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外務省タウンミーティング第10回会合
川口外務大臣と語るタウンミーティング
(田中明彦東京大学東洋文化研究所所長冒頭挨拶)



(田中明彦東京大学東洋文化研究所所長)
 どうもありがとうございます。本日、このタウンミーティングに参加させていただくということで大変光栄に存じております。
 皆様との質疑、大臣との質疑が大事だと思いますので、私から簡単に、川口大臣がおっしゃった北東アジア地域と日本との関係を少し引いて、あるいは大ざっぱに、あるいは長期に、あるいは世界的な観点から申し述べてみたいと思います。

 当たり前の話なのですが、北東アジア、東アジアというのは、日本にとっては最重要の地域です。これは、地図を広げてみれば明白で、日本はここから引っ越していくわけにいきません。朝鮮半島のすぐそばにある、中国のすぐそばにある、これが日本であります。ですから、日本がこれからのことを考えていくといえば、北東アジア地域とどうやってつきあっていくかということになります。
 それから、この北東アジア地域は、歴史的に見ても、日本にとって極めて重要な地域だった。これは、京都にお住まいのかたは、だれよりもよくご存じのことです。日本文明がどうしてできたのか。今、京都にこれだけの文化遺産がなぜあるのか。考えてみれば、北東アジア地域と我が国の国民との交流があったから、こうなっているわけです。ですから、北東アジア地域との関係は、歴史の面から見ても積極的な意味で非常に重要な面があります。
 もちろん、その中には、近いですから、いろいろな歴史的な問題もある。19世紀から20世紀にかけての近代史の問題もあります。そういうことで、歴史を振り返ってみれば、北東アジア地域について見れば、我々が誇らしく思う面もあるけれども、これは大変だ、みんなで一生懸命解決していかなければならない、両方があるということです。
 それから、先ほど大臣がおっしゃった話ですが、未来を考えてみても、北東アジア地域は日本にとって大変重要な地域です。日本は世界第2位の経済大国ですが、朝鮮半島、中国、今、経済のダイナミズムを見れば、この地域が世界で最もダイナミックに動いている地域だということも明白です。ですから、その面で、日本が北東アジア地域との関係をうまくやっていくのは大事なことで、まさに外務省に対して、我々国民が最も期待するところではないかと思っております。
 ただ、北東アジアが非常に重要だといって、日本外交は北東アジアだけやっていればいいかというと、もちろんそういうわけではありません。日本という国の経済や在り方というのは、もちろん地域との交流にも根ざしていますが、このグローバル化の進んだ時代において、日本は、実は世界全体と関与していかなければ生きていけない国だということも、忘れてはならないと思います。
 資源やエネルギーだけ考えても、特に石油などを考えれば、ほとんど中東から来ていますし、それ以外の資源も世界中から来ている。そして、生活基盤の経済ということからいえば、世界中のマーケットに日本の商品を販売することによって成り立っているわけです。先ほど東アジアが非常に重要だといいましたが、アメリカやヨーロッパのマーケットが重要でなくなっているということではありません。東南アジアも、東アジアにとってみれば、今や密接に分かちがたく結びついているダイナミックな地域であり、こういうことも忘れてはいけない。
 そうすると、日本外交にとって、世界全体との関係をダイナミックに発展させる中で、歴史的にもいろいろな問題を抱える近い国々との関係を、今後どうやってより強固にしていくかが非常に重要な課題となるのだと思います。
 やや長期的なことを言いますと、東アジア地域というのは、19世紀から20世紀にかけて150年ぐらいの間、大変な大動乱の時代でした。清朝後期、アヘン戦争、太平天国の乱、それからは東アジア地域で数々の戦争があって、第二次世界大戦に至るまでの戦争がある。日本は、敗戦の後、戦争に巻き込まれることはありませんでしたが、朝鮮半島では朝鮮戦争、中国では1960年代の後半にも、ソ連との国境紛争があり、ベトナム戦争があって、長い間、東アジア地域は戦争不安定ということでやってきた地域なのです。
 ただ、19世紀半ば以前のことを考えてみると、東アジア地域は世界の文明の中でいえば非常に重要な地域だったと思います。18世紀の初め、17世紀に国民総生産を計算することはだれもしていませんが、現代の手法で計算してみると、1700年から1800年ぐらいの中国を含む東アジア地域の国民総生産、経済規模は、恐らくヨーロッパより大きかった。ですから、長期で考えると、19世紀から20世紀の動乱にもかかわらず、この地域は世界史の中で非常に重要な地域であった。
 私の個人的な感想としては、今後21世紀は、19世紀、20世紀のようなものから進んで、またこの東アジア地域が繁栄し、平和で、世界の中心的な、ダイナミックな地域になることが大事だと思うのです。日本としては、グローバルな関係も非常に大事にし、アメリカとの関係も非常に大事にし、しかも、近隣地域にかつての歴史の中のできるだけよい部分を強調するような形の共同体、先ほど大臣がおっしゃった東アジア共同体ができるように国民全体で努力していきたいし、外務省にも、ぜひそのためにご健闘いただきたいと思っております。どうもありがとうございました。


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