事務次官会見記録 (平成17年1月31日(月) 17:00~ 於:本省会見室)
イラク国民議会選挙の評価と我が国の支援
(事務次官)私から、昨1月30日に実施されたイラク国民議会選挙について申し上げます。ご承知のように、あのような形で選挙が行われ、我々の目から見ると、イラクの民主化に向けた重要な一歩であり、治安など種々の困難があったにも拘わらず、暫定政府が、この選挙が出来る限り平穏に行われるように努力されたこと、あるいはまた、勇気を持って投票所に足を運んだイラク国民に敬意を表したいと思います。また、選挙の実施に関し、国連あるいは関係国、国際機関などが大変な努力をされたことについても評価したいと思います。これから、政治プロセスが進んでいきますが、憲法制定を始めとして、平和で民主的なイラクの国づくりに向けて、今度発足することになる国民議会が大きな役割を果たすことを期待しています。また我が国としても、いろいろな形で今回の選挙実施に協力して参りましたが、今後ともイラクの復興、国づくりといったものに出来る限りの支援を続けていきたいと思っています。
(問)今回の選挙では、スンニ派が大分投票をボイコットしたと伝えられていますが、今後イラクを安定させる上でもスンニ派の取り組みは大変重要になってくると思うのですが、それについての次官のお考えなり、外務省として外交ルートで働きかけていくことはあるのでしょうか。
(事務次官)スンニ派については、事前の世論調査では相当低い投票率というところもありましたが、今、集計中であるようですが、そういったところが予想していたよりは投票率も若干高めだったと聞いています。これについては、今、イラク独立選挙管理委員会が現在集計中ですので、結果を見たいと思います。これから選出された国民議会が、大統領、副大統領を選出し、所謂大統領評議会というものを選定することになります。その大統領評議会が首相を指名し、内閣を作るということになりますが、組閣に際してはスンニ派に対しても配慮が行われるのではないかと期待しています。今回、投票したくても投票できなかったスンニ派の人達が相当いると思います。あのような治安状況でなかなか投票が難しかっただろうと思います。今言ったような配慮が行われて、正当に政治プロセスの中にスンニ派の意見が反映されるようになっていくことが、民主的なイラクという観点からは重要なポイントになってくるのではないかと見ています。
(問)配慮されるのではないかという感触はあるのでしょうか。
(事務次官)私個人の感触を申し上げた方がいいかもしれませんが、そういう配慮はされるのではないかと期待し、且つそういう風に思っています。
(問)重ねて伺いますが、具体的にこれから日本政府はどのように関与していくのでしょうか。
(事務次官)これから成立するイラクの指導部と言いますかリーダーシップとは、いろいろな形で意見交換がされる場もこれからもあると思います。その時に、イラク人による国づくりについての意見交換もあると思いますが、それと同時に民主的なイラクを造るためのプロセスについて、相互に意見を述べ合うという場面はこれからもあると思います。
(問)選挙当日は武装勢力によるテロも相次ぎましたが、今後の治安情勢というのは自衛隊の人道復興支援にも影響するかと思うのですが、治安情勢について次官はどうお考えですか。
(事務次官)今回の選挙によってどれだけより正統性を持った政府ができるのか、確立するのかということについて、イラク国民がどのように判断するのかというのが大きな要素になってくるとおもいます。選挙にはもちろんいろいろ問題はありましたが、基本的には公平に行われ、民主的なプロセスを経たとイラク国民が判断すれば、それを武装勢力がいろいろな形で暴力的な行動を行うということについて、イラク国民の支持が与えられないということになってくるのではないかと思います。そこのところは、基本的にはイラク国民が判断し、またそれによってどういう見通しになってくるのかということではないかと思います。
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マイケル・グリーン米NSCアジア担当上級部長の表敬
(問)マイケル・グリーン氏とお会いになられましたが、どのような意見交換がありましたか。
(事務次官)第二期のブッシュ政権が成立し、マイケル・グリーンNSCアジア担当上級部長は、これからも日米関係のために重要な役割を担っていかれるわけです。グリーン部長とは、日米関係をこれからも堅固なものにしていく必要があるということを前提として、イラク、北朝鮮、国連改革などの重要な問題について、ざっくばらんに意見交換を行いました。個々の詳細については、役人同士の会話ですので控えさせていただきたいと思います。
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事務次官会見記録 (平成17年1月24日(月)17:15~ 於:本省会見室)
「日韓友情年2005」オープニング行事
イラクへの渡航
(事務次官)私の方から2点申し上げます。まず、「日韓友情年2005」オープニング行事への小泉総理及び盧武鉉大統領の出席についてです。今年は日韓国交正常化40周年を記念した「日韓友情年2005」にあたりますが、明日25日に東京で開催されるグランド・オープニングをもって、「友情年」が正式に開幕いたします。25日のグランド・オープニングは、午後4時から式典と催し物が行われ、谷川副大臣が出席されます。また、午後7時からレセプションが開催され、こちらには、小泉総理、細田官房長官、町村大臣、谷川副大臣、平山郁夫「日韓友情年20 05」実行委員長ほかが出席されます。また、27日には、ソウルにおいてもオープニングが行われ、日韓両国のアーティストによる公演等が行われます。韓国側からは、盧武鉉大統領ほか、日本側からは、森前総理、谷川副大臣、平山郁夫委員長ほかが出席されます。
二点目は、イラクへの渡航についてです。イラクにおいては、1月30日に予定されている国民議会選挙を間近に控え、イラク各地において同選挙を妨害しようとする動きが活発化しています。現に、これまでも武装勢力による攻撃が相次いで発生していますが、同選挙の期日が近づくにつれ、武装勢力の活動は更に激しさを増す危険性があります。外務省においては、平成15年2月14日以来、イラク全土に対して「退避勧告」の危険情報を継続的に発出し、また同年から現在までに計76回にわたりスポット情報を発出して、イラクへの渡航はどのような目的であれ見合わせるよう、また、イラクに滞在している方については、安全な方法で直ちに退避するよう促してきています。現在のイラクにおいては、外国人・イラク人であるかを問わず襲撃・誘拐される事案が多発していますが、特に邦人を含む外国人は、その存在が武装勢力に知られた場合、計画的に、巧妙かつ強硬な手口で誘拐される危険性が大きいと思います。改めて、イラクからの退避及びイラクへの入国を見合わせることを強くお願いします。また、従来から皆様に、イラク国民議会選挙に向けたイラク入国を差し控えていただくようお願いしていますが、この場を借り、この点につき重ねてお願いいたします。
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スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害へのこれまでの対応の評価と今後の支援
(問)スマトラ沖地震から一ヶ月になりますが、今までの日本政府の対応の評価と、今後、中・長期的にどうやってこの問題に対処していくかという考え方を聞かせてください。
(事務次官)これまで日本は資金あるいは知見その他の貢献において多大なものがあったということ、且つまたそれが非常に迅速に行われたということで、日本国民もそうですが、各国からも非常に高い評価を得ているように思います。特に財政的な面においては、日本が早い段階から相当の額をコミット(表明)したということは各国にもいい意味での刺激になったのではないかと思っています。また、陸上自衛隊もアチェの沖合に到着して、いよいよ医療・防疫、その他の活動を行いますが、これもまたインドネシア政府からの要請に基づいたものであり、また大きな働きが期待されているわけです。これからも、そういったこれまでの活動を、さらにできる限り現地のニーズに合わせた形で活発化したいと思います。今まではどちらかというと緊急の人道的な支援が中心でしたが、これからは更に復興ということで、被害を受けた国、あるいは地域において健全な社会生活が営めるように、各国政府は全般的には責任を持つわけですが、我が国としても国際的な協調を更に強めつつ、我が国としてできることを更に行っていきたいと思います。この点については、NGOあるいは地方公共団体、国民の皆様も、災害についてはいろいろと悲しい経験も持ち、また一生懸命がんばってきた経験も持っている日本としてやるべきであるというご支持をいただいていると考えています。
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日朝関係(今後の対応)
(問)北朝鮮拉致被害者の再調査に対し抗議をしてから一ヶ月になりますが、現状と今後の取り組みについて改めてお聞かせください。
(事務次官)ご指摘の通り、昨年12月25日に我々としては第3回実務者協議で北朝鮮から受けた説明、あるいは資料に多くの虚偽のものを含んでいることから、厳しい抗議も行い、その真相を明らかにすることと同時に、生存者を一刻も早く帰国させるようにということを非常に強く申し入れ、またその対応如何によっては日本側としても厳しい対応を取らざるを得ない状況にあるということは申し入れてあるわけです。その後、(北朝鮮の)外務省のスポークスマンによる声明等々、間接的な反応はありますが、我が方の正式なルートを通じる申し入れに対応する形での正式な回答はありません。我々としては迅速且つ納得のいく対応をしてもらいたいという気持ちには変わりありません。他方、こういった状況がいつまでも続いてはいけないことだと思います。我々としては未だにそういった正式な回答がないことについて極めて遺憾に思いますが、こういった状況が続くのであれば厳しい対応をやがて採らざるを得ない状況になるのではないかと思います。北朝鮮側には、是非我々が述べているように、もはや迅速とも言えないような状況になっていると思いますが、我が方の納得のいく対応をしてもらいたいと思います。一ヶ月が経ったら、もうその決断の時だというふうには思っていません。前にも述べたように、生存者をいかにして帰国させるか、如何なる手段をもってそのことを実現するか。基本は「対話と圧力」ということで従来からやってきていますが、その方針は維持しつつ、こちらもその対応ぶりを更に真剣に考えていかなくてはならない状況にあると思います。
(問)次官が述べられたように、公式回答がない状況が続いているわけですが、その理由について外務省ではどう分析されているのでしょうか。またその公式回答のためと言っては変ですが、どういう取り組み、努力を今されているのでしょうか。
(事務次官)今、全くコミュニケーションが取れない状況が続いていますので、分析も何も、先方が何を考えているのかということは、先ほど述べたような声明等から推測せざるを得ない状況だろうと思います。いろいろと北朝鮮は北朝鮮で、横田めぐみさんの遺骨とされるものが科学的に偽物であったということがわかったことを踏まえて、これは象徴的だと思いますが、どう対応するかというのは北朝鮮なりにいろいろと考えているところではないか、あるいは十分に北朝鮮として各部署で連絡を取り合って出した結果ではないかもしれない、そのあたりを検討している面もあるいはあるのかもしれません。ただ、今申し上げたように、その点は推測に過ぎないわけです。今後どうするかというのは、本来、「対話と圧力」ということで考えてきていますので、基本はそういうことですが、こういった状況がいつまでも続いていけば、元々述べているように、それが我が方として納得のいく対応ではとてもないわけですから、厳しい対応を採らざるを得なくなるという時がやがてはくるのではないかと思っています。申し上げたように、厳しい対応を採るということが、いろいろなことが考えられるかと思いますが、ともかく生存者の帰国を実現するというところをどのように確保するかということが、我々として一番頭を悩ませている、知恵をしぼっているところです。相手があることで、しかも我々から見れば人質でも取られたような形になっているという極めて遺憾な状況ですが、今考えているところです。
(問)次官として納得のいく対応というのは、具体的なイメージはどういうものですか。生存者が帰国までしなければ納得いかないということなのでしょうか。
(事務次官)生存者がすべて明らかにされて、その方々が早く帰ってこられるということになると、これは我々としては納得のいく対応であるということははっきりしているわけです。従って、それをやってくださいということを今言っているわけです。
(問)「いつまでもこういう状況が続いては」ということですが、目処はどれくらいの期間ですか。
(事務次官)期限としてどうのこうのというのは、今はまだ申し上げる段階にはないと思います。いずれにしてもコミュニケーションそのものが取れていない状況なので、少なくともそれは早くやってもらわないと、従来から申し上げているように、いつまでも待つわけにはいかないということになるのだろうと思います。対話すら今、実現していないということですから。
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北京日本人学校への脱北者
(問)北京で脱北者がまた駆け込んで、昨年から相次いでいるわけですが、国内にはその脱北者を支援すべきだという意見がある一方で、中国政府は支援しないようにと言っているようですけれども、日本政府としては今後こうした問題にどのように対応していくのでしょうか。
(事務次官)この辺りは国連の人権委員会で特別報告者から近く報告書が出るようであり、脱北者の人権、人道的な側面について強い意見が出るようです。こういったことを考えていかなければいけないと思いますが、私どもとしては、脱北者の方々それぞれにいろいろな事情があると思いますが、いずれの国でも幸せに暮らせる人たちが死を賭して逃げ出すということは普通考えられないことであり、あのような状況に追い込まれた方々には人道的な観点から深い同情心は持っている訳です。他方、日本人学校という日本人の子弟が通う学校ですから、その学校は学生としての本来の機能を持っている訳です。本日、学校長のステートメントが出たようですが、そういった学校の本来持っている機能が妨げられるようなことがあっては、これはこれとして困ったことだと思いますが、基本は、我々としてはこうした方々への人道的な観点に立って、暖かい気持ちを持ってその人達の将来を考えてあげる必要があると思います。ただ、これは現地のいろいろな事情があると思いますので、その点も踏まえて考えていかなければいけないと思います。
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愛知万博期間中の査証免除
(問)愛知万博の関係で、観客を増やそうということもあって、台湾及び韓国についてはビザ免除を、この期間中、日本政府として公表されてますが、先日も中国についても同じような扱いをして欲しいとの要望が出ていたようですが、これについては今はまだそのような方針は執っていない訳ですが、その御説明と対応をお願いします。
(事務次官)韓国、台湾については、既に公表もされていると思いますのでご存じだと思いますが、中国については、先般、国土交通大臣が中国に行かれて中国側と話をした訳で、その内容について私の方から「こうでした」というのは立場上如何なものかと思いますが、我々としても、少なくともこの万博の期間、中国から大勢の方に来訪頂くということは、いろいろな意味で大変意義のあることではないかと思います。そういう意味では少しでも門戸を開く形になることは良いことであると思っています。中国には中国のいろいろな立場もあるかも知れませんので、それを調整しながら双方にとって良い形にもっていった上で、そういった観光客がより増えるという形になることを実現したらどうかと思っています。まだ、これからいろいろ話をする必要があると思っています。
(問)中国人に対するビザ免除ということも可能性としては考えていらっしゃるということでしょうか。
(事務次官)今、状況はまだそこまではいっていないのではないかと思います。
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事務次官会見記録 (平成17年1月17日(月)17:15~ 於:本省会見室)
津波被害(ノン・プロジェクト無償交換公文署名)
(事務次官)我が国政府は、スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に関し、当面の支援としての総額5億ドルの支援のうち、インドネシア、スリランカ及びモルディブ政府に対し、直接、総額2億5千万ドル相当のノン・プロジェクト無償資金協力を行うことを既に表明しております。このための書簡の交換が、本日17日、インドネシア及びモルディブについては予定通り既に実施されました。また、スリランカについては本日現地時間16時、日本時間で19時に行われる予定です。本件支援については、今後できるだけ速やかに会計手続きを済ませ、20日頃にこの資金を全額先方政府に送金する予定です。
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韓国政府による日韓国交正常化関連文書の一部公開
(問)韓国が日韓国交正常化に関する文書を一部公開しましたが、この件に関して日本政府としてはどのような対応をとってきたのか、今回の公開について見解があればお聞かせいただきたい。
(事務次官)これは基本的には韓国政府が韓国の法律や規則に基づいて公表或いは公開されることであり、それはそれとして我々としては尊重していくということで対応してきました。
(問)今後、韓国政府は全面公開を求める方針であるそうですが、それを受けて日本政府はどのような対応をとっていくのでしょうか。
(事務次官)日本政府は日本政府として、30年ルール等もありますので、そのルールに基づいてどのようにするかということを、これからも検討していくということだと思います。
(問)30年ルールということですが、今後原則として日本政府も公開していくというお考えだということでしょうか。
(事務次官)30年(ルール)だけではなく、どういう時にどのようにするかという一応の判断基準はありますので、それに基づいて検討していき、公開できるものは公開するという考え方です。
(問)経済協力方針で、日朝の間でもその方針で進めていくということになっていると思うのですが、今回の公開が日朝交渉に与える影響についてはどうお考えですか。
(事務次官)日朝間で将来的にどのような取り扱いになるかというところは、日韓基本関係条約あるいは日韓請求権・経済協力協定というのでしょうか、その成果文書に基づいてすることであって、日韓間でいろいろ話し合われた内容そのものが日朝間に影響するとは理解していません。
(問)別物であると。
(事務次官)はい。
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日露外相会談
(問)ロシアとの外相会談の評価とそれを受けて今後どのように取り組んでいきますか。
(事務次官)今回の外相会談では、2月2日の「日露賢人会議」、2月末または3月始めの「貿易経済日露政府間委員会」の開催、3月前半のラブロフ外相の訪日が決められ、こういったプロセスの中でプーチン大統領の訪日日程が固まっていくのではないかと思います。今回の外相会談ではその辺りのところが、外相レベルで話し合われたということだと思います。これからそういった機会等を通じて、来たるべきプーチン大統領の訪日に備えるということだと思います。それと同時にプーチン大統領が来訪される時には、日露間では比較的よくあることですが、いわゆる成果文書、首脳会談で話し合われ、あるいはまた事務的に準備された文書を公表するということがありますので、そういった作業も同時に事務レベルで進められていくと考えています。
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趙紫陽元中国総書記の逝去
(問)中国の趙紫陽氏が逝去されましたが。日本ともゆかりのあった人物ですが、感想をお願いします。
(事務次官)趙紫陽元総書記は日中間の友好関係の増進に大きな役割を果たされた方で、いろいろな国内的な事情もあって、晩年はやや不遇の状況であったと思いますが、日中関係には大きな貢献をされた方だという理解をしつつ、ご逝去されたことには深い哀悼の意を表したいと思います。
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スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害(邦人の安否)
(問)津波で行方不明になっている方がまだたくさんいらっしゃいますが、確認作業についてどういった見通しなのでしょうか。
(事務次官)見通しはそれぞれの方によって違うことから、見通しを申し上げることはできませんが、今40数名の方がまだ確認されていないと思いますので、どういう状況になっているのかこれからも一生懸命詰めていくということであろうと思います。御家族の方ともよく連絡を取りながら、克明にやっていく必要があります。
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日朝関係(拉致被害者)
(問)日朝交渉についてお伺いしますが、新たに失踪者2名の方が拉致された可能性が高いという鑑定結果が出ましたけれど、この2名の方について今後外務省としてどういう対応をされていきますか。
(事務次官)写真をよく見せていただいた上で、基本的には警察も専門的な立場から精査されると思いますので、それを踏まえて政府内でよく話し合い、北朝鮮との関係でどうするかをこれから判断していくことになると思います。
(問)既に真相究明を求めている複数の特定失踪者の中にこの2名の方は入っているのでしょうか。
(事務次官)いろいろと北朝鮮側に既に話をしているのは、一般論も含めてあるわけです。ただし、個別の個人名については捜査との関係もありますので、個別には説明しないことと従来からなっていますので、御理解いただきたいと思います。
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新旧事務次官合同記者会見記録 (平成17年1月4日(火)18:15~ 於:本省会見室)
新旧次官挨拶
(竹内前次官)3年弱ですが霞クラブの皆様にはお世話になりました。心から御礼申し上げます。約3年前にこの同じ場所で次官就任の記者会見を行いましたが、その時に最優先課題として私が述べましたのは、言うまでもなく外務省改革でした。外務省改革については、省内、省外色々な議論を尽くして行動計画を策定し、又、機構改革についても制度としては実現しました。もちろん、改革というのは不断に実行していかねばならないものであるため、特に意識の面では常に改革の気持ちを失わないことがこれからも大切であると思います。その時も感じておりましたが、外務省改革にとって最終的に一番大事なことは日本の外交の力をつけるということです。具体的には、外交の構想力を強化すること、実施能力を高めること、更には広報・発信力を向上させること、この3つを意識してこれまで仕事をしてきました。時代は大きく変わっています。今、国際社会は色々な問題を抱えていますが、そのどれ一つをとっても容易に解決する問題ではありません。また、国際社会として、色々な問題を解決するための調整のメカニズム、解決の手法といったものについてもまだ成熟したものが出来上がっていないという構造的変化の最中にあると思います。そうした中で、日本としては、日米同盟と国際協調をわが国の国益のための戦略的な選択として外交を進めてきているのが現状だろうと思います。
大きく世界の中に存在する色々な問題を見ますと、皆様も日夜認識して頂けると思いますが、日本外交は世界中のあらゆる問題について関与しています。しかも、その外交的な努力、そのための国際協力の中の先頭グループに必ず入って取り組んでいることが言えると思います。これはなかなか容易なことではありませんが、日本の現在の国際社会における地位を考えると、日本の国益を増進させるためにも必要なことだろうと思います。日本は軍事大国にはなりませんし、また軍事大国ではありません。しかし、世界の中において、いわば世界の歴史の中でもユニークなシビリアン・パワーとしての国際社会における地位を占めていると思います。日本の友達、日本の味方は世界の色々な所にたくさんいます。我々がこの外交努力を今後とも続けていくためには、やはり構想力を豊かに持ってきちんとそれを実施して、また国民および世界各国の理解を得るための広報・発信力を強めていく日々の研鑽と努力が必要であろうと思います。私の後任に谷内次官を得ました。外務省事務当局全て一丸となって、新次官を支えて日本の外交のために努力、邁進してくれることを確信し、また期待しております。
(谷内新次官)皆様、明けましておめでとうございます。2年3ヶ月振りに外務省に戻って参りまして、午前中は省員の皆様に挨拶を申し上げたところです。只今、竹内前事務次官からこの3年間のいろいろな外交政策、その他外交姿勢の問題、改革問題について話がございました。私はそれを踏まえて、できるだけの努力を行い外務省員一丸となって日本外交のために頑張っていきたいと思います。一言だけ本日午前中に申し上げたことを紹介しますと、実は外務省には国益はあっても省益はない、ということです。外務省員は一外務官僚という視野ではなく、日本という国家の官僚として誇りを持って仕事をして頂きたい。それだけの素質を十分に持った人達がいるということを私は内閣官房に出向した経験からも大変良くわかりました。こうした誇りと自信を持って是非頑張って頂きたいし、一緒に皆で努力していきましょう、という風に申し上げました。これからどれ位の期間、この次官という仕事を務めるのかわかりませんが、皆様のご協力を頂いて、何とか日本の国益を国際公益と整合性のとれた形で追求できるように努力したいと思いますので、皆様も良い意味でのご協力もお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
(問)竹内前次官に質問ですが、一口で振り返るのは難しいと思いますが、3年間力を注いだ取り組み、印象に残っていること、あるいはやり残したことは何でしょうか。
(竹内次官)やり残したことや満足に行かなかったことはたくさんありますので、具体的にどうこう述べることはできません。仕事のやり方として、先程、私は外交の力を強める3つの面ということを述べました。特に省内でいろいろな政策について意見交換を行う、議論をするということを次官室でもよく行いました。若い事務官を含めて自由な議論から政策が練れていくと感じたからです。具体的な外交案件については先程述べたようにどれがどうというのはなかなか申せませんが、やはり心に非常に深く傷として残りましたのは、イラクにおいて我々の同僚の命を失ったことです。このことはやはりこれからの我々として忘れてることができない大きな事件であったし、また彼らの意を体した外交というものを進めていくことが省員にとって大事なことだろうという思いを禁じ得ません。他にイラク問題であり北朝鮮問題でありいろいろあります。先程、申しかけましたが、今の国際社会は、時代のうねりと申しますか、大変ないろいろな問題に直面しながらも、まだ国際秩序というものを明確に打ち立てるに至っていない、そういう意味では冷戦構造の終わった後の新しい構造がまだ出来上がっていない状況だろうと思います。そういった中で、いろいろ日本も含めて各国が国際秩序を目指して模索をしているという時代に、いろいろな問題に当たってきたということが私の述懐です。
(問)谷内次官に伺いたいのですが、午前中の引き継ぎ式の中で「攻めの外務省」という趣旨の表現を使われたと聞いているのですが、その意味するところは何でしょうか。
(谷内次官)過去4年間、一般的に公務員に対して非常に厳しい批判的雰囲気の中で、外務省が特に、いろいろな形があるでしょうが、外務省叩き、あるいは批判というものは非常に多く行われてきて、その過程で省員の中にはともすれば受け身、守り、あるいは責任回避、あるいは士気の低下というようなことも伴ったのではないかということで、竹内前次官以下の努力もあり、相当回復してきたと思いますが、内閣官房から見ているとともすればそういうものがまだ見受けられるということから、しかしながら外務省員は一生懸命歯を食いしばって頑張ってきて、もうそろそろ今言ったような消極的と言いますか、受け身の姿勢ではなくて、これからもっと先程の政策構想力といったものを十分発揮して、対外的にも発信し、かつ我々の立場というのを広報という形で十分に知っていただくということも含めて、積極的に働きかけていく。そういう外交をこれから更に進めていくべきではないかという意味で「攻めの外交」ということを述べました。
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対北朝鮮政策
(問)谷内次官に引き続きお伺いしますが、個別の課題がいくつもあるかと思いますが、まず北朝鮮に対する政策ですが、日本側が提示した証拠に対しても正式に回答してきていない、更には六者協議についてもまだ態度を表明をしていない北朝鮮に対してどう対応することで、世界的な対話の枠組みの中に出していこうとお考えですか。
(谷内次官)今ご質問の中にあったことのみならず、相当ネガティブな発言も、発言と言っていいのでしょうか、北朝鮮から漏れ聞こえてくるわけです。ではどうしたらいいのかということを考えているわけですが、問題が進捗がない時は我々は原点に帰って考えるべきであり、即ち、拉致、核、ミサイル、こういった諸問題を包括的に解決して、国交正常化を目指すという我が方の基本方針はあくまでも貫く。またそのためには「対話と圧力」ということで考えてきたわけで、このことを我々はもう一度考えてみる必要があります。ただ、今、北朝鮮のこれまでの限られた対応から見ていくと、これまでのように対話を重視し、本当に誠意を持って我々としては対応してきたつもりですが、それだけでは十分ではないのではないかという懸念が相当国民の間にも生まれてきているということです。我々としては早く北朝鮮側が、我々が示した精査結果について迅速かつ納得のいく形での反応を示してもらいたいと思っているわけです。まだ正式にそういった反応が見られていないというのが現状です。それを踏まえて、その反応の仕方如何によっては厳しい対応も辞さないというのは我々の基本的な考え方です。今、その北朝鮮の反応を待っているということと同時に、それとはまた別のこととして六者協議やいろいろなルートを通じて、早くこの六者協議に応じるようにということも同時に話しかけているということです。一つ誤解の無いように申し上げておきますが、包括的解決と言った場合に、全部を同時点で一緒にやらなければいけないということを意味するのではなくて、意味するのは拉致問題というのは人権人道にかかわる問題であり、なおかつ残された御家族の方々の中には相当高齢化が進んでいるということで、今特に我々としては人道上の観点からこの問題は核の問題に先立って、一日も早く解決してもらう必要があると思っているわけです。今そういう意味では非常に重要な場面に差し掛かっているという認識です。
(問)今、「一日も早く」と述べられましたが、自民党の中には「期限を設けて回答を迫るべきだ」という意見もありますが、そういった意見についてはどうでしょうか。
(谷内次官)その方法もかなり厳しい対応をすることもあり得るという点からいって、制裁というのもあり得るのではないか、あるいは制裁すべきだという議論もあって、制裁をする時にいきなりやるのではなくて、例えば「2カ月後にこれこれの事をしなければ、2カ月後に制裁をするぞ」というのはチョイスとして考えられるのではないか、その方が効果的ではないかという議論もあるわけです。他方、基本的立場ということからすれば、2カ月期限をつけて2カ月後に解決をすればいいという話ではなくて、例え期限をつけても一日も早く解決してもらわないと困るわけで、直ちに解決してもらいたいという基本的な立場と時限をつけるという話は矛盾する話ではないと思っています。ただ制裁を時限的に2カ月後にこれこれのことでやりますという段階には今はまだ至っていないと私は思っています。
(問)将来のチョイスとしては考えられるということなのでしょうか。
(谷内次官)我々は今いろいろなことを考えており、「対話と圧力」ということで考えてきていますから、その圧力の一環としてはいろいろなことを視野に収めているということです。
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日中関係
(問)日中関係で、今、首脳の相互往来が実現しないという状況ではあるのですが、これについてはどのような形で関係改善に向けて進めていくお考えでしょうか。
(谷内次官)日中関係というのは、世界の中でも日本にとって最も重要な関係の一つであると我々は考えているわけです。実体的に言いますと、日中の関係は決して悪くはなくて、特に経済を中心として驚くべきスピードで進展しているわけです。その中で首脳間の訪問ということが一つの要素として考えられているわけですが、いろいろな国際会議の場で現に日中首脳会談は行われているわけで、首都をお互いに訪問しなければ外交は成り立たないという関係にあるのではないと私は思っています。首脳のレベルで頻繁に話し合いが行われること自体は大変望ましいことだと思いますが、一つの形式だけに限る必要は必ずしも無いのではないかと思います。例えば、私も多少の貢献をしたかと自負していますが、日韓間においては、頻繁に週末にでも会うようにしようということで、現に話し合いが進んでいますし、去年は2回それが実現したわけですが、そういったことも日中関係でもあり得ないことではないだろうと思っています。中国の皆様とも話し合いを更に強化していきたいと思っています。
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