官房長記者会見記録(平成16年12月28日(火)16:00~ 於:会見室)
ウィーン国際機関日本政府代表部における不祥事に伴う処分
(官房長)ウィーン国際機関日本政府代表部において、住宅手当の不正受給等の事案が明らかになり、これに伴う関係者の処分を行ったところ、概要をご説明申し上げます。なお、詳細については、会見の後、人事課長および在外公館課長からのブリーフィングを予定していますので、その場で更にご説明させて頂きます。
本件は、ウィーン代表部内部からの指摘があり、いずれも数年前の事案です。古いものは平成9年当時のものですが、徹底的に調査を行い事実関係を究明しました。
二つの種類の事案があります。
まず、宿舎の借り上げに係る不適正経理についてです。平成9年当時にウィーン代表部の幹部館員として勤務していた職員が、宿舎の借り上げに際し、官費で負担される借料に家具購入用の代金を含めてりん請し、その差額を家具類の購入に充てていたということが判明しました。この職員は現在ウィーン代表部とは異なる公館の公館長の職に就いていますが、内規に基づく厳重訓戒処分を課すとともに、既に25日付で帰朝を命じました。帰国後速やかに諭旨免職とすることとしました。また、不正利得額については既に返納済みですが、これに加え退職金の3割を自主返納させることとしました。
この事案は、この職員が自ら過ちを深く反省し、自らの行為を自発的に申告してきたものであること、つまり、本人から私に自発的に申告してきたという経緯があります。この職員はあくまで宿舎の家具類を整備するために行ったものであって、現に購入した家具類のほとんど全てを後任者に無償で引き継いでいること、さらに既に不正利得額を全額返済していること、最後に本件は起こってから約8年が経過しています。仮にこの職員が国内に留まっていたとすると既に公訴時効が成立している事案であること、といった斟酌すべき事情があります。
この事案とは別に、ウィーン国際機関日本政府代表部の元館員10名が、平成9年12月から平成14年1月にかけて、それぞれの住居手当の申請に当たり、住居手当の支給対象とならない共益費等、この共益費とは、アパートなどに住んでいる場合、エレベーターや廊下の電気料金など共有スペースにおける維持管理費が必要になりますが、これがいわゆる共益費で、これは住居手当の支給対象とならないのですが、こうした共益費等を家賃に含めてりん請し、本来自ら負担すべき共益費等の一部を負担していなかったということがありました。
これらの元館員のうち、現在も外務省職員である5名については、1名を懲戒減給処分、これは1ヶ月10%です。もう1名を懲戒戒告処分とし、それ以外の3名は外務省内規に基づいて処分しました。
更に、当時のウィーン代表部の館長の監督責任を問い、2名ですが、外務省の内規に基づいて処分しました。
今回の事件を契機に改めて全在外公館に対して、諸制度の適正・厳正な運用が行われていることを点検・確認し調査するとともに、より一層厳正なチェックを行うように既に全在外公館に対して指示を出したところです。
外務省としては、平成13年の一連の不祥事以降、制度の適正運用について指導を強化してきたところで、今回の不祥事はそうした指導の強化の過程で判明し、厳正に対処したものですが、外務省改革に全省をあげて取り組んできた中で、このような不祥事が行われていたことは極めて遺憾であり、心よりお詫び申し上げたいと思います。
(問)外務省としての刑事告発は見送ったということですか。
(官房長)刑事告発は考えていません。
(問)いま、最初に第一の事案の説明がありましたが、残りの処分された5名も含めて刑事告発を見送った理由は。
(官房長)色々な考え方があると思いますが、きちんとした処分をしたということ、それから不正利得については返還が既に始まっていること等々ですが、第1の事案について申し上げますと、先ほど申し上げた通り、自らの過ちを深く反省して、自らの行為を自発的に告白してきたと、本人が全く疑われていない時点で、実は昔自分はこういうことをしたことがありますという手紙を私に書いてきたということです。それからこの職員についてはあくまで宿舎の家具類を整備するために行ったものであって、現に購入した家具のほとんど全てを後任者に無償で引き継いでいます。それから先ほど挙げたとおり、不正利得を全額返済していること、約8年間経過していること、そういったことを斟酌し、同時に先程申し上げた通り重い処分を取ったということを考慮して、その結果、告発は考えていません。
それ以外の5人についても、基本的には同じような考え方に基づき、然るべく処分をとったということと、それなりに斟酌すべき要因がないわけではない、ということ。この5人を含む10人については、悪意がどの程度あったのかどうかについては個人差があり、悪いことをしているという意識が希薄な人もいました。ただ、ルール違反は非常にはっきりしているので、その意味での処分をしている訳ですが、告発までする必要はないと考えたわけです。
(問)代表部で関与していた職員がいると思われますが、組織ぐるみで不正行為を行っていたということではないか。
(官房長)そういう風にも見られるかもしれませんが、実は平成13年の夏に住宅手当を巡って、平成13年というのはとにかく一連の不祥事が出てきた年ですが、夏に、ある在外公館での住宅手当の不正受給の問題が出てきて、その後そういうことがないようにとの指示を出しています。その後も今年の1月になって、住宅手当の受給というのはこういう風にするんだという規則をいわば改善して、それを在外につなぎ、現状をチェックしろといって、その過程で実はウィーンではかつてこういうことがありましたという話が出てきて、それで調査を開始しました。そういう経緯を色々考えたということです。
(問)内部からの指摘があったということですが、内部とは具体的にどこか。
(官房長)内部というのはウィーン代表部の館員からの指摘です。それを受け、我々としては、監察査察官組織の担当者を現地に派遣して、現地に残っている入手可能な全ての書類をチェックして、その結果時間もかかったわけですが、今回の結果に至りました。
(問)他の在外公館ではこういった不正受給はないか。
(官房長)ないと思っていますが、今年の1月に改めた規則を在外公館に徹底していく過程で、当然何かあれば言ってきなさいと指示しており、今のところ出てきたのはウィーンのケースであったということです。従って他の公館ではないと思っておりますが、もしあれば、同じようにきちんと調査して処分するということを考えております。
(問)第1の事案については自発的に申告してきたということですが、これは夏の内部告発があった後か。
(官房長)そうです。詳細に申し上げると、夏に代表部から連絡があって調べ始めた時点では、この職員については、我々の調査の対象ではなかった、彼については、その時点では何も考えていなかったのですが、おそらく本人は、ウィーン代表部のその種の問題について本省が調べているということを承知して、実は自分についてはこういうことをした、ということを私に手紙で私に書いてきました。
(問)実際に調べた人は。
(官房長)この人は自分から言ってきた人で、我々はいずれにしても担当者を現地に派遣して、全部で70人弱の館員の過去に遡る住居手当の申請状況について全部調べて、結果としてこの10名の話が出てきました。67名についての資料がアベイラブルで、その全員について調べました。
(問)夏に指摘があったというのは、幹部職員の家具の購入についての指摘ではなく、住居手当についての指摘があったということか。
(官房長)そうです。
(問)10人のうち、他の5人はどこに行ったのか。
(官房長)他の5人は現在外務省の職員ではないということで、外務省の職員で今よその組織に出向している人、元々よその組織の人で外務省に出向してまた戻っている人が5人います。その5人については、彼らが属する組織・機関に連絡して、我々の人事権の及ぶところではないので、それぞれの組織において然るべき措置が執られるということです。
(問)それはまた然るべきタイミングで明らかにされるのか。
(官房長)私の理解では、特に処分の問題については、去年まで各省バラバラに公表したりしなかったりということがあったので、人事院の方で処分するときにこういった問題については公表しなさいという指針を作りました。その指針に従って我々は今やっており、基本的には懲戒処分に該当するようなものについては、個人の名前を出さない形で、ただ事案も概要とか、処分の量定、処分された人の役職とかを示すことになっています。それが原則で、そういう考え方の下に公表されるものはされると思います。
(問)第一の事案について幹部職員が官房長に手紙を出したのはいつですか。
(官房長)秋だったと思います。
(問)第2の事案について合計いくら位過大に支給され受給していたのか。それぞれについて教えて下さい。
(官房長)後ほどのブリーフィングで、要すれば訂正しますが、この5人については、1人が28万円、1人が37万円、1人が213万円、1人が36万円、1人が50万円。それから、第1のケースは330万円。
(問)何を持ってこんなに金額に差が出たのか。
(官房長)勤務期間が人によって違いますから。また、おそらくは、後程のブリーフィングで答えて頂いた方が良いかも知れませんが、共益費、先程申し上げたエレベーターや廊下の電気とか、アパートに住んでる場合には共益費がかかるのですが、これは法律でいうところの家賃ではないということで住居手当の対象になっていないのです。ただ、人によってはそれは家賃の一部じゃないのかというかもしれませんが、共益費は自分で払いなさいということが基本的な考えなのですが、今回起きた問題は、共益費の一部を家賃に水増しして請求したということで、その程度が恐らく人によって違うので金額に差が出るのだと思います。
(問)この幹部職員の当時の役職と現在の役職。および、内規に基づいた処分で、国家公務員法上の処分で懲戒処分を受けた第2の事案の人達との差は。もう一点、この方は諭旨退職だが、それは処分ではなく、自主的な退職なのか。
(官房長)この職員は当時はウィーン代表部の公使です。今は在外公館長、具体的には大使をしています。彼は特別職なので、国家公務員法の適用は直にはない。従って、懲戒処分ができないということがあります。その上で諭旨退職ということですが、彼がもし特別職でなく一般職の人間であれば、懲戒処分になっていたと思います。停給や場合によってはもう少し重い停職とかそういうふうに我々は考えていますが、その上で内規に基づく処分しかできないので、その中で最も重い厳重訓戒処分にしたわけです。大使として行ったことではなく、公使時代の話ですが、それはさておき、我々としては事態を重く見て、本人に帰朝命令を出して辞めてもらうことにしました。諭旨退職というのは、いわば非違行為があって本人を諭して辞めてもらうという考え方です。その上で我々もいろいろ考えたのですが、勧奨退職にはならず、普通退職ですが、その上で退職金の3割を自主返納してもらおうと考えました。
(問)第1の事案で退職金を自主返納した時期はいつですか。
(官房長)これからです。まだ彼は辞めていません。帰朝命令を出したばかりですから。
(問)既に全額国庫に返還しているのではないですか。
(官房長)それは330万円、プラス延滞利息の分は返してもらっています。
(問)それはいつですか。
(官房長)先週だったと思います。330万円が問題となった金額ですが、それに延滞利息を加えた額については既に返納済みです。退職金の返納というのは実際に帰ってきて辞める時点で返納してもらいます。
(注:平成8年度の為替レートで計算した数字が約330万円であるが、平成16年度の為替レートでは、不正利得の分が313万円、延滞金の分が124万円の合計約436万円である)
(問)第2の事案の残り5人の方々の所属している省庁はどこか。
(官房長)残りの5人については、基本的には我々の人事権が及ぶ話ではないため、お答えは差し控えさせて頂きたいと思っています。
(問)第1のケースの幹部職員は今どちらの大使なのか。帰朝されているとのことだが、その大使館の体制は今どのようになっているか。
(官房長)帰朝命令を出したばかりなのでまだ帰朝してきていません。まだしばらく先になると思います。どこの大使かということは、先程申し上げたとおり、本人の人定に至るところまでのご説明は勘弁して頂きたいと申し上げたつもりで、その理由についても申し上げたつもりです。
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