米国バード修正条項に対するわが国の対抗措置承認再申請について
平成16年11月10日
- 10日(現地時間)、わが国はEC、インド、メキシコ、韓国、カナダと共にWTOに対し、米国バード修正条項への対抗措置の承認を再申請した。
- バード修正条項は2003年1月にWTO協定違反が確定したが、米国は未だに違反状態を是正していない。本件については、本年8月、WTOの仲裁が、わが国を含めた共同申立国に対し、バード修正条項の下で行われた米国企業への分配額の72%に当たる金額を対抗措置の規模として認める決定をしたが(わが国については約7630万ドル)、今回の承認申請は、この仲裁決定に沿って行ったものである。
- WTOの関係機関(紛争解決機関)は今回の承認申請を24日の会合で検討することになる。WTO協定上、申請は自動的に承認され、その後はわが国として対抗措置を発動する権利が確保される。実際に対抗措置を発動するかどうかを判断するに当たっては、改めて政府として意思決定を行うこととする。
- わが国としては、米国が今回の再申請を真摯に受け止め、WTOの勧告に従ってバード修正条項を早期に撤廃することを強く期待しており、他の申立国とも連携しつつ、引き続き米国側に必要な働きかけを行っていく。
(参考)
- バード修正条項の概要
バード修正条項とは、ダンピング防止税および相殺関税により米国が得た税収を、ダンピングまたは補助金提訴を支持した国内業者等に対して分配することを定める米国国内法(2 000年10月成立)である。バード修正条項に基づく分配額は毎年変わるが、米国政府が公表している数字では、2003年度は総額約1.9億ドル、このうちわが国からの輸入に起因する額は約1億600万ドルである。
- これまでの経緯
日本、EC、オーストラリア、ブラジル、チリ、インド、インドネシア、韓国、タイ、カナダ、メキシコの11加盟国は、バード修正条項がWTO協定に違反するとして、2001年、WTOに申立てを行い、2003年1月、同条項のWTO協定違反が確定した。米国の勧告実施のための妥当な期間(RPT)は同年12月27日までとされたが、バード修正条項が撤廃されないまま同期間は経過した。
これを受け、わが国は、本年1月15日、WTOに対し対抗措置の承認を申請した。わが国以外で対抗措置を申請した国は、EC、ブラジル、チリ、インド、韓国、カナダ、メキシコ。これに対し、米国は申請された対抗措置の規模について異議を申し立て、同年1月26日、問題は仲裁に付託された。
- 仲裁決定の内容
本年8月31日、WTO紛争解決機関は、バード修正条項に基づき米国企業に支払われる分配金が与えるわが国他申立国の米国向け貿易への影響を考慮し、毎年の分配金額に0.7 2を乗じた金額を対抗措置の規模とする判断を下した。上記1.の2003年度の分配額を基に試算すると、わが国の対抗措置の規模は約7,630万ドル(=約1億600万ドル×0.72、日本円で約80億円、1ドル=105円で計算)となる。
- 米国内の状況
米国議会では、上・下院それぞれに、バード修正条項を廃止(下院)ないし改正(上院)する内容の法案が提出されているが、審議の見込みは立っていない。米国行政府は、バード修正条項を廃止ないし改正すべきとの立場。
- 申請された品目
バード修正条項で被害を受けている鉄鋼製品やベアリングを含め約370品目。実際に対抗措置を発動する際には、これらの品目の中から追加関税を賦課する品目を選定する。
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