小町官房長臨時会見記録 (平成13年8月24日(金)16:00~ 於:会見室)
冒頭発言
(小町官房長)二つの件について発表を行いたい。最初の案件は、在ケニア大使館員による諸手当の不適切な受領に伴う処分についてである。本年4月末、在ケニア大使館において館員が諸手当を不適正に受給していた疑いが持たれたため、関係者からの事情聴取及び会計書類の精査による調査を進めてきたが、これによって明らかとなった事実関係及びこれに伴う関係者の処分につき発表する。
事実関係から申し上げる。荒川吉彦公使(当時、現在在ニューヨーク総領事館領事)は、平成9年10月から平成12年9月に転勤するまでの間、家具無しのアパートを賃借するとともに、別途家具会社から家具をリースしていたが、住居手当の申請に当たり、家具付きアパートを借りたものとして家賃と家具のリース料を合計した金額を家賃として申告し、不適正に手当を受給していた。具体的には、大家との間での家具無しアパートの賃貸借契約、家具会社との間での家具のリース契約をそれぞれ締結し、これらに基づき家賃及びリース料の支払いを行っていたにもかかわらず、別途、家具付きアパートの賃貸借契約書を作成し、これを元に住居手当の申請を行っていた。
住居手当の制度上、家具無しアパートを借りた場合には、任地毎に定められた限度額の範囲内で家賃全額が支給され、家具付きアパートの場合は、限度額の範囲内で家賃の9割が支給されることとなっている。また、家具のリース単独では、住居手当の対象とならない。仮に、大家に家具を手配させた上で、大家との間で家具付きアパートの賃貸借契約を締結したのであれば、手続き上問題はなかったところ、荒川公使は、このような手間を厭い、安易に実態と異なる契約書を作成したとしている。
なお、荒川公使は、これまでに受給した住居手当のうち、実際に大家との間で契約していた家具無しアパートの家賃を上回る額約163万円を既に弁財している。
次に住居防犯対策費の不適正受給である。出来場勝書記官(当時、現在領事移住部邦人保護課課長補佐)は、ケニアにおける治安の悪化に伴い、平成9年に一戸建て家屋から、より安全性の高いアパートに転居した。このアパートでは、家賃の中に防犯対策にかかる共益費が含まれていたが、同書記官はこの部分について家主との間で警備員派遣及び警備機器設置に関わる別途の契約を締結し、これを元に住居防犯対策費の申請を行った。
住居防犯対策費は、制度上、独立家屋や集合住宅の居住部分について、専ら当該館員及び家族のために警備機器の設置や警備員の配置といった独自の防犯措置を講じた場合に支給されることとなっており、建物全体に関わる警備関連経費がアパートの家賃や共益費に含まれる場合には、支給の対象とならない。従って、出木場書記官のケースでは、本来、防犯対策費の支給は認められないが、同書記官は、あたかも居住部分について独自に警備員や防犯機器を配備するかのような誤解を与える内容の申請を行い、平成9年5月から平成11年1月に帰国するまでの間、住居防犯対策費を不適正に受給していた。
出木場書記官は、不適正な申請であったことを認めており、不適正受給額約67万円を既に弁済している。
次に、高熱水道料の不適正受給である。住居手当の制度上、光熱水道料が家賃に含まれる場合には、手当の支給額を1割差し引くこととなっている。荒川公使、出木場書記官及び前川光書記官(現在もケニア在勤)の入居していたアパートでは、光熱水道料が家賃に含まれていたにも拘わらず、契約上これが明記されていなかったことから、これら3名は、光熱水道料が含まれていないものと誤認して住居手当の申請を行い、その結果、光熱水道料分を差し引かれずに住居手当を受給していた。
3名とも、不適正受給額(荒川:約62万円、出木場:約26万円、前川:約18万円)については既に全額弁済している。
続いて処分の内容について申し上げる。以上の調査結果を踏まえ、荒川公使については、大使館の出納官吏として在外公館経理を指導・監督する立場にあった者が、住居手当及び光熱水道料を不適正に受給していたことを重視し、本日付けで懲戒減給処分(20%、3ヶ月)とし、また、在ニュー・ヨーク総領事館の次席としての任を免じ、本日付けで帰朝を命じた。
また、住居防犯対策費及び光熱水道料を不適正に受給していた出木場書記官については、懲戒戒告処分とし、光熱水道料を不適正に受給していた前川書記官については、厳重訓戒処分とした。
更に、公館長として、館員を指導・監督する立場にあった青木盛久大使については、事務次官名による厳重注意処分とした。
外務省としては、このように諸手当の不適正受給を理由として、改めて処分者を出さざるを得なかったことは、極めて遺憾であり、国民の皆様に対し、深くお詫び申し上げる。
同時に、外務省としては、引き続き、在外公館を含め全省をあげて綱紀粛正に取り組む考えであり、査察の強化を中心として、在外公館へのチェック体制の強化に努めたい。
引き続き、九州・沖縄サミット準備事務局のハイヤー契約に係わる不正事件に関するタクシー・クーポン券の配布に関する調査結果について申し上げる。
九州・沖縄サミット準備事務局が東京で使用するハイヤーの契約に関する詐欺事件については、サミット準備事務局兼外務省経済局総務参事官室に所属していた小林祐武及び大隈勤両名が、8月6日に起訴されたことを踏まえて、同日付で両名を懲戒免職処分とするとともに、小林、大隈より多額のタクシー・クーポン券、及びハイウェイ・カードを受領していた松田耕二在チェンマイ出張駐在官事務所領事及び小林秀彦北米第2課事務官を1ヶ月の懲戒停職処分とした。
その際、上記4名が受領したタクシー・クーポン券等の一部が、複数のその他省員に配布された模様であり、外務省として引き続き任意の聞き取り調査を行っている旨報告したが、調査結果を以下の通り報告する。
小林祐武、大隈元職員、及び松田、小林秀彦両職員の4名の何れかを経由し、タクシー・クーポン券等の配布を受けていた職員は、合計18名いたことが判明した。配布を受けたクーポン券等の金額の幅は、1人あたり数千円相当から最高11万円相当だが、ほとんどが1~2万円であった。
配布されたタクシー券等の具体的な使途としては、残業後の帰宅時や、出張の際の移動等業務上利用したケースもあれば、私的なタクシー代に充当したケースもあるなど、様々なケースがある。何れの場合も、タクシー券等をそのまま使用しており、金券ショップ等で現金化した職員はいなかった。また、これら18名の職員は何れも、タクシー・クーポン券等が水増し請求の結果、不正に捻出されたものであることは承知していなかった。
しかしながら、これらの職員が出所不明のタクシー・クーポン券等を受領した行為は軽率であったと言わざるを得ず、クーポン券等を業務で使用した場合を含め、18名全員から、受領したクーポン券等の相当額を返金させることとした。
18名のうち、2名については、受領したクーポン券がそれぞれ11万円及び10万円と、相当額に及ぶことから、事務次官名による厳重訓戒処分にした。
残りの16名については、大半の者が1~2万円相当のタクシー・クーポン券を受領していた。5万円相当を受領した者が1名いたが、同人は、約4万円分を業務で使用し、残額は未使用のまま保管していた。何れにせよ、これらの者が、出所不明のタクシー・クーポン券等を受領した行為は軽率であったことから、16名全員に対してそれぞれの上司より厳重注意を行うこととした。
九州・沖縄サミット準備事務局のハイヤーの契約詐欺事件に係わるタクシー・クーポン券等の受領・配布に関しては、以上が外務省による聞き取り調査の結果であるが、他に同種の事案がないかについて引き続き調査を行っているところである。また、杉浦副大臣を長とする「綱紀引き締めのためのプロジェクト・チーム」は、そのような調査及び再発防止に向けた各種作業を指導している。
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質疑応答
(問)事実関係であるが、ケニアの荒川公使について家具無しアパートの額を上回る163万円を既に弁済したとしているが、まず上回るというのはどういう意味なのか。また、どれくらいの額が正規の手続きに則らないで受給を受けていたのか。
(新美在外公館課長)荒川公使の住居手当不適切受給の件であるが、そもそも住居手当は家具無し住宅を対象として支給されるものである。制度の概要から説明すると、既に家具が備え付けられている住居に入居する場合にはそこから1割差し引いた額、すなわち家具がそもそも付いているので家具無しより負担が減っているわけであるので、家具が付いていない場合に比べて1割減の額を家賃と見なし、それを対象として住居手当が支給されることとなっている。荒川公使の場合は、家具の付いていないアパートを大家との間で賃貸借契約を行った。他方、家具を調達しなければ生活できないので、家具会社から家具のリースを受ける契約を別途結んだ。具体的には、荒川公使の場合では、12万ケニア・シリング(1ケニア・シリングは今のレートだと1.4円程)の家具無しアパートの契約を結んだ。また、別途家具会社と5万7千シリングの家具のリース契約を結んだ。仮に大家が全て自分で家具を調達して、家具調達に係わる5万7千シリングも上乗せして、家具付きのアパートの家賃ということで、17万7千シリングで家具付きアパートとして貸し出していれば、それは家具付きアパート契約ということで、それに対する17万7千シリングから1割差し引いた9割の額が住居手当として支給されたはずである。ところがこのケースの場合はアパートの大家と家具のリース会社が違い、家具無しのアパートに入居した上で家具のリース会社と契約をして、5万7千シリングを月々支払って家具を調達したということになるので、外務省の規則の建前上は、住居手当の対象となる家賃はあくまでも家具無しアパート家賃の12万シリングということになる。ところが、荒川公使の場合はあたかもアパートの大家と家具のリース会社が同一であり、同一の会社から家具付きのアパートを17万7千シリングで借りたという、実態と異なる契約書を別途作成して、それを本省に対して申請してきたということである。このため、本来荒川公使が受給できた住居手当額というのは、本来、家具無しのアパートに対して支給される12万シリングであるところ、あたかも大家が家具を調達して17万7千シリングで貸し出しているかのような契約書を作成して本省に送ってきたため、その合計額17万7千シリングの9割である15万9300シリングを受給した。従って、不適正に受給された部分は15万9300シリングから12万シリングを差し引いた3万9300シリングという計算になる。
(問)163万円というのは、どういった試算で出てきているのか。
(新美在外公館課長)ひと月当たりの不適正受給額が3万9千シリングになるわけである。荒川公使がこのアパートに入っていた期間が平成9年10月から平成12年9月までの約3年近くであるので、為替の変動等若干の上下はあるが、それを積み上げると日本円に換算して163万円になる。
(問)本来申請するときはどのような書類を添付して、本省に提出するものなのか。
(新美在外公館課長)本省に住居手当を申請する場合は、住居手当申請書類とともに住居の賃貸借契約の写しを別添して本省に送付している。
(問)そうすると荒川公使は契約書を偽造したのか。
(新美在外公館課長)実態と異なる契約書を作成して、それを本省に送付したということである。
(問)契約書というのは一人で作成できるものではなく、相手方と結ぶのが契約書であるので、相手方もそういった契約書を持っているのか。また、荒川公使が相手方と契約したような偽造の契約書を作ったのか。
(新美在外公館課長)送付されてきた契約書は家具会社を相手とした契約書であり、家具会社のところに署名もあった。
(問)それであれば、相手方と一緒に偽造の契約書を作ったのか。それとも一人で作ったのか。
(新美在外公館課長)そこのところは、色々と調査を行ったが確認できていない。
(問)そういった形の契約書を作ると不正受給された分だけ上乗せされた手当が貰えるという認識は最初からあったのか。
(新美在外公館課長)この場合は話が分かりにくいが、家賃の12万シリングと家具の5万7千シリングを一括して家具会社が貸し出すという家具会社との間で実態と異なる契約書になっている。それが実態であれば、その通りの金額が貰えた。そういう意味で荒川公使の側で実態と異なる契約書を送っているということは認識していたと思う。但し、それが、事実と異なっていたわけだが、その通り家具会社が手配していれば、あるいは、アパートの大家の方が手配していれば、15万9300シリング全額受給できていたはずだということで、安易な住居手当の受給の方法をとってしまったと、そしてそれが不適正な受給であったということを本人も認め、受給額の全額を弁済しているところである。
(問)不正受給したのは故意で行ったのか。つまり金を浮かせて自分の遊興費にあてたかったとか、飲食代にあてたかったとか、目的があって行ったのか。それとも契約のやり方を知らなくて行ってしまったのか。
(新美在外公館課長)遊興費等のためにやったという事実は確認していない。実際荒川公使の住居手当の限度額が17万シリング近くあった。そこで住居手当の限度額がこれくらいあったが、実際アパートに入居してみたら家具無しのアパートの額と住居手当の限度額までは余裕がある。そこで、もし大家が全部家具も揃えてくれて、家賃を上げてもまだ住居手当の限度額に余裕があるので、そうしてくれれば、適正に家具付きアパートに入居出来たが、詳細な経緯は分からないが、事実としてそういった手配はなされなかったということで、賃借料と限度額の間で別途家具のリース契約を結んで、それを上乗せした契約を一本とすると大体17万7千シリングであるので、住居手当の限度額を少し超えるが、その9割がけまで受給できるということで、言ってみれば住居手当の限度額をフルに活用しようと、そして本来なら家主が言うことを聞いてくれれば、フルに活用できたが希望通りにならなかったということで安易な実態と異なる手段を選んだということである。
(問)逆に言うと今の外務省の制度の方に問題があって、本当なら普通に貰えたものを手続きをうまくやらなかったから貰えなかったというこであるなら、制度を変えれば良いのではないかというのが一点と、そういう家賃というのは例えばケニアでいうとものすごい家に住めるのか。そうだとしたら今外務省で金のかかり過ぎとかが言われている中、家賃の限度額や制度を抜本的に見直すという考えはあるのか無いのかという二点を伺いたい。
(小町官房長)前者については、荒川公使は実際に家を借りていたし、実際に家具も借りていた。両者を含んだ一本の契約ができていれば、荒川公使が受けていた受給額は適正であったが、一本の契約が実態を十分反映していない契約で、実際の契約は二本に分かれていたという問題が一つある。つまり一本の契約ができなかった事情があると思うが、そういう事情に対応できる制度というか、それを改正するかどうかについては今後内部で議論していかなければならないと思う。
(新美在外公館課長)二点目の住居手当の限度額が非常に恵まれた高いものであるかという点についてであるが、荒川公使が入居したアパートというのは高級アパートであったと承知している。他方、それが豪華すぎるかどうかという点については、他に在留邦人の方も入居していると聞いているし、現地で暮らしている邦人の方よりずば抜けて豪華な住居に入っていたというようなことはないと思う。
(問)これは別の見方であるが、外務省の方は仕事で転勤も多く、外国へ行って自腹を切って家具を買わなければいけなく非常にかわいそうな事であるということになると思うが、在外に出るときの色々な準備支度金みたいなものがあると思う。例えば、こちらから自分の家具を持って行くとか、新しい家に住むときには前任者からの引継であるとか、色々と方法があると思うが、そういった赴任に関する制度をお聞かせ願いたい。
(新美在外公館課長)自分(在外公館課長)自身の例で申し上げると、家具をどう調達するかというのは任地によりケースバイケースであり、例えば、パリのOECD代表部に勤務した際には、家具無しアパートに入居し、家具は自費で揃えた。また、前任者が住んでいた住居を引き継いで、前任者の使用した家具をそのまま一定の価格を支払って引き継いでもらえる場合もあれば、自分(在外公館課長)も前任者から一部の家具を買い取った。そしてそれに併せて現地で家具を買い揃えてそこで暮らした。次の任地はイランであったが、イランは家具付きであったため、パリの家具の一部を後任者に一定の代金を貰って譲り、後は適宜処分し、現地で家具付きの住居に入居した。前任者との家族構成、単身赴任であるか、家族連れかということで、ケースバイケースである。しかし、赴任に際しては、一定の移転料や外務省共済組合から借金をして家具や車を購入している。
(問)赴任の際、現地に行って家具を買うことは必要だと思うが、それを見込んだ赴任手当はないのか。
(新美在外公館課長)立ち上げの際は、一時的に自動車や家具を購入する場合には多額の金額が必要になるので、自分(在外公館課長)の場合は外務省共済組合から借金をしてやりくりをしている。
(小町官房長)自分(官房長)も昔そのようにした。借金をして車と家具を購入した。ワシントンに赴任した際、家具無しで家具を自分で購入した。その後の転勤先はモスクワで、そこでは家具があったので、ワシントンで揃えた家具は現地で処分したが、ワシントンで家具、車を購入する際は外務省共済組合、或いは、外務省精励会といったところから借金をした。
(問)在外に出ると、在外赴任手当が支給されるが、在外に赴任する際に一回きりの家具購入等のための手当は支給されないのか。
(新美在外公館課長)そういった手当はない。
(問)受給申請であるが、荒川公使、出来場書記官、前川書記官は全て本人が受給申請を行っているのか。
(新美在外公館課長)荒川公使、出来場書記官、前川書記官3名は全て自分自身で申請している。
(問)誰か担当がいてその方が行っているのではなく、本人が行っているのか。
(新美在外公館課長)本人が行っている。
(問)3名が入居したアパートであるが、これは同じアパートに住んでいたということか。
(新美在外公館課長)同じアパートである。
(問)同じアパートに住んで、それぞれ別のおかしな事を行っていたということか。
(新美在外公館課長)補足させていただくと出来場書記官と前川書記官は前任後任の関係であり、従って、荒川公使と出来場書記官が一緒に入居していた時期、そして荒川公使と前川書記官が一緒に入居していた時期はある。
(問)今回のペーパーを見ると、多く支給して貰うためにわざわざ契約書を作り直したということになるのではないか。もし、安易ということであれば、別々の契約書をつけて出せばいいわけで、それでは受給できないということを熟知されていてそれでわざわざ一本化された契約書を偽造して、不正受給に及んだというのが実態ではないのか。
(新美在外公館課長)安易という意味では大家と家具を付けるようにねばり強く交渉して、そのようにさせれば希望に沿ったということであると思うが、それをねばり強くやるということを厭んだということだと思う。
(問)どうして家具付きにならないかという経緯は分からないとおっしゃっていたが。
(新美在外公館課長)今のは自分(在外公館課長)の想像も入っていた。いずれにしても事実はここに書いてある通りで、家具無しのアパート、家具リース契約を両方別々の相手方と結んだが、同一の相手方と家具付きのアパートの契約を結んだという体裁の別途の契約書を結んだということは事実であるので、これについて本人は不適正な形で申請して受給したということは認めている。
(問)申請につけた契約書というのは真正なものではないのか。
(新美在外公館課長)本省の申請に添付されていた契約書は一人の相手方と家具付きのアパートの賃貸借を行ったという体裁の契約書であった。
(問)それは実在するのか。それともコピー上の偽造か。
(新美在外公館課長)送付されてきた紙そのものはあるが、契約に至る経緯は承知していない。
(問)契約の本体はどこにあるのか。それの数字上はどのようになっているのか。17万7千シリングなのか。
(新美在外公館課長)契約の本体はアパート大家との契約、つまり12万シリングのアパートの賃貸借契約、そして家具会社との家具のリース契約、月々5万7千シリングの契約が本体である。
(問)そうなると17万7千シリングの契約書は偽造したものということか。
(新美在外公館課長)偽造というか、真正なものではない。架空というか実態にあわない契約書であったということは事実である。
(問)この問題がわかった経緯であるが、どういう形でわかったのかというのが一つと、家具のリースを単独では認めないと外務省がしている理由について伺いたい。
(小町官房長)前者については記載されているように4月末に内部から指摘があったということである。
(問)大使館内部の方から話があったのか。また、査察のようなものを行ったのか。
(小町官房長)査察は行っていない。指摘である。
(問)誰に対して指摘が行われたのか。
(小町官房長)本省に対してである。
(問)本省のどこか。
(小町官房長)最終的にこれを受けたのは在外公館課、住居手当を担当している課である。
(新美在外公館課長)そして二点目であるが、家具のリースについて補助の支給対象から外していることについては規則の建前からきている。住居手当はあくまでも住居に対する手当であり、基本は家具の付いていない住居に対する手当であるというのが建前である。家具付きの住居に入居して、その代わり家賃相当額を1割減と見なして、それを対象にして住居手当を支給するというのは規則の中では例外的な扱いである。既に家具が備え付けられている住居に入居するのに家具を撤去して、空にして入居しろというのは現実的には不可能なので、その場合の例外的な扱いということで家具付きの場合は1割減を支給対象とするということが建前である。建前が硬直的といわれればそれまでかもしれないが、そういった建前から家具のリース契約についてはそれを対象とする受け皿はない。
(問)出来場書記官と前川書記官とは前任後任という関係であるということであるが、防犯対策については前川書記官は全然係わっていないという解釈で差し支えないか。
(新美在外公館課長)前川書記官は防犯対策に係わる受給は受けていない。
(問)光熱費に関しては、前任後任の引継の際に含まれていないものとして契約すれば、受給額が増えるということを相談したという形跡はあるのか。
(新美在外公館課長)確認していない。
(問)荒川公使、出来場書記官、前川書記官の下の名前の読み方を確認したい。
(新美在外公館課長)荒川公使は「アラカワ・ヨシヒコ」、出来場書記官は「デキバ・マサル」、前川書記官は「マエカワ・ヒカル」である。
(問)最初に内部から指摘があった旨話されているが、これはどの件について指摘があったのかということと、キャリア、ノンキャリアの別を最初の3名とクーポン券の18名について確認したい。
(新美在外公館課長)荒川公使は昭和52年入省のI種、出来場書記官は昭和41年入省のIII種、前川書記官は昭和52年入省のIII種採用である。
(粗情報通信課長)クーポン券の関係だが、全体で18名いるが、厳重訓戒処分となった2名についてはIII種職員である。残りの16名については、III種14名、I種2名である。
(問)ケニアの件で最初の指摘というのは何に対するものか。
(新美在外公館課長)住居手当、住居防犯対策費、光熱費等の不適正受給費全てに対してである。
(問)本省に指摘が行われる前に大使の方に指摘を行ったということはなかったのか。
(粗情報通信課長)確認していないが、無かったと理解している。
(問)タクシーの件であるが、18人が受けとったクーポン券の合計額はいくらか。
(粗情報通信課長)合計額は47万円強である。
(問)タクシー・クーポンは、小林秀彦氏だけではなく、小林祐武氏、大隈氏等全てを含んだ計4人から、18名にいったのか。
(粗情報通信課長)そうである。主として小林秀彦事務官からであるが、一部名前の出た3名からいっている。
(問)光熱水道料の件であるが、意図的に騙し取ろうとしたのではないか。
(新美在外公館課長)意図的に騙し取ろうとした悪意はなかったと思っている。契約書に光熱水道料についての記述はなにも無かった。通常、何も記述されていなかった場合には含まれていないものと恐らく理解したと思われる。つきつめて言えば何ヶ月も生活していておりながら、水道料、電気代等の請求が全く来ないということであれば、「何故来ないのであろう」と、これは家賃の中に含まれているのではないかと思うのが普通であるかもしれない。そういう意味では、例え高熱水道料が含まれていないもの思っていたとしても、それを是正しなかった過失は免れないものであると思う。
(問)タクシー券の件であるが、受け取った18名は、いつ、どこで受け取ったのか。サミット準備事務局が立ち上がっている時に準備事務局の中で受け取ったのか、また、それ以降であるのか。
(粗情報通信課長)受け取った時期はかなり分散している。
(問)サミット後もあったのか。
(粗情報通信課長)サミット後も一部あったと記憶している。
(問)サミット後に受け取った職員はどういった名目で受け取ったのか。
(粗情報通信課長)そこの所は、名目というものは必ずしもはっきりしていない。
(問)受け取った人達は、自分から欲しいと言って受け取ったのか。また、小林祐武氏等から何か言われて、奨励されて受け取ったのか。
(粗情報通信課長)受け取り方もかなり様々である。仕事の最中に仕事に関連して受け取った者もあれば、一部の者は私的な会食の帰りに貰ったという者もある。
(問)出来場書記官と前川書記官の主な担当は何であるか。
(新美在外公館課長)領事班長(領事)である。
(問)98年の3月にケニアに査察が入っているが、どうして発見できなかったのか。
(小町官房長)先程、在外公館課長から説明があったとおり、書類上は非常にきちんとしていた事が一番の理由であると思う。
(問)4月に疑いが出て、本日の発表に至るまでの経緯について伺いたい。また、大臣への報告はいつ行ったか。
(小町官房長)大臣への報告は昨日である。4月以降の経緯は在外公館課長から説明申し上げる。
(新美在外公館課長)4月末にケニア大使館内部から指摘があり、それで関係者からの事情聴取、それから関連書類の精査を行ってきたわけである。本日処分を行うまで4ヶ月程要した訳であるが、それについては、1つには関係者の任地、荒川公使はニューヨークにおり、出来場書記官は現在本省勤務であり、前川書記官は未だケニアに勤務している関係から、事情聴取に手間取ったということと、それから書類の精査についてはいろいろ書類を付け合わせる必要があった。また、デンバー総領事の件、パラオの理事官の件があり、担当部局としてこうした件に忙殺されていたという事情もあった。
(問)大臣からはどういった指示があったのか。
(小町官房長)指示というか、自分(官房長)から事案の概要と処分の内容について報告して、それで構わないということで了承をいただいた。
(問)大臣からのコメント等はなかったのか。
(小町官房長)われわれの考えている処理振りで、本日発表することで良いということであった。
(問)タクシー・クーポン券の件の方で、名前を公表しないのは何故か。
(粗情報通信課長)基本的には具体的な使途如何に関わらず、出所不明のタクシー・クーポン券を受け取ったことは軽率であったと言わざるを得ないが、今回、上司から厳重注意を受けることとした16名についてはそもそも人事上の処分という範囲でないので、氏名を公表しないこととした。処分に対象となった受領額の多かった2名については、受領したクーポン券がそれぞれ11万円及び10万円という相当の額に及んで、その出所を確認することなく同僚から受領したというであり、これは公務員の自覚に欠けるとの判断から事務次官名による厳重訓戒処分としたものである。しかしながら、この2名は本件ハイヤー契約に関わる水増し請求に関与したわけではなく、あくまでも、タクシークーポン券を不正に詐取した職員もしくはその配布を受けた職員から更に配布を受けたもので、こういった受け取りの状況及び使途を総合的に勘案して氏名の公表を差し控えることが妥当であると判断したものである。
(問)同じ厳重訓戒処分で、ケニアの前川書記官の名前が出ているが、同じ処分であっても違うものという認識であるか。
(新美在外公館課長)能動的に関与したか否かという点である。
(問)水増しに関与していないいうことであれば、前回の松田領事と小林事務官も水増しに関与していない訳で、それでも処分を受けており、名前も公表されている。そういった観点からは先程の事は理由にならないのではないか。
(粗情報通信課長)前回の松田、小林両職員については、受け取った金額が更に大きかったということと、一部業務との関係で使用していたが、一部は別途のカテゴリーになると思うが、換金して使用していたという点で、責任は極めて重いと判断した次第である。
(問)出所不明のタクシー・クーポン券が省内にあるということがそもそも不思議であるが、7月の記者会見で出たハイヤーに限らずプール金という、いわゆる裏金のプールというのは前の官房長が調査すると言われたが、プール金は確認できたのか。
(小町官房長)それについては、調査中である。
(問)その存在というのも未だはっきり分からないのか。
(小町官房長)それも含めて現在調査中である。
(問)プール金があるかどうかも分からないのか。
(小町官房長)それも含めて調査中である。
(問)以前の官房長の会見で、サミットの打ち上げで、屋形船で納会を開いたのも、一連のお金から出ているという報道についても確認されるという話であったが如何か。
(粗情報通信課長)関係者から聴取したが、九州・沖縄サミット終了後、事務局の会計・庶務班関係者21名による屋形船での打ち上げがあったことは事実である。しかし、これはいわゆる皆でお金を出す形でやっており、会費制で関係者からの聴取によれば、会合の経費は若い年の人、等級などにより違うが、全ての参加者から平均約8千円の会費を支払う形で行ったものである。参加者の会費で経費の大方がまかなわれている。しかし、小林祐武、大隈容疑者が負担したのは他の者、特に小林祐武元職員が負担したのは多くて数万円である。そういう意味では(小林祐武の負担金の)出所がどこかということになるわけであるが、両名から直接聴取できない事情から、それがどういう性格のお金であったか、両名が自らの会費をどういうふうにしたかということについては特定できていない。
(問)受け取った中にI種の方が2人いるということであるが、この両名は、この4人の事務官とサミットの事務局あるいは、経済局、そういうところでの上司に当たる方であるのか。
(小町官房長)そうではない。
(問)全く別のということか。
(粗情報通信課長)小林秀彦事務官の方であるが、同事務官は、二次的に受け取っているわけで、受け取った人間からまた受け取る形で受け取っている。業務に関連して渡されて、業務に関連して使用している。特に1名については、業務に関連して使用して、使用した分は、額はそれ程多くはないが、領収書と共に、残券は、業務の関連で貰ったものであるので、きちんと保管していたということである。
(問)それが5万円を受理した方ということであるか。
(粗情報通信課長)そうではない。両名の受領額はそれぞれ1万円相当である。
(問)ケニアの件であるが、本人達も生活が大変という事もあり、ちょっと操作した認識があったの様な気もするが、そうであれば、この方達は前任地でも、またこれ以前にも同じようなことをしていなかったのか。
(小町官房長)そういうことはやっていなかったと思うが、前任地のところは必要に応じて確認する。
(問)ケニアの件は今年の4月末から発覚したということであるが、荒木調査委員会では外務省の中で色々と問題になっている問題を扱うと聞いていたが、この問題は荒木調査委員会に報告されて、調査の対象になっているのか。それとも荒木委員会にこれは全く知らされない形だったのか。
(新美在外公館課長)荒木委員会には上げられていない。
(問)その理由はなぜか。
(新美在外公館課長)その時の経緯は詳しく承知していないが、4月の末にそういう内部からの指摘があって、それを調査していくことに時間を要し、タイミング的に合わなかったのではないかと思う。
(問)さらに認識を伺いたいが、ケニアの件に公使を含め3人も処分者が出たというのは、ケニア大使館というところは、こうした手当ての支給に対してルーズな意識が蔓延していると考えるのか、それとも、他の大使館或いは在外公館にも少なからずある話なのか、その辺りの認識については如何か。
(小町官房長)他の公館でこのような不適正な受給がおこなわれているとは承知していないが、いずれにしても、今回の事例はあってはならないことだと思っている。改めて、全ての在外公館に対して、あらゆる諸手当に関する制度の原則、規則について周知徹底し、適正な受給の申請および認定ができるように指示したい。本省においても、チェック体制を更に強化していきたい。また、1年以内に全在外公館に対する査察を実施することになっているので、このような査察を含めて、機会を尽くして調査を行っていきたいと考えている。
(問)当時のケニアの大使館にそういうルーズな雰囲気があったということはないのか。
(小町官房長)そのようには認識していない。
(問)タクシー・クーポン券の件でのキャリアの二名であるが、どういう地位の方であるのか。例えば局長であるとか。
(小町官房長)課長前後である。
(問)二名とも。
(小町官房長)そうである。
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小町官房長臨時会見記録 (平成13年8月13日(月)16:30~ 於:会見室)
冒頭発言
(小町官房長)本日は、在パラオ大使館元職員の処分についてご報告させて頂く。在パラオ大使館において会計上の不符合が生じていることが、我が方内部において認識されたために、昨年末以降、本省の会計専門家を派遣する等して調査を行ったところ、公金の実際の残高と帳簿上の数字の間に約14,300ドル(約150万円)の不符合が生じていることが確認された。
会計書類の整理や照合に加え、その後、同大使館の会計担当官であった宮崎文美義理事官を帰国させ、本省において事情聴取を行ったところ、この不符合は、当該職員による私的目的での公金の一時流用や会計実務上の不手際によるものであったことが確認された。
当該職員は、これを深く反省すると共に、一時流用については、一時的に借用したつもりであり、その一部については、本件の発覚以前に実際に返済したとしており、また、不符合額の全額を既に弁済している。
しかしながら、外務省としては、公金を取り扱う立場にある者がこの様な行為を行ったことを重くみて、8月1日付で1年間の停職処分に付した。
また、同日付で在パラオ大使館を監督する立場にあった村山比佐斗駐フィジー大使(パラオ大使兼任)を事務次官名による厳重注意処分、現地における直属の上司に当たる長谷川恵一参事官を官房長名による訓戒処分にした。
外務省としては、公金の不適正な管理、不正使用を理由として、改めて処分者を出さざるを得なかったことは、極めて遺憾であり、国民の皆様に対し、深くお詫び申し上げる。
同時に、外務省としては、引き続き、在外公館を含め全省をあげて綱紀粛正に引き続き取り組むとともに、会計事務の厳格なチェック体制の構築など改革要綱に盛り込まれた諸点の実現に誠実に取り組みたいと考える。
なお、本件については、7月以降、大臣がローマでのG8外相会合、ハノイでのARF等に出席され、また、植竹副大臣もCOP6に出席される等、最高幹部が入れ替わり出張される中で、主として杉浦副大臣と相談して、処分の内容等を決定した経緯がある。
本件の対外的取り扱いについては、当該職員が懲戒停職1年という重い処分を受けていること、不符合額の全額を既に弁済していること、また、若く将来もあること等を勘案して、処分の時点で本件を積極的に公表することを控えていた。しかしながら、10日の幹部交代を受け、新次官に本件を報告したところ、特に公金の不正使用にかかる処分に関しては、国民の皆様との関係で透明性を確保すべしとの指示を受け、本日昼前、自分から田中大臣にも報告の上、今般、公表することとなった次第である。発表がおくれた件につき、改めて深くお詫び申し上げる。
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質疑応答
(問)不符合が生じていた期間は何時から何時までか。昨年末から調査を開始していたようであるが、外務省として何時その不正を認知したのか。
(小町官房長)昨年の秋、具体的には去年の10月上旬に現地会計担当官、宮崎理事官であるが、同理事官から出納管理(長谷川臨時代理大使)に対して、会計状況の報告がなされた際に、大きな不符合が生じていることが解ったので、長谷川臨時代理大使から、外務本省に対して、会計専門家の応援出張を求めて調査をして欲しいという要請があったのに応えて、調査を行った次第である。
その結果、14,300ドルの不符合が確認された次第である。
(問)不符合が生じているのが確認されたのはいつ頃なのか。
(小町官房長)本省から、昨年12月に会計専門家が出張しチェックを行った。その結果、14,300ドルの不符合が生じていることが確認されたので、本年1月に入って、本人(宮崎理事官)を帰国させ、更に色々事情聴取等を行っていた次第である。
(問)8月よりかなり前から(不符合の事実が)確認されていたということか。
(小町官房長)然り。
(問)(外務省では)一回処分をしないという結論が出されたのか。
(小町官房長)数字は確認されたが、それが証拠書類が無いためなのか、流用なのか、色々なことをチェックする必要があったので、1月の中旬だったと思うが、本人(宮崎理事官)を帰国させ、それから事情聴取等を始めた訳である。
それから、この会計担当官だけではなくて、長谷川臨時代理大使からも事情を聞く必要があった訳であるが、ご記憶かと思うが、昨年4月にナカムラ・パラオ大統領(当時)が太平洋島サミットのために来日する等色々なことがあって、そういう関係で長谷川臨時代理大使からの話を聞くことが遅れたり、或いはその間、これもご記憶のことと思うが、在外公館課長が死亡したり、色々なことが重なって少しそういった時系列になった訳である。
(問)(官房長は)遅い処置だと思わないか。1月中旬に判明したことが、処分が8月1日までかかったことについてどう思われるか。
(小町官房長)先程申し上げた通り、会計担当の者が証拠書類を単に紛失したのか、そうではないのか、色々なことをチェックする必要があったこと。また、他の関係者からも話を聞く必要があったこと等の事情があった。それに、高橋在外公館課長が死去したというこもあり、結果として、通常より時間がかかったということはあったかと思う。
(問)8月1日に停職処分という結論が出ている訳であるが、先程対外的な発表が13日まで遅れたという説明があったが、これは一般国民から見れば、隠蔽していたと受け止めることになるが、公表しないと判断したのは、最終的に誰が判断したのか。
(小町官房長)先程申し上げた通り、7月は、(本省)最高幹部の出張が入れ替わり行われた関係上、主として杉浦副大臣と相談しながらこの処分の内容及び公表振りを決定した次第である。
(問)田中大臣には、報告して「了」とされたのか。
(小町官房長)田中大臣は、自分から、本日11時50分に電話で報告をして、自分が、今日の午後、このように発表することについて了解を得た次第である。
(問)田中大臣に報告したのは、この時点で初めてだったのか。
(小町官房長)然り。
(問)8月1日付の処分の時には田中大臣に報告していなかったのか。こういう処分を大臣に報告しないということが、外務省の普通のやり方なのか。
(小町官房長)結果として、今日(初めて)報告したということは、自分自身としては、必ずしも適切ではなかったと思う。
(問)(8月1日の段階では)誰の耳まで入っていたのか。
(小町官房長)(8月1日の前の段階から)杉浦副大臣は承知していた。
(問)実際何に(公金を)不正使用していたのか。
(新美在外公館課長)流用された公金は、在パラオ大使館の口座には、公館の維持運営のために必要な様々な経費が送金されている。例えば、現地採用の職員の給与であるとか、館員の諸手当、維持運営に必要な庁費である等、色々な経費が口座に入れられている。宮崎理事官は、その口座から金を引き下ろしていた。どうしても公館が実際に日々活動を行うに際して手持ちの現金というものが必要となり、常に、ある程度の額、それは余り大きな額であってはいけないが、ある程度の額を大使館の会計班の金庫に保留している。(宮崎理事官は)その現金から流用を行ったというものである。
使い道については、本人の陳述によれば、私的な航空券の購入、或いは飲食、こういったことに使ったと申している。
(問)日本との往復航空券か。
(新美在外公館課長)本人の言によれば、主にグァム島、パラオとグァムを行き来する航空券の購入に充てたと申している。(記者より、遊びであるとの指摘を受け)私的に航空券を購入したということである。
(問)(流用された公金は)報償費とは全然切り離された金なのか。
(新美在外公館課長)先程申し上げた通り、大使館の口座には様々な経費が送金されており、その中には報償費も送金されている。但し、具体的にどの経費から流用したかということは、特定が出来ない状況である。というのは、先程申し上げた通り、宮崎理事官は、一度口座から引き下ろして現金化し、その中から流用しているということであるので、特にどの経費を流用したのかということは特定できない状況である。
(問)帳簿上何に使ったと記されていたのか。
(新美在外公館課長)先程来不符合と申し上げているのは、要するに帳簿上の残高と実際上の公金の残高に差があるということで、不符合と申し上げている訳である。もし宮崎本人が適正に帳簿を付けていれば、その帳簿の残高、帳簿にあるのは全て適正に使われた金額であって、実際の残高との差額というものが流用されたということが特定される訳であるが、本件の場合は、本人が帳簿の記載、それから公金を使った場合の証拠書類の整理、こういったものがかなり本人の不手際で適正に行われていなかった。
従って、帳簿上の残高と実際の公金の残高の差額は、一部は適正に使われていた筈であるが、証拠書類が散逸してしまったため、帳簿上適正に記載されていないという部分が一部あって、残りが本人の私的流用によるものだということである。
(問)会計事務上の不手際ということであるが、それが今話されたような証拠になるようなものがないということなのか。
(新美在外公館課長)然り。
(問)実際に差額約150万円を流用した訳ではなく、一部を流用して一部は証拠書類を紛失して記帳されていなかったということか。
(新美在外公館課長)然り。
(問)実際に幾ら流用したのか解らないのか。
(新美在外公館課長)本人の証言によれば、証拠書類と帳簿の簿記が適正に行われていないので、不符合の額のどこまでが私的流用額でどこからが会計上の不手際による額かというのは、自分たちで確定することは困難であるが、あくまでも本人の言であるが、本人によれば、私的流用額は約1万ドル、或いは本人記憶違いがあれば、それよりも多い額であると、我々は理解している。
(問)宮崎本人は、(公金を流用していた)時期について、何時から何時までという期間について述べているのか。また、具体的に何回ぐらいにわたって(流用を)行ったのか。
(新美在外公館課長)回数について、そこまで本人から詳細な申し立てがある訳ではないが、時期としては、本人は平成11年の2月にパラオ大使館に発令になっていることを鑑みれば、パラオ大使館に勤務し出して、いつかの段階から公金流用を開始したということである。何時から何時まで行っていたのかということを、我々として特定することは困難であるが、昨年12月に本省から会計専門家を派遣して、そしてその不符合の実態を把握したということであるので、その時点で、長谷川臨時代理大使は、本人から手持ちの現金と小切手帳を取り上げて一切公金に手を触れさせない処置をとった訳である。従って、遅くともその時点では流用ができない状況になったということである。
(問)今後全在外公館査察を行った場合、このような事態が出てきた場合には、今回のように公表を控えるということになるのか。それとも速やかに公表して頂けるのか。
(小町官房長)これから色々指摘されている査察の問題も含めて、色々やっていかなければいけないと思う。その結果については、適切な形で公表していきたいと思っている。
(問)確認であるが、8月1日の時点では、前次官はこのことを承知していたのか。また、公表しないという方針をとったのも前次官という理解で宜しきや。
(小町官房長)先程自分が申し上げた通り、杉浦副大臣と相談した上、そういう方針がとられたと理解している。
(問)杉浦副大臣以下の人達は皆承知していたということか。
(小町官房長)然り。
(問)田中大臣だけ承知していなかったということか。
(小町官房長)田中大臣には今朝11時50分に自分から電話するまでは、報告していなかった。
(問)田中大臣は、その電話を受けて、素直にはいそうですかという反応だったのか。それともその経緯について何か不満を示されたのか。
(小町官房長)田中大臣は、自分(大臣)に報告があって然るべきだったというふう考えている。
(問)植竹副大臣は承知していたのか。
(小町官房長)先程申し上げた通り、7月は(外務省の)最高幹部は色々出張されており、植竹副大臣はCOP6等色々な会議に意を含めて出張されていた。そういう意味では、杉浦副大臣が、7月には一番東京に滞在していた時間が多かったという事実がある。
(問)逆に言うと何で公表した方がいいという判断をとったかという見方もあるが、何か具体的に取材があったとか、これを伏せているのは良くないという個人的な判断があったのか。
(小町官房長)10日の幹部交代を受け、野上次官にこの問題を報告したところ、特に公金の不正使用に係わる処分については、透明性を国民の皆様との間で確保しなければならないということで、これを踏まえて、今朝、田中大臣にも報告して、本日発表するということになった次第である。
(問)官房付に発令されたのは8月1日か。
(新美在外公館課長)今年の1月である。
(問)帰国させるとかそういった関係で1月になったのか。
(新美在外公館課長)先に本人は1月の中旬に帰国し、官房の方で事情聴取を行い、その結果1月22日付で官房付になっている。
(問)(公金流用を)何時から何時までやっていたということも良く解っていないということだが、最初に気づいた経緯と普段のチェック体制との絡みからいって、もう少し詳しく教えて欲しい。
(小町官房長)最初の頃は、借りて、それをまた戻していたということがある。従って、本件について我々の内部で認識されたのは、冒頭申し上げた通り、去年の10月の上旬に大きな不符合が生じているということが長谷川臨時代理大使によって認識された。その後同臨時代理大使から、本省に対して、チェックのため専門家を送ってほしいという要請があり、12月に専門家を派遣し、そして、本件が明らかになったという次第である。
(問)どうやって長谷川臨時代理大使が認識したのか。
(新美在外公館課長)ご指摘の点を補足すれば、長谷川臨時代理大使より、宮崎からの会計関係の報告が遅れぎみであり、宮崎が在外公館で会計事務を担当するのは初めてで不慣れであったということもあると思うが、督促してもなかなか報告が出てこない。昨年10月の時点で初めてまとまった形で報告が上がってきた訳であるが、そこで帳簿上の残高と実際の公金の残高の間に相当額の不符合、開きがあると認識されたわけである。
不符合というものが、どういう理由によるものか、会計の帳簿への記載漏れ、証拠書類の散逸というのがかなりひどい状態だったということもあり、本省と連絡を取り合ってその辺の整理を進めると共に、現地の長谷川臨時代理大使の方から本省の会計専門官の応援出張を求める要請があり、12月上旬に在外公館課の方から専門家を派遣したということである。そこで1万ドル以上の不符合額というものが確認された訳である。
(問)日常的に宮崎理事官の会計事務を管理、監督する立場の人は臨時代理大使しかいなかったのか。
(小町官房長)然り。この大使館は、長谷川臨時代理大使と宮崎理事官からなる大使館であり、大使はフィジーの村山大使が兼任している。そういう意味では2人公館ということになる。
(問)先程から話されている臨時代理大使というのは、大使の交代か何かがあってそれに合わせて10月にチェックをしたということか。
(小町官房長)パラオにある日本大使館は、正式には、(パラオ)大使はフィジーにいる村山大使が兼任しており、現地にいる臨時代理大使というのは、村山大使の下に位置づけられているものである。ただ、わかりにくいので、臨時代理大使と説明した訳である。
(問)繰り返しになるが、1年の停職処分という幅の問題だが、先程、(宮崎は)将来があって云々と説明されたが、刑事的な処分のようなものを考えているのか。
(小町官房長)先程も申し上げたが、国家公務員法に基づく一年間の停職処分を行った訳である。これは、本人が反省していること、全額が返納されていること、当人の将来のこと等を考えてそういった処分を行った訳である。
二つ目の質問については、31才とまだ若く、将来もあり、不符合額の全額を弁済している。それから、本人が深い後悔、謝罪の気持ちを記した書面を出して反省の念を示しているので1年間の停職処分にした訳であり、告訴や告発を行うことは考えていない。
(問)デンバーの総領事の場合も全額返したと思うが、(懲戒免職となった右総領事との)バランスはどうなのか。
(小町官房長)デンバーの場合は、館の長というトップにある者が不正経理をした訳で、その責任は非常に重いため、懲戒免職処分になったと理解している。本件については、先程申し上げた通り、31才で結婚もしており、若くて将来もあること、本人が非常に反省していること、勿論全額をすでに返していること等を踏まえ、そういう意味では非常に難しい決断ではあったと思うが1年間の停職とした次第である。
(問)実際の流用の内訳だが、額にすると航空券にいくらで飲食にいくらなのか。約で結構である。
(新美在外公館課長)細かい額まで特定することは難しかったが、本人の申し立てで私的流用は約1万ドルであるということである。内訳であるが、主に私的航空券の購入、私的飲食ということで大半を流用したと、本人は申し立てている。
(問)最初の頃は抜いたものをすぐに戻していたと説明があったが、そういったものを積み上げていくともっと大きな額になるのではないか。
(新美在外公館課長)1万ドルというのは本人が最初に流用してその後直ちに返済したという額も含めてある。最終的には本人は全額弁済しているので、私的流用額の積算に当たっては、いつの時点で弁済したかに関係なく全部それを積み上げると先程申し上げたような額になるということである。
(問)調べた中では、着任後すぐに(公金流用を)やり始めて、ものを取り上げられるまでずっとやっていたという理解で良いのか。
(小町官房長)具体的に何月何日からというのは特定できないが、着任して流用が発覚したのは昨年の12月であり、一昨年から(公金流用を)やっていたようだと認識している。
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飯村官房長臨時会見記録 (平成13年8月6日(月)16:20~ 於:会見室)
冒頭発言
本日は九州・沖縄サミットハイヤー契約に係わる関係者の処分について発表をさせていただきたいと思う。お手元に資料をお配りしたのでこれに沿ってご説明したい。
まず概要であるが、今日6日午前、外務省総務参事官室に所属していた小林祐武及び大隈勤の両名が、九州・沖縄サミット準備事務局が東京で使用するハイヤーの契約に関する詐欺罪で起訴された。外務省としては、両名が7月16日に警視庁に逮捕されたことを受け、当時の九州・沖縄サミット準備事務局の関係者より、本件ハイヤー契約に関する任意の聞き取り調査を集中的に行ってきた。
これを踏まえ、小林祐武及び大隈勤の両名を本日付けで懲戒免職処分とした。本件に関し、事務当局の最高責任者である川島裕事務次官及び九州・沖縄サミット準備事務局が設置されていた大臣官房の当時の責任者である、阿部知之前官房長(現研修所長)については、懲戒減給処分(10%、1ヶ月)にした。また、現在の官房の総括責任者である飯村豊官房長(自分)は、俸給月額の10%、1ヶ月分を自主返納したい旨申し出を行い、これが受け入れられた。
また、当時小林(祐武)、大隈両名を直接監督する立場にあった、本村芳行九州・沖縄サミット準備事務局長(現国連代表部大使)については、現在特別職にあり、国家公務員法上の懲戒処分の対象となり得ないことから、外務大臣名による厳重訓戒処分にした。なお、本村前事務局長からは、俸給月額の20%、3ヶ月分を国庫に返納したいとの申し出があり、これが受け入れられた。
さらに、業務上の直接の監督責任は有していないものの、小林(祐武)、大隈が併任されていた当時の経済局の関係者、すなわち、田中経済局長、天野元経済局総務参事官、齋木前経済局総務参事官、奥田経済局総務参事官の4名についても、両名が本来所属している部局の責任者であり、両名の公務員としての規律を指導する立場にあったことを踏まえ、外務大臣名による厳重注意処分とした。また、当時の会計事務の責任者であった卜部元会計課長及び木寺前会計課長の2名についても、外務大臣名による厳重注意処分とした。なお、これら6名から、俸給月額の10%、1ヶ月分を国庫に返納したいとの申し出があり、これを受け入れた。
また、聞き取り調査の結果、小林、大隈よりタクシー・クーポン券、及びハイウェイカードを受領していた者が他にいたことが判明したため、以下の処分とした。松田耕二在チェンマイ出張駐在官事務所領事、懲戒停職(1ヶ月)、小林秀彦北米第2課事務官、懲戒停職(1ヶ月)。
なお、この2名は、在任期間は異なるものの、いずれも九州・沖縄サミット準備事務局の会計・庶務班に所属していた。
松尾元室長事件、及びデンバー総領事不正経理問題とともに、九州・沖縄サミット準備事務局のハイヤー契約をめぐって、このように多くの処分者を出さざるを得なかったことは、まことに痛恨の極みであり、国民の皆様に対して、改めて深くお詫びを申し上げたい。
今般の事件を受け、既に「調査・再発防止のためのタスク・フォース」を立ち上げており、外務省内の会計事務のチェック体制、調達システム等について、その問題点を洗い出すとともに、同種の事案がないかについても調査を行っているところである。また、杉浦副大臣を長とする「綱紀引き締めのためのプロジェクト・チーム」は、副大臣、大臣政務官、各局部幹部を構成員とし、このタスク・フォースの調査・作業を指導していくこととなる。
外務省としては、このような不祥事を繰り返さないために、省員が一丸となって外務省の自浄能力を示し、また一日も早く外務省に対する国民の皆様の信頼を回復すべく、全力で努力していく考えである。
補足説明であるが、この事件は、九州・沖縄サミット準備事務局に所属していた小林(祐武)、大隈の両名が平成12年2月上旬頃から8月中旬までの間、日の丸リムジン関係者と共謀の上、準備事務局が東京で使用するハイヤー使用料金を水増し請求し、合計約2150万円を詐取し、7月16日に逮捕、本6日に起訴に至ったものと承知している。
外務省としては、最初に報道があった7月13日以降、事実関係の概要を確認するとともに、タクシー・クーポン券等の使途等に関し、当時のサミット準備事務局関係者より、任意の聞き取り調査を集中的に行ってきた。その結果、以下の事実関係が明らかとなった。
松田耕二、サミット準備事務局の在任期間中、小林(祐武)、大隈より数回にわたって合計約125万円相当のタクシー・クーポン券及びハイウェイカードを受領した。小林秀彦、サミット準備事務局在任期間中、小林(祐武)、大隈より数回にわたって合計約90万円相当のタクシー・クーポン券及びハイウェイカードを受領した。
これら2名はいずれも、タクシー・クーポン券やハイウェイカードが水増し請求の結果捻出されたものであることは承知していなかったとしている。しかしながら、受領したタクシー・クーポン券などが相当の額であること、2名とも結果的に、受領したタクシー・クーポン券やハイウェイカードの一部を私的に使用したと述べていることから、2名の責任は重いと考え、懲戒停職処分(1ヶ月)とした。また、この2名からは、受領したタクシー・クーポン券等に相当する金額を返納させることとしている。
なお、この2名が受領した、タクシー・クーポン券の一部が複数のその他省員に配布された模様であるが、現段階では全容が必ずしも明らかとなっていないことから、外務省としては本件について引き続き調査を行っている。
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質疑応答
(問)本村さんが国連大使で出たのはいつ頃か。
(飯村官房長)正確な日付は覚えていないが、確か5月の下旬だったかと思う。
(問)タクシークーポン券を受け取っていた、松田耕二さんと小林秀彦さんですが、会計庶務班の中ではどういった立場にあったのか。
(飯村官房長)会計庶務班の一番上が、小林祐武であり、この2名はその補佐という立場にある。
(問)より具体的には。
(飯村官房長)当時の会計庶務班の中で、松田領事は会計の方の担当しており、小林事務官は庶務を担当していた。
(問)班長は。
(飯村官房長)班長は逮捕された小林祐武である。
(問)(松田、小林(秀彦)両名は)その(小林祐武)班長補佐であるか。
(飯村官房長)然り。
(問)松田領事が会計で、小林秀彦事務官が庶務で補佐、大隈さんより上と言うことか。
(飯村官房長)大隈は松田の下で、会計を担当していた。
(問)田中経済局長以下、皆さんの処分の内容について、厳重注意で自主返納となっているが、本来懲戒減給とするべきところを、厳重注意にして自主返納としていると言うことなのか。それとも、処分は厳重注意相当であるが、綱紀粛正等に応じてこうしているという趣旨なのか。
(飯村官房長)サミットの事務局の会計関係は直接指導監督すべき立場にあったのは本村事務局長であり、本来、田中局長以下それ以外の者は国家公務員法上の処分を受ける立場にない。他方、経済局長、元、前、現の経済局総務参事官の3名は、元々小林祐武、大隈の2名が経済局からサミット事務局に派遣されていたということで、人事上の紀律について指導しうる立場にあったので、直接の監督責任はないが、人事面での責任があると言うことで厳重注意処分とした。さらに、その責任を感じて、これらの者から自主返納の申し出があったということである。
(問)本村さんについては、国家公務員法上の処分が出来ないと言うことで厳重訓戒になっているが、そうすると、川島次官や阿部前官房長の懲戒減給よりも重いと理解して良いのか。
(飯村官房長)然り。直接の監督責任者であった。
(問)田中局長以下の厳重注意というのは、川島次官や阿部前官房長とは明らかに違うものと言うことか。
(飯村官房長)然り。経済局は直接の会計事務の監督立場に無かったので、寧ろ本村事務局長の責任を問うたものであると考える。
(問)厳重訓戒と厳重注意は内規であるか。
(飯村官房長)これは各省庁によって違うと思われるが、外務省の内規には4種類あり、最も重たいものは厳重訓戒、2番目が訓戒、3番目が厳重注意、4番目が注意となっている。
(問)13人処分というのはかなり大きなものであるが、今日の記者会見には、何故大臣と次官が出てこないと言う判断になったのか。
(飯村官房長)大臣、次官は既に先般逮捕者が出たときに、特に次官の場合はこの場であったが、大臣は外遊中であったが、国民の皆様に私どものこういった不始末を深くお詫びすると言うことがあったので、今般は、官房事務の責任者から皆様に発表するようにということであったので、自分(官房長)の方から発表させていただいた。
(問)決裁であるが、小林(祐武)さんのいろいろなことについて、決裁についてこの前の会見の時には分からないと言うことであったが、どういうふうに決裁したか、結局調査した結果どういうふうにやっていたのか。
(飯村官房長)決裁は、小林(祐武)のところで支出決議書を起案して、日の丸リムジンからの請求書が添付されていた。その日の丸リムジンからの請求書には4台分ということで今般起訴されたわけであるが、総計約2,150万円の決議書が5回にわたり出されているが、総計それだけの額が添付されていた。この支出決議書は会計監査に参り、会計課の担当室の決裁を経て会計課長まで上がると言うことになっていた。
(問)直接本村さんが目を通す仕組みにはなっていなかったのか。
(飯村官房長)時々、代理決裁等が行われており、本件の場合は本村局長は決裁を行っていない。
(問)5回の日付と金額を明らかにしていただきたい。
(飯村官房長)今日の全貌を明らかにする立場にないが、今般の起訴によると、第1回目に日の丸リムジンから請求があったのは平成12年2月上旬、送金は3月1日。2回目は平成12年3月上旬で送金は3月22日、3回目は(請求は)4月上旬送金は4月19日。4回目が請求が5月中旬、送金が5月23日。5回目が8月中旬、送金が9月8日ということである。
(問)それは、外務省の方では調べがつかないのか。書類がいろんな形で残っているはずであるが。
(飯村官房長)外務省としても、掌握しているが、(書類は)捜査当局の方に提出している。
(問)今回の処分について、大臣の方から自分で自主的に処分するような形で考えたいと以前、この事件が発覚した頃表明していたが、その後どうなったかご存じか。
(飯村官房長)大臣は、何回か自分(官房長)が承知している限りでは2回記者団の皆様からのご質問に答えてご自分の考えを述べておられるが、今回特にご自分の処分なり、責任と言うことに対し事務当局に指示は下りてきていない。
(問)松田さんと小林秀彦さんの一件であるが、タクシークーポン券の一部を私的に利用したとあるが、具体的にはどうか。
(飯村官房長)松田であるが、同人は九州・沖縄サミット準備事務局に所属していた平成12年5月から11月に掛けて、小林(祐武)、大隈、或いは後ほど申し上げるが小林秀彦より数回にわたり合計約125万円相当のタクシークーポン券、及びハイウェイカードを受領していた。使途の内訳については、必ずしも当時の記憶でもあり明かではないが、受領した約125万円相当のタクシークーポン券及びハイウェイカードの内一部を自らのタクシー代として使用していた模様であり、正確な数字は不明であるが、だいたい3分の1位をタクシー代として使用していた。残りを現金化した上で、自らの飲食等私的に利用していた模様。小林(秀彦)については、平成12年5月から10月の2回にわたりそれぞれ大隈、小林祐武より合計約90万円相当のタクシークーポン券及びハイウェイカードを受領している。同じく使途の内訳については、正確なところは不明であるが、受領した合計約90万円相当のタクシークーポン券及びハイウェイカードの内一部を自分のタクシー代として使用していた。これがだいたい3分の1。残りについてはその一部を現金化した上で自らの飲食など私的に利用しており、今のでだいたい3分の1弱であるが、さらに残りをその他の複数の外務省員に対してクーポン券そのものを配布していた旨述べている。
(問)125万円のクーポン券を渡した名目如何。
(飯村官房長)当人は「ポン」と渡されたと言っており、必ずしもどのような趣旨でもらっていたかと言うことは十分認識しないで受け取っていたと言うことである。
(問)これは、懲戒免職に相当しないのか。
(飯村官房長)松田、小林(秀彦)両名の行為は、高額の金権の出所を確認せず、同僚職員より受領したと言う点で、公務員として自覚に欠ける、容認されるものではないと考えている。他方、関係者からの任意の聞き取り調査の結果、この2名は水増し請求に直接関与していたという事実はなく、また、受領したクーポンやハイウェイカードが水増し請求の結果捻出されたものであるという認識していなかったと言うことが確認されている。この二人の処分は、こういった状況を総合的に勘案し、国家公務員法に基づく処分の内、免職に次いで重い停職処分としたものであり、人事院作成の懲戒処分の指針というものがあるが、こう言ったことや各省庁の処分例とも比較して甘すぎると言うふうには考えていない。
(問)このタクシー券やハイウェイカードは何処にあったものか、誰が所持していたのか。
(飯村官房長)先ほど申し上げたが、松田の場合はタクシークーポン券をタクシー代として使用し、また現金化したと申しており、私的に飲食等に使ったと言っている。
(問)質問が悪かったようだが、これは誰から、小林(祐武)、大隈のどちらからもらったのか。
(飯村官房長)松田については、小林(祐武)、大隈、北米二課の小林秀彦、この3名から数回にわたりもらっていたと言うことである。
(問)小林秀彦さんは誰からもらったのか。
(飯村官房長)小林秀彦は、大隈と小林祐武から受け取っていた。
(問)受領したときの趣旨をお訊ねしたいが、3分の1しかタクシー代としてしか使っていないが、その余を現金化しているわけであり、例えば松田さんで言えば80万円相当を私的に流用したことになっており、その趣旨が分からないと言うことはどういうことであるのか。外務省ではこう言うことは慣例化されていると言うことで理解して良いのか。もう少し具体的に説明していただきたい。常人の金銭感覚からすると80万円の金を私的流用したというのは説明の付かないようなことではない。
(飯村官房長)誤解があったかもしれないので、もう一度お伝えするが、そもそも松田については125万円相当のタクシークーポン券及びハイウェイカードを受領しているが、これを自分のタクシー代として3分の1を使い、残りを現金化したと言うことで全てを使用したと言うことである。
(問)全額を使ったと言うことか。
(飯村官房長)然り。
(問)小林(秀彦)さんもか。
(飯村官房長)小林(秀彦)職員については、タクシー代として使用した分、これは私用である。また、自らの飲食にも使っている。これも私用である。ただし、その他の省員に配布した模様であり、その分をどう評価するかという問題がある。
(問)現金化したのはどこか。
(飯村官房長)金券ショップである。
(問)個人的に使っていいということで貰っているのか、或いは出所についてはどういう趣旨のものということで本人達は使っているのか。
(飯村官房長)本人達は、出所については十分な認識がなかったようである。先程も申し上げたが、そういった高額な物を受け取ることは真に遺憾な行為であるが、サミットの準備のプロセスでいろいろな作業があるので、それで使っていいという意識で受け取ったものと推測する。
(問)つまり個人的に使っていいという趣旨で貰っているのか。つまり、仕事で使えということではなく、サミットの準備で作業している人たちのタクシー券だと言われて渡されたものを個人的に使ったのではなく、もともと自分で勝手に何に使ってもいいという趣旨で貰っていると考えられるということなのか。
(飯村官房長)そこのところは彼らが受け取った時の認識が必ずしも明確ではない。
(問)ただ、少なくとも違いは分かると思う。つまり、仕事で深夜帰宅の為に使われたもの、いわば公のものを私物化したのか。それとも最初から、これは因果含まれている金で好きに使っていいということで貰っているのか。そういう意味でいえば、後者だという意味で受けとるがそれでいいのか。
(三輪参事官)正確なところはわからないが、もともと水増し請求で入手したタクシークーポン乃至ハイウェイカードなので、そこから次の人に譲るときに明確な説明をして渡された形跡はない。譲るときにそのクーポンの使途について明確な指示・説明があったような形跡はない。
(問)松田、小林(秀彦)両氏がそれぞれ3分の1を自分のタクシー代に使っていたというのは、どういう意味であるのか、公的なものだと思って公的に使っていたのか、そうではなく全くプライベートに最初から使っていたのか。
(飯村官房長)調査における彼らの発言によると、残業の時も使っており、またそれ以外の時も使っていたので両方あったと自分達は理解している。
(問)今聞いていても経緯が全くわからないが、外務省はこの2人にどういう経緯でタクシークーポンを貰ったのかとか、どういう趣旨のものなのか等について厳しく聞いているのか。聞いているけれども、この両名が聞いていることに対して答えないのか。
(飯村官房長)我々はそういった高額のものを受け取ったのかということについては、当然聞いているが、彼らは十分深い認識もなく受け取っていたということである。
(問)深く認識もなく受け取ったということであるが、その答を聞いて外務省の調査をした方は納得したのであるか。普通に考えると100万や90万の金券を受け取ったときに何の認識もなく受け取るということは考え難いが。
(飯村官房長)我々も想像の域を絶する行為であるので、正にその観点から彼らを懲戒停職という厳正な処分を下した次第である。
(問)理由の説明とか求めなかったのか、ただ受け取ったということで納得したのか。
(飯村官房長)これは実際彼らは十分な自覚なく受けとっていた。
(問)松田、小林(秀彦)両氏が十分な認識もなく受け取っていたということは分かるが、それを調査していた外務省の方はそうですかということで終わらせていたのか。
(飯村官房長)どう考えても自分(官房長)もおかしいと思ったので、正に厳しい処分をした。
(問)それ以上追求しなかったのか。
(官総長)一点補足させていただくが、この両名に聞いた結果、聞かなかったので我々から公的、私的に使ったのか、どういう趣旨で貰ったのかが分からないのではなく、本人に聞いた結果、本人達がそもそもどういう趣旨で貰ったか、深く考えないで貰ったということである。従って相手にそういう質問を発しなかった、なぜこれは私は貰うのですかということを発せずに深く考えないで貰ったのが真相である。
(問)理由はともかくとして、その金券の出所が公金用のものかは何か認識はあったのではないか。
(飯村官房長)そこは彼らの供述は、深く考えず、十分な認識がなかったということである。
(問)先程の話だと、小林秀彦から更にクーポン券を貰った人は何人かいるわけだが、それを含めてこの2人以外にクーポン券、ハイウェイカードを貰った職員は何人いて、そういう人達に対しては何も処分に値しないと考えた理由は。
(飯村官房長)先程も申し上げたが、その件に関しては、現在調査を進めているところであり、ある程度の数の人が受け取っているわけで、その結果がわかったところで皆さんにご報告しようと考えている。
(問)タクシー券は、そのサミット事務局は本来残業代で使うタクシー券とかはどういう手続きで貰うことになっているのか。正規の手続きがあると思うが、それはどういう手続きで発券するものなのか。
(官会長)サミット事務局でのプラクティスがどうなっていたのかわからないが、通常の残業であれば、その都度タクシー券を申請して、それを行き先等を書いて、タクシー番号も付した上で使うというのが通常のやり方である。
(問)彼らの立場にいる人がタクシー券を貰うときは、普通どうするのか。会計課に行ってもらうのか、それともどういう手続きをするのか、各課にあるのか。
(官会長)残業タクシーの場合であれば、通常は各課にタクシー券の申請書があり、それを持って、守衛のところでタクシー券全体を管理しているので、そこに持っていき引き換えをし、タクシーに乗るというのが通常残業タクシーの手続きである。
(問)松田、小林(秀彦)両氏が深い認識なく受け取ったということだが、こういう金額を深い認識なく受け取るということは、額はもっと少ないにしろ、このようなことが以前にあったから、それと同じような認識でということではないのか。
(飯村官房長)それはないと思う。
(問)それはそういったやり取りで確認をされたものでのご発言か。
(飯村官房長)通常こういったクーポン券をこのように多額なものを職員が他の職員に配布するということは自分(官房長)自身は聞いたことがない。
(問)松田、小林(秀彦)両氏以外に逮捕された小林(祐武)、大隈両氏から受け取っている方がいる可能性はまだ調査中か、それともないのか。
(飯村官房長)まだ調査を行っており、至急結果を出したいと思っているし、仮にそれに基づき、行政上の措置が必要であるとすれば対処したいと思っている。
(問)小林秀彦さんの方の内訳を確認したいのであるが、タクシー代と自らの飲食に使ったものがトータルで3分の1ということであるのか。
(飯村官房長)90万円相当のタクシークーポン券、ハイウェイカードのうち、一部を自分のタクシー代として使用した、これが3分の1であり、残りの一部を現金化して自分の飲食等私的に使用していた、これが3分の1であり、残りがその他の複数の職員に対してクーポン券そのものを配布していたということである。
(問)125万円であるが、これは何かの見返りなのではないか。何の理由もなく125万円相当のタクシー券を渡すということは考えられないが。何かの手柄に対する見返りではないのか。
(飯村官房長)それはないと思う。
(問)なぜそんなものを渡したのか。
(飯村官房長)それはおそらく、今回逮捕された小林(祐武)、大隈が渡しているわけだが、彼らがどういう考え方で渡したのかというのは、今逮捕されているので動機について聞く機会がないので、明確に申し上げられない。
(問)金銭感覚が普通の人の感覚と違うので、もう少し詳しくお尋ねしたいが、125万円のタクシークーポン券は残業で使う可能性があるのである程度納得できるが、ハイウェイカードとタクシークーポン券の内訳を教えていただきたい。また、聞き取りによって精査はしていないので、間接的に更に松田、小林(秀彦)両氏から貰った省員の数は特定できないと思うが、少なくとも10人位なのか、もう少し多いのか、少し幅の広い範囲で松田、小林(秀彦)両名の方から貰っている人はおよそどの位いると見込めるのか、そこの検討をお聞きしたい。
(飯村官房長)後者の質問については、まだ引き続き調査中であり、掌握できていないが、いずれにしても早い段階で報告させていただく。タクシークーポン券とハイウェイカードの内訳については、彼らが必ずしも正確に記憶していない。
(問)省員の方で、残業で帰る時にハイウェイカードを受け取ることはあるのか。
(飯村官房長)それはない。
(問)それについて、彼らは特にこれも深い認識はなく受け取ったのか。
(飯村官房長)そうである。
(問)今回新たに名前が出てきた松田、小林(秀彦)両氏は、ここからまた下にタクシー券なりが誰だかわからないがおりているのか。
(飯村官房長)特に松田ではなく、小林秀彦からおりている。
(問)これは何で渡したのか。
(飯村官房長)これはまだ調査の途中であるので、結論的なことは言えないが、少額にして渡しているケースが多くて、例えば、同僚との飲食の後、帰りにタクシー代として渡しているケースが多いようである。
(問)この処分については、勿論外務大臣は決裁されているのか。
(飯村官房長)外務大臣の決裁はいただいている。
(問)それは今日か。
(飯村官房長)外務大臣には何回かご説明しているが、最終的には昨日御了承いただいている。
(問)その際に、大臣からは自分(大臣)の処分の問題及び今後の調査等、何か指示なりはなかったのか。
(飯村官房長)特段のご指示はもらっていない。
(問)松田、小林(秀彦)両氏の使ったタクシー代の中には、その省内の方々で飲み食いをした後の帰りに使ったものもあるということか。
(飯村官房長)帰りがけに渡して、帰りに使ったらということはあったようだが、タクシー券を現金化して、それを省内の飲み会に使ったという形跡は、彼らの任意の事情聴取に関する限りではない。
(問)現金化した上で飲み会に充てたというものは確認されていないということか。
(飯村官房長)確認されていない。
(問)大隈は、松田、小林(秀彦)両氏の部下にあたると思うが、部下からクーポン券を渡されるというのは奇妙な感じがするが、やはり何らかの役割分担があって、その取り分としてそれぞれの働きをしたのだろうと思うのだが、大隈は松田、小林(秀彦)の下になると思うが。
(飯村官房長)先程申し上げた通り、一番上に小林祐武がいて、それから松田、小林(秀彦)両氏が補佐する形でいて、松田の下に大隈がいるわけである。
(問)大隈がクーポン券を2人に渡していたのか。
(飯村官房長)妙な感じであるが。
(問)或いは小林祐武から指示を受けて、大隈が渡す役目だったのか。
(飯村官房長)そこは調べていない。
(官総長)今の点は、かなり刑事事件的な要素はないのかという質問に感じを受けたが、そこは捜査当局が全般的に捜査した結果、この2名の起訴と至ったと理解しているので、我々としては、この2名については行政処分ということで対応するということで考えたものである。
(問)今回調査した中で、個々にこういったかたちでハイヤー、タクシーチケット等を渡されたことをサミット準備事務局以前の時にこのように渡されたことがあったと答えた人間は誰もいないということでいいのか。
(飯村官房長)それはそういう風に理解している。
(問)この2人の生年月日等を後で配布していただけないか。
(飯村官房長)それでは後程お配りする。
(問)大臣から昨日決裁を受けたということだが、今日発表があったわけだが、しかし大臣は役所に来ていないようだが、どこで何をしているのか。
(飯村官房長)チェックすることなく、出てきたので承知していない。
(問)今日は連絡していないのか。
(飯村官房長)昨日の段階で今日発表させていただくということを申し上げたので、今日は特に本件で連絡はとっていない。
(問)松田、小林(秀彦)両氏が受領した額の125万円と90万円であるが、何を根拠に確定させた金額なのか。
(飯村官房長)これは当人の記憶である。
(問)当人はハイウェイカードが幾らぐらいとかは覚えていないのか。本人が言っているだけなのか、それを裏付ける書類等は残っていないのか。
(飯村官房長)覚えていないということである。書類は残っていない。
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