで、対日石油輸出国との友好親善は言葉を悪く言えば「ご機嫌取り外交」(笑)により石油の安定供給を実現させていると感じますが、日本にとってエネルギーに関する国際レジームの確立は意義深いと考えます。無論、国際法ですら批准国が違反しても制裁を受けることが稀であるとの盲点もありますので、国際レジームを作ったところで安定というわけには行かないのかもしれませんが、確立は可能でしょうか?

片山:OPECなどの産油国・IEA・IEFがあり、それぞれの目的と思惑を持って活動していますので、これを統一するような国際レジームの確立は現状では正直難しいですね。でも、エネルギー市場の安定は全ての諸国にとっての利益がありますから、そういう観点で協力できる分野はいろいろあると思います。

高木:さて、21世紀のエネルギー事情を考えた時、中国の問題が重要になると考えます。そこで、少し掘り下げてご質問します。まず、環境の点から話を進めさせて頂きます。「持続可能な開発」と銘を打ったヨハネスブルクサミットが先日閉幕しましたが、小泉首相は「今回のサミットにおいても、米国のみならず、発展途上国、EU等、全世界と協力する必要があるとの観点から、日本は関係国と経済開発の問題、さらには京都議定書の問題にも取り組んできた。これからは、全世界が共通したルールのもとに参加できるような体制を確立することが大事である。」との談話を発表しました。そこで、12億の人口を抱える中国が今後、経済発展を遂げた場合、化石燃料消費は莫大なものになります。また、京都プロトコルには米国に続き豪州も批准を拒否しました。豪州はオゾンホール破壊に伴う環境被害に直面している国ですらこのような有様です。そこで、「エネルギーと環境」という観点から中国政策をどう捉えますか?

片山:中国の石油消費は改革開放路線に伴う経済発展で急激に伸びています。93年からは石油の純輸入国になりました。中国が今後、順調に経済発展をしていくと、化石燃料消費は莫大なものになりますね。そのため、各国が協力して中国に環境問題の自助努力を促す必要があります。環境問題は国境を超えた国際社会の深刻な問題です。これは中国一国の問題ではなく世界全体の問題なのです。また、日本も環境モデル都市構想をはじめ大気汚染等の防止に積極的に協力しています。

インタビュー
高木:それでは、将来、爆発的な石油を消費すると危惧されている中国が中東からの石油供給のみに依存したと想定した場合、中国を差し置いて、中東から日本へ安定した石油供給が果たして可能なのでしょうか?

片山:これは、外務省として今後、真剣に考えていかなければいけないテーマだと思います。中国の省エネ対策やエネルギー転換に協力し、ロシア極東を含めた東アジアのエネルギー協力の推進に主体的に取り組む必要性を痛感しています。

高木:今、ロシア極東という言葉をおっしゃられましたので、敷衍しましてシベリア油田開発についてお尋ねしますが、油田開発の展望はどうなのですか?

片山:エネルギー問題を考える際、ロシア極東の石油・天然ガス開発と日露協力は、今後、日本が真剣に考えていくべきテーマです。既に、サハリンではサハリン1・2と呼ばれる石油・ガス開発プロジェクトが進められており、既に一部は生産が始まっています。極東でのエネルギー協力はわが国の中東依存率を下げることに繋がります。また、先述した中国の膨大なエネルギー需要による市場攪乱を避けるためにも不可欠と言えましょう。

高木:おっしゃるとおりですね。確かに、日本近辺で安定したエネルギー供給が実現すればシーレーン問題や中東問題も一気に解決しますね。しかし、対露関係は領土問題も含め、まだまだ難しい問題が山積していると感じますが・・。

片山:そのとおりです。日本には企業などにも根強い対露不信感がありますし、また、エネルギー分野といえども市場メカニズムを無視することもできません。これを一つ一つ解決していく必要があります。

高木:それでは、ここで一息入れて、別の質問に移りたいと思います。IEAには緊急時対応システムがありますが、具体的内容を示して頂けたらと思います。

片山:IEAに加盟するにはOECD加盟国であり、90日分の石油備蓄が義務付けられています。因みに日本は現在、政府・民間合わせて約170日分の備蓄を持っています。そのような備蓄体制を基礎に、緊急時に消費国間同士で石油を融通し合う制度が構築されています。具体的にはIEAの下部組織「緊急時常設作業部会」で議論されます。

インタビュー
高木:しかし、世界的なエネルギー不足に陥った場合、各国が保身に汲々として組織は形骸化し機能しないのではないでしょうか?

片山:例えば1990年の湾岸危機の際には、OECD加盟国全体で250万バーレル/日の石油を供給可能とする緊急時対応計画を実施した結果、第1次及び第2次石油危機時に比べ混乱はほとんどなかったと言えます。大切なのはIEA加盟国がエネルギー問題を人類共通の問題として緊密に協力しつつ危機に対応することだと思います。

高木:なるほど。しかし、石油危機が長期間に渡り続いた場合、現実的にはIEAに依存することは難しいのではないでしょうか?いわばIEAは救急車のようなものだと私は理解していますが・・。

片山:そうですね。勿論、主権国家ですから、危機に瀕した時は最後は自分で解決していかなければならないのは当然ですね。その点では、日本の安全保障上どのようなエネルギー・ミックスが適しているか考える必要がありますね。

高木:90年の湾岸危機について言及されましたが、現在イラク情勢が緊迫しています。対イラク戦争が起こった場合、日本への石油の輸入にどのような影響があると考えていますか?

片山:まずイラクが査察の受け入れと大量破壊兵器の廃棄を含む国連安全保障理事会の履行が実際に実現することが重要です。その上で仮定の話としてお答えすれば、現在のイラクの石油輸出総量や他のOPEC諸国や非OPEC産油国の増産余力、またIEA加盟国の備蓄や融通のシステム等を踏まえた場合心理的要因は無視できませんが、攻撃が限定的かつ短期で終了すれば、深刻な影響はないと考えます。しかし、これは攻撃がどのような展開になるかによる部分も大きいでしょう。

高木・片山:本日はありがとうございました。

【インタビューを終えて】
 21世紀のエネルギー問題は中国の経済発展や極東新油田開発などに伴い大きく様変わりする可能性がある。また、「エネルギーと環境」という二律背反的諸問題解決に向けた努力が我々人類には求められている。ヨハネスブルクサミットが先日閉幕しOPEC総会とIEFが今月大阪で開催される。国益を日夜追求している日本外交団の手腕に期待したい。それと同時に国民一人ひとりが「持続可能な経済開発」を考える契機となることを願ってやまない。(高木)


BACK / FORWARD / 目次


外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省