事務次官会見記録 (平成15年4月28日(月) 17:00~ 於:芝会見室)
北朝鮮問題
(問)北朝鮮問題での3カ国協議が終わりましたが、評価等いろいろ踏まえて、今度はこの結果を受けてどういうふうに北朝鮮に対応していこうと思っていらっしゃるのでしょうか。
(事務次官)北京における3カ国協議というのは、各国がおのおの基本的な立場を述べたということが大きな中心だったと思います。米国側から聞いていますのは、米国としては北朝鮮側に対して全ての核兵器開発計画の検証可能な、且つ不可逆的な撤廃が必要であるということを従来の基本的立場として申し入れたということです。また、御承知のことだろうと思いますが、日本と韓国の参加の必要性ということについても改めて申し入れを行ったということです。いろいろなやり取りがあったかどうかという点が取り沙汰されていますが、いずれにしても今回の北朝鮮の発言の全てにわたってこれを分析し評価をする、その意図も含めた分析と評価ということがまずは必要だということです。それは米国もそういう姿勢ですし、我々としても現在のところは同様の認識であるということです。いずれにしても平和的な解決ということについては、これを追求していくということに変わりはありません。日米韓が引き続き緊密な連携をして対応していくことにおいても変更はありません。北朝鮮が核兵器開発問題の解決が、北朝鮮自身にとって国際社会における地位、立場を改善するためにも必要であるということを認識するようこれからも努力を続けていこうと考えています。
(問)発言の詳細な分析は待つとしても、この3カ国協議を挟んだ最近の北朝鮮の情勢として、国際社会としても北朝鮮の核問題の早急な対応が迫られるような事態、例えば安保理で議論するとか、そういう状況になっているという認識でしょうか。それとも違いますでしょうか。
(事務次官)問題自体は、元々非常に重大な問題ですし、我々としてはそれを放置しておくとか、ゆっくりと落ち着いてという類のことではないと思います。それは国際社会としてきちんとした迅速な対応は求められると思います。しかしだからといって、拙速な対応ということはこれまた危険です。問題のきちんとした解決ということに何が一番いいかということにはいろいろ難しいところがありますので、分析と相談ということを日米韓で緊密にやって、対応方針を決めていきたいと思います。
(問)北京での3者協議についてなんですが、北朝鮮側から新しい寛大な提案があったということが言われていますが、その中身はどんなことなんですか。北朝鮮は、例えば核計画放棄の意思表示を行ったんですか。
(事務次官)会談の中身については、我々も米国からは聞いているところですし、報道されている北朝鮮のコメントというものありますが、具体的な中身については我々が申し上げる立場ではありません。我々はその会談に立ち会っていたわけではありませんし、それは、もし明らかにされるとすれば、当事者である北朝鮮、ないしはその会談に立ち会っていた出席者ということであろうと思います。いずれにしても、アメリカから聞いておりますところでは、我々としてもそうですが、北朝鮮からの提案があったということについて、更なる研究が必要だということです。先程申しましたように、全ての内容について分析をする必要があるということです。
(問)土曜日のブリーフィングの際に、そういった分析を受けて日米韓で早急に協議をする必要があろうというお話がありましたが、それが必ずしもTCOGとは一致しないというお話でしたが、それも含めて時期的なものあるいは目途については、今はどういうふうにお考えでしょうか。
(事務次官)出来るだけ早く、やはり日本、米国、韓国の間でそういう機会を持つということは有益であろうと思います。今、具体的にいつということが決まっているわけではありません。また、形式についてもTCOGという形があるのか、それとも先般のような非公式の局長級協議というのが適当なのか、場所はどこがいいのかといったようなことについては、これからまた相談していくところです。御承知のとおりジム・ケリー次官補自体、北京からソウル、東京を経てワシントンに、この週末着いたばかりですから、まだ米国の中での報告等の作業があろうかと思います。いずれにしても、我々としては先程申しましたような3カ国間の緊密な連携ということが重要であると思っておりますし、協議を設けるということについては基本的に日米韓の間で意見が一致していると考えて頂いて結構です。
(問)日本政府は、これまでいわゆるマルチでも、独自でも経済制裁等の圧力を高めていくのはまだ時期尚早であるという立場を堅持されてきましたが、今回の分析が終わった後でも、平和的解決を追求する立場からそういった方針には変更がないと受け止めてよろしいでしょうか。
(事務次官)先のことを全て完璧に予断を持つことは適当ではないと思いますが、いずれにせよ、繰り返しになりますが、とにかく分析して対応方針を3カ国で協議するというのが先決です。これは3者協議が始まる前にパウエル国務長官も言っていましたが、長いプロセスの始まりだと私も思います。従って、1回目の協議の際の先方の発言も、それは長いプロセスの始まりにおける言動ということかもしれません。いろいろな分析、評価ということが必要ですし、これはブッシュ大統領も言っていますが、あくまでも平和的、外交的解決ということを求めていくという点においては、それは現在も変わっていないと申し上げておきたいと思います。
(問)日米韓での協議の対象には、北朝鮮外務省が言っている提案にもどう対応するかということも含まれると理解してよろしいでしょうか。
(事務次官)それは当然そうでしょう。それを排除する必要は何もないと思います。
(問)その提案の中には、日本として何か具体的に対応を迫られるようなものというのは含まれていたりするのでしょうか。
(事務次官)それはまさに提案の中身につき、これから研究、分析をやる必要がある、そもそもそういう提案であるということで御理解頂きたい。そのうち北朝鮮の方から朝鮮中央通信を通じて明らかにされるかもしれませんが、私の方から今申し上げるというようなことではありません。
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川口外相の中東訪問
(問)中東訪問中の川口外相がパレスチナ自治政府のアラファト議長に会うことについて、イスラエル政府の方やアメリカのパウエル長官が難色を示しているという報道がありますが、そういう事実があるのかということと、川口外相がアラファト議長に表敬訪問する予定に関連してどうでしょうか。
(事務次官)パレスチナの状況というのは、御承知のとおりアブ・マーゼン次期首相ということで指名されているわけでして、今回、川口大臣はパレスチナを訪問するに当たって、このアブ・マーゼン次期首相と会談を行って、パレスチナの改革推進に対する支持を表明するということを非常に重視をしています。その際にアラファト議長にも表敬を行って、アラファト議長に対して次期首相への支持を要請する意向です。そういうことですので、アラファト議長に表敬を行うことについては、変更はありません。アメリカとの関係では、中東和平問題についても緊密な連絡を行っています。ロードマップの早期の公表・実施の重要性についても、日米間で完璧な意見の一致はあります。ただ、今御質問の、アラファト議長との会談等について、パウエル国務長官から、対談をしないようにという申し入れがあったかということについては、会談をするなといった申し入れはありません。いろいろな話し合いがありましたが、詳細なことは別としても、米国としてアブ・マーゼン氏を非常に強く支持しているということは周知の事実ですし、アラファト議長に対して一定の留保を持っているというのが米国の姿勢であるということも御承知のとおりですが、日本に対して会うなといった、そういう類の話はありません。
(問)パウエルさんとのいろいろな話があって、先日も大臣との電話会談の際にもあったのでしょうか。
(事務次官)その時も中東問題についての話がありました。
(問)会うなとは言わないけれども、アメリカとしてはアラファト氏というのは、というような否定的な見解があったというようなことですか。
(事務次官)そういうやり取りの詳細については申し上げることはありません。先程私が申しましたとおり、アラファト議長に対する一定の評価があり、またアブ・マーゼン氏に対する一定の評価がアメリカにもある。川口大臣は当初からアブ・マーゼン氏が首相として指導力を発揮するということを期待をしていますし、今回支持を表明することが非常に重要なことである。その過程においてアラファト議長に対してアブ・マーゼン氏に対する支持を求めるという態度で訪問するということになります。そういう態度については、もちろん米国も十分に理解をしています。
(問)パウエルさんの方にも伝えられたと。
(事務次官)はい。
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事務次官会見記録 (平成15年4月21日(月) 17:40~ 於会見室)
北朝鮮(国連人権委員会への報告書、米朝中協議)
(問)拉致問題についてなんですが、政府が国連の人権委員会に提出した回答について、被害者の家族の方々が安倍官房副長官の方に外務省の対応を批判されているのですが、これについて一連の経過と今後の対応についてちょっとお聞かせください。
(事務次官)御承知のとおり国連人権委員会の強制的失踪作業部会におきましては、一昨年、平成13年末に、北朝鮮側から十分な情報提供、回答が得られないため、審理を継続することは困難であるという決定がなされたことがありました。昨年の11月になり、外務省としては日朝首脳会談及び拉致問題に関する事実解明のための調査団の調査を踏まえ、更に御家族からの御要望もあり、御家族等の代理人として作業部会に出席しました。その11月の作業部会において安否が未確認の被害者に関する詳細な情報、これは約50ページですが、それを提出すると共に、作業部会に対して確認依頼を要請したことがありました。その結果、本年に入り、作業部会としても再び北朝鮮による日本人拉致問題を審理の対象として取り上げることを決定しまして、北朝鮮を含む関係国に対して関連情報の提供を要請したということです。この点について、作業部会から情報提供を要請された国の中には北朝鮮、イギリス、スペインと共に我が国も含まれていたわけですが、その当時、外務省としては昨年の11月に、先程申しました相当量の情報を作業部会に提出したことを踏まえ、所在確認に繋がるような新たな情報は特にないという判断で、その旨を作業部会に回答を行ったということがありました。他方、この点については北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律が制定されるといったこともありましたし、昨年11月以降、拉致問題を巡って一定の進展と申しますか、一定の動きもあったという指摘がなされてきたとろこです。外務省としては、拉致被害者家族支援室等と連絡を取りながら、これらの関連情報を取りまとめて、現在ジュネーブを訪問中の御家族が明22日の作業部会においてプレゼンテーションを行う際に、これらを作業部会に提出することとしているという状況です。尚、明日は同行している斎木参事官もプレゼンテーションを行う予定であり、その中で北朝鮮から提出されているコメントについての反論も行うことを考えているところです。
(問)そうしますと、先日の回答については不十分であったということを外務省としても認めているという形でしょうか。
(事務次官)詳細なところは、昨年の11月に既に情報を提出しているわけですが、その後の一連の動きについて十分に支援室等と御相談することなく処理したことについては至らないところがあったかと思います。今回のこの機会にまさに作業部会が開かれて、そこでプレゼンテーションが開かれるわけですので、その際に報告をするということで対処したいと考えているところです。
(問)先程、11月以降に拉致問題で一定の進展があったというふうに発言されましたが、一定の進展というのは具体的にはどういうことですか。
(事務次官)具体的には、先程申しましたように我が国において拉致被害者等に対する支援に関する法律が制定されたこともありましょうし、具体的な内容については取りまとめてジュネーブの方に連絡し、御家族の方々とも御相談をする必要があろうということで、中身については作業を行っているところです。
(問)内容について至らぬところがあったというお話ですが、何か担当者の処分とかそういうことというのは。
(事務次官)現在そいういうことは考えておりません。何れにせよ22日の作業部会においてきちんとしたプレゼンテーションを行えるようにということで、今作業しているということです。
(問)今度北京で行われる北朝鮮問題への米朝中の3カ国協議についてなんですが、この週末のワシントンでの日米韓の協議も踏まえてどういう点を期待されるか、あと、日本政府としてアメリカを通じてどういった主張をしていくことになるのかということについては如何でしょうか。
(事務次官)まずお尋ねには直接ありませんでしたが、この週末、北朝鮮の朝鮮中央通信に掲載された外務省のスポークスマンの談話について、いろいろな解釈がありました。御承知かと思いますが、本日の朝鮮通信社のホームページにその談話の記事が英文で掲載されておりますが、実はその英文というのは18日の朝鮮中央通信で配信された英文とは異なっていまして、一種の訂正と思われるようなことがなされています。正確な文言はホームページを御覧頂きたいと思いますが、趣旨としては再処理作業に向かって成功裡に進んでいるという表現になっています。この朝鮮通信社のホームページでそういう修正と思われることが行われていることをどう判断するかということも御質問の、今度の協議に取り組む北朝鮮の姿勢というものを示唆しているのかもしれないという可能性があろうと思って御紹介したわけです。何れにしても今度の北京における協議は、米中朝が北朝鮮の核問題の平和的解決に向けての重要な一歩となるであろうという観点から我々としてはこれを歓迎してきているわけです。今回の協議で一気に大きな合意に達するというものではないとは思いますが、これがこれからの前向きな、建設的なプロセスに繋がっていくようにすることが重要なことだろうと思っています。日本としても今度の協議の開催に至るまでにはいろいろな外交努力もしました。米国からもその点については評価が述べられていたところですが、今度の協議においても我々はその協議の模様について情報提供を受けて、いろいろ相談にも乗っていきたい、当然のことですが我々の立場も踏まえた交渉をしてもらいたい、話し合いをしてもらいたいと思っています。日本の立場といったものは、既に米国も十分これまでのいろいろな接触、協議で承知のことではありますし、そういうものを踏まえて協議に米国も臨むと考えています。とにかくこれまでなかなかその話し合いの場ができなかったという状況から、話し合いに向けての第一歩が踏み出されるということで、我々としてもこれを重視していきたいという状況です。
(問)確認ですが、協議は予定どおり23日から始まるということでよろしいですか。
(事務次官)まだ正式にそういう通報はありませんが、そうなるであろうと考えています。
(問)日本の懸念ということをお話にはなりましたが、問題の中心は核問題ということは承知していますが、例えば日本としての懸念がそういう拉致問題とか、あるいはノドンミサイルの問題とか、そういったことまで扱われるかどうかは協議の成り行き次第ということになりましょうか。
(事務次官)それは御承知のとおり中国が北朝鮮と話をして、この3者協議をセットするというに当たっては核問題の協議ということでセットされたのであろうと思います。ただ、朝鮮半島の問題ということについては、それは非常に広いいろいろな問題があることですので、当面、この協議では核問題が取り上げられることだろうと思います。しかし、我が国として日朝間の諸懸案といったものを解決することが我々の目標ですので、当然のことながら米国に対してもそういうことは改めて話をし、アメリカもそういう日本の立場、日本の説明も踏まえて協議に臨む、という話も先般あったということです。
(問)アメリカ側から協議の内容についていろいろ情報提供も受けたいし、相談も乗りたいという中で、北京の協議の後に、ケリーさんが日本に来て大臣なり次官なりと会うという予定はあるのでしょうか。
(事務次官)誰と会うかというのは、まだこれからです。ただ、帰途に短時間なりとも日本に立ち寄るということは期待しています。
(問)国連でのプレゼンテーションという場では、日本のそういった国内的対応以外、11月以降の北朝鮮の対応、どういう対応があったか、あるいはなかったか、松木さんの骨の問題とかそういったことについても述べられる。
(事務次官)それはまさに今、いろいろ、どういう形でプレゼンテーションをするか、情報を提供するかということを詰めているところです。当然、そういった問題も念頭にはあります。
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イラク復興支援
(問)先程のイラク問題の対策本部の中で、我が国のイラク復興支援についてというものが配られたのですが、この中で、自衛隊及び文民による協力について幅広い見地から種々の検討を進めるという一文があるのですが、これは新法についても含めて検討されていくという理解でよろしいでしょうか。
(事務次官)これからイラクにおける様々な支援を行っていく中で、自衛隊等による協力のあり方については、まだ今後のイラクにおける事態の推移とか、国際社会の動向ということを注視しながら、外務省もそうですが、内閣官房、防衛庁といった関係省庁との間で検討するということですので、具体的にこれからの方向付けについて、現在まだ申し上げる段階ではありません。
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SARS
(問)話は全く変わりますが、SARSなんですが、ちょっとまだ全然治まる気配はないのですが、被害は増えている状況で、外務省として北京大使館の方も業務を一部取り止めたりしているようですが、今後、日本人への予防というか感染について、外務省として考えていることがあるのかということと、中国がいきなり被害者、感染者、亡くなった方の数をにここにきて一気に物凄い数で公表しだしたということをどう受け止めていらっしゃいますか。
(事務次官)中国が国際的な基準というか国際社会が期待しているような行動、措置をとることは、当然我々としても期待し、また要望もしているところです。WHOが非常に精力的に中国にも働きかけているという状況であろうと思いますし、大げさに言えば世界の多くの国々が中国の措置に注目し、要望もしているという状況だろうと思います。中国においても政府の首脳から強い指令が出るに至ったという状況に来ているのだろうと思います。我々としては、WHOとの関係とか、中国の衛生当局との関係といったことでいろいろな働きかけもするし、情報収集もするということですし、邦人の保護という観点と、やはり近隣国の一つとして、いわば世界的な問題についての対応を日本としてもできることがあればやるべきだろうと思います。ただ、具体的な保健衛生上の措置ということになると、これは所管の官庁がありますので、そういうところと連携して国際的な対応にも遺漏なきを期する、抽象的ですがそういうところです。
(問)関連しますが、北京への渡航について危険情報は一番下の十分な注意というのが発出されていますが、昨日の公表を受けてこれを引き上げるという方向で検討に入っておられるようですが、これはいつぐらいを目途に引き上げるのでしょうか。
(事務次官)それは専門的ないろいろな分析作業が必要ですので、WHOとの連絡といったことを特に重視して、情報の収集に今、対応しているというところです。それは今の御質問の点についても検討の対象にはなっております。WHOと協議をしながらという状況と聞いています。
(問)疑似感染者に日本人が1人含まれているという情報がありますが、これについて外務省の方で北京大使館を通じて照会されているようですが、中国衛生局等から余り内容のある回答がないというふうに承っておりますが、その点については中国の対応をどう考えていらっしゃいますか。
(事務次官)疑似というので確定患者ではないという情報でありますが、その点も含めて大使館の方で鋭意確認中というのが現状です。
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事務次官会見記録 (平成15年4月14日(月) 17:00~ 於会見室)
イラク情勢
(問)先日、川口大臣がヨーロッパへ行かれて国連決議の必要性ということを大臣から働きかけられたのですが、合意できる分野では早期にというような方向で今後もこのような働きかけを各国になさっていくおつもりなんでしょうか。
(事務次官)今後のイラクの問題については国際社会全体として取り組む必要があると思います。当然、当面は人道支援であり復興支援であるということが大きな要素になろうと思いますし、将来の統治のあり方についても、国際社会はそれなりに関心を持っていると言えると思います。国連安保理決議との関連で申しますと、我々として明らかにしました復興支援についての5つの原則というのがありまして、その中に国連の十分な関与を通じてこれを進めていくことが望ましいと表明しているのは御承知のとおりです。話は基本のところに戻りますが、それではどうして国連の十分な関与が望ましいと我々は考えているか、またどうしてそのような言い方をしたかということになりますが、やはり、日本としても、主体的にこの問題に取り組んでいくそれなりの日本の国益ないしは中東の情勢に関する認識があるわけです。それはイラクという国が国家としての一体性を維持して復興を行っていくことが、引いては中東の平和と安定に資するであろう、必要なことであろう、という認識です。その根本のところは、中東の平和と安定が国際社会のためにもなるし、また日本の国益にもなるという認識があるわけです。その際にできるだけ多くの国々がこの復興に参画していくことが極めて望ましいわけです。そのためにはそういう条件、環境を整えることについて国際協力が行われるべきであるし、我が国としてもそういった国際協調の実現のための外交努力を行う必要があろう、こういうことが基本的な考え方です。そういうことを背景にして、国連の十分な関与を求めていくという場合に、それでは如何なる方法が、具体的に如何なるタイミングで、どういう形で実現できるかということについて、これは御承知のとおり現在、各国がいろいろ考え、協議をしているという段階にあるわけです。川口大臣のヨーロッパ訪問もそういったことを念頭において、また、そういう状況において各国と意見交換を行う、また、各国の考え方も伺う、我々の考えも伝える、そういう意見交換を通じて国際協調を達成していく、それによって安全保障理事会において見られた亀裂というものも修復していくことができれば、それは国連の権威回復にも繋がりますし、国際社会にとっても良かろう。こういうことですので、従って安保理決議をどのような内容で、どういうタイミングで、どう進めていくのかということは、日本だけで決められるわけではありません。各国とのいろいろな意見交換を踏まえて、我々の考えを練り上げていくということです。従って、今具体的にこういうタイミングで、こういう内容でということを特定して限定的に考えていくものということではなくて、これはまさに各国との相談によって話をまとめていこう、という状況です。
(問)お伺いしたいのは、合意できる範囲で早期にというスタンスを、今後各国と意見交換していかれる時に、維持された上でやっていくのか、それともそこは白紙に戻ってしまうのか、どちらでしょうか。
(事務次官)白紙には戻りません。それは各国ともできる限り早くということにおいて、その総論のところでは一致していると思います。ただ、できる限り早くという点について、又、中身についてはそれぞれの置かれた状況、これまでの経緯といったものがあろうと思います。大事なことは、基本に遡りまして、できるだけ多くの国が協調して復興に参画し得る状況を作るということですので、スピードが全てというわけではないというのが当初からの我々の考えでもあります。
(問)ORHAなり、イラクの暫定機構への要員なり顧問なりの派遣について、先週末にいろいろな方が発言されて、ぶれもあったりしたようなんですが、現段階で次官としてはどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)ORHAが、今イラクで起こっている状況において大きな役割を果たすということは、これは現実であり、且つ必要なことであろうとも思います。従って、ORHAというものについて、我々としては十分な関心を持ち、情報交換をするという体制は既にとっているわけです。それでは具体的にORHAというものがどういう形でどのように活動を広げていくか、現実に活動していくかということについては、先程の安保理決議の問題、国連の関与の問題と同様に、やはり考え方がまだ固まっていない部分があるわけです。我々の方からの顧問なりの要員の派遣といったことにつきましても、まさに今いろいろな情報も得つつ、検討しているということです。我々として大事なことは、やはりイラクの人道支援なり復興支援ができるだけ早く、且つできるだけ効率的、効果的に、また多くの国々の参加を得て実現する道筋を作ることです。そういった大所からの観点を踏まえて、日本としての積極的な関与というのはORHAとの関係でどのような形が一番いいのかを種々検討しているという段階です。
(問)日本のそういった場合を考える大筋として、要するに暫定政権ができるまでの暫定統治機構なり、あるいはきちんと復興支援をしていく組織に文民を出せる場合の基準として、法的問題は置いておいて、例えば組織があって、できるだけ国際性を持つべきであるとか、あるいは現地の治安状況とか、そういったことについてはどういうことを考えていらっしゃいますか。
(事務次官)いろいろな要素があると思います。ORHAの活動範囲というものもあれば、ORHAの性格というのもあるし、且つ現場における状況ということも判断せねばなりません。また、我々がORHAの活動に関与する場合の関与の仕方ということについて、どういう形態があり得るのかといったことも関係するわけです。現在のところ、何らかの前提を持って考えるというよりは、基本として積極的な復興への関与を行って、それが効果的な支援に繋がるという目標に沿って、どういう形があるか、どういうことがあり得るのかということを考えるということです。
(問)イラクの復興に絡んで米政府内からフセイン政権時代の対外債務の削減あるいは帳消しを求めている件、スノー財務長官やウォルフォウィッツ氏が言っていた関係でも、日本政府として、政権交代に伴う過去の債務の帳消しということがあり得るのか、一般論も含めて今の見解を伺いたいのですが。
(事務次官)まさに一般論ということから申しますと、政権が変わりましても国家としての債務といったものは承継される、当然国の債務としては残るというのが一般的な話です。ですから、そういった原則論とか法律論とかは別にして、新しいイラクの再生と言いますか、そういったことを念頭に置いてのいろいろな政策論議というのはあり得る話だろうと思います。ただ、私の理解しているところでは、スノー財務長官が述べたのも、債務の帳消しというような言葉は使っていなかったと思います。あの会議におきましても、パリ・クラブにおいて協議をすることが望ましいというラインだったと思います。債務の問題については、これも一般論ですが、パリ・クラブで話し合いをするというメカニズムがあります。先般、G7の財務当局としては、そういった国際的な多国間の協議で債務の問題を取り上げることが望ましいといったラインを表明されたのだろうと思います。従って、その場においてどういう結論が出るか、どういう流れになるかということについては、まだ方向性がはっきりと出されているわけではないと私は理解しています。
(問)また決議の話に戻って申し訳ありませんが、日本が具体的に復興支援を進めていこうということの決議のあるなし、必要性なんですが、あるとないとで、できることは変わるとお考えでしょうか。
(事務次官)これは以前から総理大臣も述べておられますが、現に安保理決議がなくても、おそらく今の御質問の背景には新法の問題というのもあるかと思いますが、新法がなくても現在のシステムでできる支援というのがあり得るわけです。現に今、現下の急務である人道支援に関しては国連の各種国際機関を通じた人道的な支援というのが強く望まれており、且つ日本としてもそれに協力してきているわけです。従って、これからもそういった面での支援活動はあり得るわけですし、安保理決議がないと何もできないという訳ではありません。安保理決議の重要性と申しますのは、先程言ったことに戻りますが、やはり一つは国際社会が広くイラクの問題について支援を行うということ、もう一つは武力行使の是非を巡って意見が分かれた安全保障理事会を舞台とする国際社会ができるだけ早くその関係を修復して、国際協調を再構築するということに最大の意味があると思います。
(問)日本のイラクの大使のことなんですが、フセイン政権が事実上崩壊した現状で、フセイン政権から任命されたイラク大使がどう扱われるのかということと、国連大使なんかは引き上げたりしていますが、現時点で日本の大使については何か状況を把握されていますでしょうか。
(事務次官)特段のことは聞いていません。個別にここにいる大使から何らかの動きがあるという話は聞いておりません。これまた一般論で、法律的な、且つ国際慣行という点からすれば、政権が変わったことによって直ちに在外にいる大使が大使としての地位とか特権免除といったものを、そのこと自体によって失うことはないということは言えるかと思います。しかしその後、具体的な政治の流れ、いろいろな動きがあるでしょうから、それなりの動きがあるということは、これも一般的に常に行われることです。特段、現在の駐日大使について何らかの動きがあるとは、私は聞いていません。
(問)日本政府としては暫定政権によって新しい人が任命されるまでは様子を見るということになりますか。
(事務次官)それはこれからの事態の推移を見たいと思います。我々としては国際慣行、国際法、ウィーン外交関係条約等もありますので、そういったことはもちろん念頭に置きつつ、適切に対応するということであろうと思います。
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北朝鮮情勢
(問)北朝鮮ですが、一昨日、北朝鮮が協議の枠組みにはこだわらないという発言をしたのと、昨日、ブッシュ大統領もその可能性が出てきたことに触れる発言をしていますが、日本政府としてこれをどう受け止めるかということと、多国間協議の実現の可能性が今どれぐらいになっているというふうに判断されるのか。
(事務次官)言うまでもありませんが、北朝鮮の核開発の問題については、日本も平和的な解決を望んでいるわけですし、全ての国が平和的解決を望んでいるという状況で、御指摘の北朝鮮外務省のスポークスマンの発言といったものには、我々は注目をしております。また、その発言が従来のラインよりも一定の柔軟性を持っているという判断、認識は有しております。従って、これが良いサインである、良い兆候である、即ち対話に向かって一歩進むということに繋がることを希望しているところです。引き続きアメリカ、中国、韓国等とは十分な連絡もしておりますし、また、我々としても北朝鮮側に対しては平和的解決の必要性、重要性といったことを引き続き示していくことが大事であろうと思います。見通しとして、楽観か悲観かというような断定的な見方は現段階ではすべきではないだろうと思っていますが、一定の期待感を持って見ているというところです。
(問)その北朝鮮の関連なんですが、北朝鮮側がそういう形で、対話の枠組みにはさしてこだわらないということを、今この時期に言ってきた理由というのはどんなものというふうに次官はお考えですか。
(事務次官)それはいろいろな見方があると思いますので、こうだという見方はすべきではないし、またできないと思います。北朝鮮に対して各国、我が国を含めいろいろな国が、周辺国は特にそうですが、それ以外の国も平和的解決ということを訴えて、また、多国間協議についての考え方を述べてきたというのが基本的には背景にあるのかもしれません。ただ、北朝鮮としては北朝鮮としての判断が、いろいろあの政権の中であるでしょうから、そこは種々の憶測、推測はできますが、これはというようなことは考えても言うべきではないと思います。
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事務次官会見記録 (平成15年4月7日(月) 17:00~ 於会見室)
イラク情勢
(事務次官)バグダッドにおいていろいろな事態が動いているようですが、今後復旧・復興といった課題が、本格化すると思います。
外務省におきましては、ご承知のとおり4月1日付で高橋文明イラク復興支援等調整担当大使を発令致しております。更に人道支援につきましては、これまでも国際機関等々から、いろいろ情報を得たり、協議をしています。国際機関を通じた人道支援については、我が国は既に503万ドルの拠出を決定し、発表していますが、国連からも追加的な緊急統一アピール(要請)が出てきているという状況にあり、更に試算・検討を行っている段階です。
このような状況に鑑みまして、本格的に復旧・復興支援に取り組むために、外務省におきまして、省内の各局から構成されますイラク復旧・復興支援タスクフォースというのを中東アフリカ局長の下に設置するものとしました。これは本日付けです。
そして、第1回の会合を茂木副大臣出席の下、本日行いました。このタスクフォースが担います事務ということですが、一つは我が国の対イラク復旧・復興支援の統括及び調整。二番目に国内関係省庁との連絡調整。三番目に諸外国との連絡調整。諸外国という場合には国際機関も含みます。四番目にNGOとの連携ということです。当然のことながら、復旧・復興の事務について、このタスクフォースだけで扱うというわけではありません。当然、経済協力局であるとか、国際社会協力部であるとか、そういったところが、個々の政策決定の中心になってもらいますが、今申しましたような事務に関しては、このタスクフォースで全体を見るという形になります。省内で高橋大使がそのタスクフォースの長になるわけですが、9つの部局から人をリストアップ致します。大部屋にみんなが集まるということではありません。それぞれの作業はそれぞれ所属するところで、そのオフィスで続けるわけですが、必要に応じて参集するということです。関係するのは局部としましては、中東アフリカ局、総合外交政策局、軍備管理・科学審議官組織、国際社会協力部、北米局、経済局、経済協力局、国際情報局、条約局といったところです。本日の会合におきましては、こういった所掌事務を確認するということと、それぞれの局がこれまでやっています作業状況について報告をするということでした。繰り返しになりますが、タスクフォースというのは省内での連絡調整といった全般的なところを見るというわけですので、個々の政策決定につきましては、例えば経済協力であれば、経済協力局が中心となって行うということに変わりはありません。横の連絡を良くして、全体を強化するということで、このようなタスクフォースを持ったわけです。
(問)今日の戦況をもって戦争の終結が視野に入ったというふうにお考えですか。
(事務次官)戦況については、現在進行形ですし、私も執務室でテレビをつけて、CNNを見たり、BBC、NHK、その他の放送局を見たりというようなことで注視しておりますが、特段何らかの公式の戦況についての判断を持っているわけではありません。ただ、印象としては、現在まさに行われている事態を見ますと事態は最終局面に近づいているのかなという感じはしますが、しかし、これは最後の最後まで見届けないと何とも申し上げられないところがあるという点があります。いずれにせよ戦況について公的な判断があるというわけではありません。
(問)午前中の茂木副大臣の会見以降、現地の邦人の動向、確認状況について変化はありましたでしょうか。
(事務次官)先程確かめて参りましたが、特に追加的なり、新しいものとして申し上げることはありません。とにかく現地との連絡は非常に困難を極めているという状況です。
(問)米国で戦後の暫定統治等について、いろいろな案が出ているようですけれども、これについての評価と、日本政府がどの段階で、どういう支援をこれに対して行うべきとお考えなのか教えていただきたい。
(事務次官)武力行使の後イラクのあり方については、いろいろな所で、いろいろな議論がなされているわけです。勿論武力行使の主導的な役割を果たしている米国が、その中で中心的な役といいますか、重い発言をしているということは事実だろうと思いますが、いろいろな考え方、いろいろな意見が開陳されて、協議が行われているという状況です。この協議の中に日本も入っているわけです。何か結果が出て、それに我々が支援するといったような受け身の姿勢というばかりではないわけです。我々のみならず国際社会におきまして基本的に一致しているのは、イラクの復興といった戦後の展開については、出来るだけ国際社会が関与していくという基本的なところはあるのだろうと思います。我々としましても、武力行使の前の段階から、イラクの問題というのは、「国際社会対イラク」という構図で考えるべきであるという基本的な立場を取っております。それは終始一貫し、現在も、それから今後につきましても、国際社会が出来るだけ努力して対応していくということが望ましいというふうに考えているわけです。戦後の復興についても、その考えが当てはまるということです。先日、外務大臣より5原則というのを明らかにしましたが、そこに我々としての考え方が込められています。また、国際的な場における、これは表に出る場もあれば、水面下の話し合いというのもありますが、今後、この5原則というものを踏まえて、日本としてもこの作業に参画していきたいと考えています。
(問)その作業に参画する場なんですが、これはどういうものをお考えなんでしょうか。例えば、アメリカの呼び掛けるものに日本も参加するということなんですか。
(事務次官)その場と言ってもいろいろなチャンネルないしは機会があるわけです。今、何か一堂に会する場があるわけではありません。私が申し上げるのは、例えば外務大臣がヨーロッパへ行って関係国と協議をするというのもありますし、アメリカのライス大統領補佐官がロシアを訪問するという場もありますし、まさに本日行われるブレア首相とブッシュ大統領の協議という場もあります。外交チャンネルを通じて、我が方の大使がそれぞれの任国で協議をするということもあります。今、そういったいろいろな機会を捉えて相談事が行われているという状況ですので、何か一つの国際会議をまとめて行うといったような状況にはまだありません。ただそういった作業を、いろいろなところで、いろいろな機会に行われているという場の中に、我が国も含めていろいろな国が入っているということです。
(問)先程のタスクフォースなんですが、各局からはどういうクラスの人たちが出るのかということが一つと、外務省改革の流れなどを考えると、ぶら下がる先としては総合外交政策局が自然なのかなという気がしたのですが、中東アフリカ局にした理由というのはどういうものなんでしょうか。
(事務次官)メンバーとしては、総括を高橋大使にやってもらい、各局は首席事務官クラスというのがタスクフォースの中身です。これはあくまでタスクフォースですから、先程、繰り返し言及しましたが、各局が各局として政策を立案して、例えばODAのこういう方式で、どういう支援をするかとかいったようなことは、経済協力局なら経済協力局がやるということになります。ただ、それを行う場合にもいろいろな横の繋がりということも必要ですので、タスクフォースで調整は行います。復興との関係では、タスクフォースは中東アフリカ局長の下になりますが、当然のことながら総合外交政策局長とか経済協力局長には関与してもらいます。私も大臣も関与します。全体の復旧、復興支援についての関与としては、やはり大臣、副大臣がいて、事務次官がいて、中東アフリカ局長、総合外交政策局長、経済協力局長といった者がいます。経済協力局長の下では経済協力の、それこそ有償資金協力課であったり、無償資金協力課であったり、技術協力課であったり、それぞれ専門家がいます。そういう専門家の活動というのをもちろん利用していく、活かしていくというシステムになります。なかなか分かりにくいかもしれませんが、イラクの今後の復興とか人道支援といった場合に、いろいろ複雑な多面的な要素があります。国際機関がやるものもあれば、二国間でやるものもあります。実施についても安全上の問題もあれば、法律的な問題で詰めなければいけないこともあります。他の国との援助の調整といったこともあります。従って、いろいろなところに目配りをして、縦割りではない効果的な作業を行う必要があります。更には、まだこれから始まることですから、いろいろな、まだ未知な問題が出てくるかと思いますので、タスクフォースで遺漏なきを期してもらうということです。
(問)「人間の盾」の関係なんですが、市街戦で相当危険な状況にあるのですが、それに対して外務省として何らかの対応はとられるのかという点と、大臣も前に何度かおっしゃっていますが、アメリカ側に所在等の情報は通知しているのか、この2点お伺いしたいのですが。
(事務次官)基本的に、「人間の盾」にというか、バグダッドに残っておられる方は、それぞれ非常に意志が強い方、信念を持っておられる方々です。我々としては当然、生命・安全の保護ということが責任であり、仕事ですので、今まであらゆる出来る限りのことを尽くしてきていますし、これからもその点には変わりはありません。今までも申していますように、非常にそれが客観的な状況として、我々として満足な仕事が出来ないという状況が続いてきているということも認識せざるを得ませんし、また御理解も得なければいけないと思います。現在連絡すら取れないという状況ですので、非常に気がかり、懸念は持っています。ここで出来ることというのは、率直に申し上げて限界はありますが、引き続き出来るだけのことはする。まずは所在の安否を確かめることから必要だろうと思っています。今のところ、特段、何か被害があったという情報は、ありません。心配をし過ぎるというのも良くないかと思っていますが、我々としては出来るだけのことをするということを申し上げる以外ないというのが現在のところです。
(問)日本のアメリカ側への通報については。
(事務次官)アメリカとはそれなりの連絡等は従来からやっています。ただ、戦闘ですから、だからといって我々が安全を保障できるということではありません。とは言うものの、一般論ですが、米国の軍事行動が極めて軍事目標主義ということを厳格に行っているように見受けられます。これも復興支援との問題とも将来かかわってくると思いますが、例えば経済的なインフラスラクチャーに対する攻撃といったものは控えるというか、敢えて避けるという軍事目標主義を、非常に厳格に守った作戦を立てているように見えます。だからと言ってそれが発電所や浄水場が安全かというと、必ずしもそうではないと思います。
(問)先程、復興に対して、国際社会の範囲と言われましたが、これは、国連を通じた関与ということは前提としていないということでしょうか。
(事務次官)それはいろいろなことがあり得ると思うのです。大事なことは出来るだけ多くの国、多くの国際機関がイラクの再生のために貢献しうる状況というのが望ましいのだろうと思います。具体的に、国連決議なのか、どういうことなのかという点については、先程申しましたような状況でいろいろな話し合いが現在も行われているし、これからも急速に行われることになるだろうということです。今、何か明確なビジョンに向かって直ちに収斂するということではなく、現在の時点ではそういうところに向けての努力が行われているということであろうと思います。復興支援とか何かを論ずる場合、観念的な議論ではなく、実際上どういうことが必要かということも見据える必要があると思います。例えば難民に対する救済といった問題について、国連の難民関係の機関が何万人発生するだろうといったような見通しもたてて、それで国際社会にアピールをしてきているわけです。我が国のみならず、他の各国も、それに対する自国なりの拠出を行ってきているということですが、現在までのところは現実に国際機関が予想した難民と同程度の人数の難民が発生しているということではないわけです。従って、現実のニーズというか、現場では何が起こりつつあるかということについての見通し、判断ということもしていかなければならないと思います。人道的な支援について、日本政府が難民の数を見誤ったという記事もありますが、それはそうではなくて、国際社会として前提を作って、それで協力をしていきましょうということで、国際社会全体がそういう作業をしてきているということだろうと思います。復興支援についても、今申しましたように、インフラスラクチャーに対する被害がそれ程生じないで戦闘が終わるということがあれば、それが非常に好ましいわけですし、そうあってほしいと思うわけです。もし被害が少ないということであれば、復興についても大規模な、改めて国家を再建するというような規模のものである必要もないという状況もあり得ると思います。我々としても、実際の現実のニーズがどうなるかということについて、先見性を持つ必要はありますが、現実の見通しを踏まえて、考えていく必要があろうと思います。
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