事務次官会見記録 (平成15年2月24日(月) 17:00~ 於:会見室)
イラク問題
(問)イラクの問題ですが、総理とパウエル長官の、それから外務大臣会談等ありましたが、アメリカが今後、新決議をどういう内容でどういうタイミングで出していくかということについて、今の段階でどういうふうに把握されていますでしょうか。
(次官)パウエル長官は記者会見でも自ら話していましたが、今週の早い段階で決議案の提示を行うということを言っていました。これは御承知のとおりです。どういう形で提示されるのかということについては、いつ、具体的に提示されるのかということと共に、私は承知しておりませんが、いろいろ協議を関係国との間で行っていくという作業が行われているところであろうと思います。これから決議案の提示を待って、我々としても研究をする必要があろうかと思います。
(問)決議案が出された段階で日本政府として何かコメントされるということになるのかということと、非常任理事国への働き掛けというのは、決議案を出された後も引き続き行っていくことになるのでしょうか。
(次官)何かコメントするかどうかということについては、まさに決議案がどういう形で表れてくるかということにもよりますので、今ここでこうだということは、現実にも、物理的にも言えないところは御了解をいただきたいと思います。我が国政府としての安保理決議についての考え方ということについては従来から申し上げているとおりです。最も重要なことは、大量破壊兵器の問題という、国際社会にとって極めて深刻かつ重大な問題について、国際社会が協調して対処していくということが現在求められており、その中で国際連合の安全保障理事会が平和と安全に一義的な責任を持っているということを踏まえて、明確な対応をするということを我々としては期待しているわけです。この問題の平和的な解決のためにも国際社会が一致団結してイラクに武装解除を求めるという断固とした姿勢を明確にするということが必要であろうと思います。そういう考えから安保理決議というものが望ましいと考えているわけです。働き掛け云々ということについては、現在まで、今申しましたような考え方に基づいて安保理のメンバーの国々の政府と話し合いを行ってきているところです。安保理決議の採択が望ましいという今申しましたような基本的な判断に従って、我々としての具体的な対応を決めていくということです。決議の内容を見た上で、どういうことができるかということを判断していくことになります。
(問)昨日のパウエルさんの会見で、決議案を出した場合には、日本としても安保理の理事国に働き掛けをしてほしいというような期待の表明がありましたが、これは土曜日の会談でも同じような要請はあったのでしょうか。
(次官)土曜日の会談においては、大まかな趣旨を申しますと、今申しましたような、国際社会が協調して最後まで努力をすることが重要であるという文脈の中で、安保理決議が望ましいと考えている我々の立場は改めて伝えたということです。まさに国際協調ということを大事にして安全保障理事会がその責任を全うする、安全保障理事会がきちんとした対応をするということが望ましいという観点から、パウエル長官からも、日本としても国連安保理事会が決議を採択するようにいろいろな協力、外交努力というものを期待する、こういう趣旨の話があったと私は理解しています。
(問)先週の記者会見で、東アジアの安全保障の環境等を考えればイラクの問題は日本にとっても無関係ではないというふうに会見でおっしゃいましたが、どういうふうに、イラクの問題と東アジアの安全保障が関係するのかというところを、もう少し詳しく御説明ください。
(次官)それは、もう皆様御存じのことではないでしょうか。前にも申しましたが、やはり冷戦後の国際社会において大量破壊兵器の問題というのは極めて重大です。湾岸戦争の停戦決議において、大量破壊兵器の問題が取り上げられたということは決して偶然ではなく、国際社会の認識、現実の認識というものを表したものです。世界のいろいろなところで大量破壊兵器の問題というのがあり得るわけですが、我が国が位置しているこの地域、東アジア、北東アジア地域においても、大量破壊兵器の問題はあるわけですから、イラクの問題は遠い地球の彼方の問題ではなく、グローバルな問題であって、地域的な問題ではないという趣旨を申し上げたわけです。
(問)土曜日の会談の話にまた戻りますが、冒頭で日米同盟の重要性というのを確認されて、イラク、北朝鮮問題に当たっていく、北朝鮮問題については割とイメージが沸きやすいのですが、イラク問題における日米同盟の重要性というものについて、次官はどういうふうにお考えでしょうか。
(次官)日米同盟というのは別に限られた範囲の概念ではないと思います。それは同盟と言う以上はいろいろな国際問題について意見を交換し、意見が違うところもありますが、まさに同盟関係として意見を言い合ったりするという関係だろと思いますので、単に軍事問題、政治問題に止まらず、国際社会が抱えているいろいろな問題、経済であったり、貧困の問題であったり、社会的な問題であったりということにも及ぶわけです。イラクの問題についても同盟国として緊密に意見交換をし、連携もすることもあるというのは、それは、その限りにおいては北朝鮮の問題であろうが、アジアの問題であろうが、同盟関係というコンテキストでは同じ概念の下で考えるべきだと思います。
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北朝鮮
(問)北朝鮮の核問題について、パウエル長官が記者会見で、常任理事国に何カ国かを交えたマルチな枠組みでの話し合いを模索したいという趣旨のことをおっしゃいましたが、これについて日本政府の立場をお聞かせください。
(次官)まさに大量破壊兵器の問題は、国際社会全体にとっての問題であるというのが基本的な出発点だろうと思います。北朝鮮の問題についても同じような問題意識で国際社会が取り組むということが必要であるという認識が今の米国政府の基本的な考えであろうと思います。それでは具体的に、如何なるマルチの場で対応していくかということになりますと、それはまだ定まった考え方があるというわけではないということになります。マルチと言いますと、例えばIAEA、安全保障理事会というのもまさにマルチの場です。また、いわゆるP5+5といったようなアイデアというのもあります。これは具体的にどういう形で行われるかというのは、例えば北朝鮮の考え方もありましょうし、具体的にどのような形が探求され、それが果たして実現していくかどうかということについては、まだまだこれからアイデアを出し合う、知恵を出し合うということが必要というのが現段階であろうと思います。何れにしても、問題は現在IAEAから安全保障理事会の方に報告されている、マルチの場に報告されているというのも、一つの事実でありまして、その意味では既にマルチの場に問題は置かれているということが言えると思います。
(問)北朝鮮を巡る情勢ですが、パウエルさんは食糧支援についても前向きな話をされていますが、日本政府は一方、現段階では難しいというふうにおっしゃっていて、やや考え方に差があるように見えるのですが、パウエルさんの発言を受けて食糧支援の問題について、再度検討されるおつもりはありますか。
(次官)米国の食糧支援について現段階での考え方というのが、パウエル長官から記者会見で示されたと承知しております。米国は従来から食糧援助という人道的な措置というのは、核兵器の問題とは別に考えるべきだという態度を示してきたわけです。国連の方でも食糧援助等について、いろいろ考え方があるようです。それはそれとして、日本政府の考え方というのは、基本的には人道問題というのは、それはそれとして考えるという一般的な立場はありますが、現在の日朝関係においては、そういうことを進めるような環境、雰囲気はないというのが現在の状況であろうと考えています。これは別に、この点について日本とアメリカとが異なることを行うからといって、核兵器の問題について日本とアメリカの間で考え方が違うとか、立場が違うとかいうことではない、そういうふうに考える必要は毛頭無いと思います。
(問)先程の5+5の話を含めてなんですが、アメリカ政府がこの問題をアメリカなりに進めるいろいろなプランを出している中で、日本側から提案というものが余り、そういう具体的なものは見えてこない状況はありますが、何か今後展開をお考えになっていますか。
(次官)いろいろな検討はしております。5+5というものも一つのアイデアだろうと思いますし、それについても日米間ではいろいろな意見交換はやっております。しかし、具体的なアイデアについて申し上げるというのは、これは今の段階では適当ではないと思います。
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脱北者
(問)脱北者ですが、4人の方が日本大使館、日本人親子と見られる2人が瀋陽の総領事館、それぞれ保護下にありますが、その後、状況に進展はありましたか。また、今後の見通しについてお伺いしたいのですが。
(次官)特段、昨日今日で変化があったということはありません。瀋陽の総領事館において保護したお2人の方については、まだ必要な事情聴取を行っているというところです。御本人たちは元気そうであるという報告を受けていますし、念のために健康チェックも行いました。お疲れのようですが、いろいろな精神的な負担もあるでしょうから、総領事館の方で配慮もしていると聞いています。また、中国側に対しては瀋陽総領事館において、この2名を保護したという連絡を行いました。4名の脱北者と思われる方々については、引き続き大使館において保護し、必要な事情聴取を行っております。この方々には大使館員が常に付き添っていますが、健康状態は良好ということです。中国政府に対しても事実関係を通報し、今後のあり得べき協力について要請を行っているところです。4名とも落ち着いた様子で過ごされていると聞いております。
(問)4人の方について、出国先の意向については最終的な確定はあったのでしょうか。
(次官)現在まだありません。いろいろ事情聴取を行っているという段階です。
(問)瀋陽のお二人ですが、身元は確認されたのでしょうか。
(次官)まさにその点を含めて、今、事情聴取を行い、いろいろな調査を行っているという段階です。
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事務次官会見記録 (平成15年2月17日(月) 17:00~ 於:会見室)
イラク問題
(問)週末にジュネーブでUNHCR主催の、イラク周辺国の万一の場合の支援策についての会合があったようですが、日本としてどういうふうに、参加してくれと言われたのか、あるいは今どう考えているのか。
(次官)私の記憶が正しければ、スイス政府の主催だったと思いますが、それとは別に国連機関の方で、今日の夕刊にも出ていますが、仮に万策尽きて武力行使という事態になった場合のいろいろな人道的な面での手当てということについての検討は、国際機関の人道的な見地から続けられていると承知しています。我々として具体的な対応を決めたということではありませんが、ただ、これも従来から国会等で申し上げておりますが、我々として難民に対する支援とか、人道的な支援については万一の場合を考えて検討していかなければならないという立場です。
(問)18日に国連の安保理でオープンミーティングがあって、おそらく日本政府もイラク問題についての基本的な立場を表明することになろうかと思うのですが、その中で新決議、新たな安保理決議の採択が望ましいといった部分も表明されることになるのでしょうか。
(次官)18日の演説は原口大使から行われる予定ですが、発言内容についてこの段階で申し上げるのは適当でないと思います。ただ、今考えられるのは、従来から日本政府が取っている立場を踏まえた発言になるということで作業が行われているということです。
(問)14日の安保理の方がああいう格好で終わったわけですが、それを受けて日本として今後新たに更にどういうふうな努力をされるおつもりなのか、新たな追加的なものをお考えなのであれば教えて頂ければと思いますが。
(次官)14日のブリックス委員長等の報告を受けての安保理審議についての日本政府の考え方は外務大臣談話で示してきたとおりであります。また本日の国会等で外務大臣から説明もなされているところですので、特に付け加えることはありません。ただ、この機会に私の個人的な考えも含めて申し上げたいと思います。何と言っても冷戦後の国際社会に於いて大量破壊兵器の問題が非常に重大な問題になってきたという流れがあろうと思います。冷戦時代は大量破壊兵器というのは、米国、ソ連によってほぼ独占されているという状況でしたし、その使用は抑止されていたわけですが、冷戦構造が崩壊した後、大量破壊兵器の拡散が国際社会に於いて現実の脅威として深刻化したという事態が認められています。冷戦の終了とほぼ同じ時期に発生した湾岸戦争ですが、その停戦決議に於いて大量破壊兵器の廃棄ということが停戦の条件にされたということは何も偶然の出来事ではなかった。やはり大量破壊兵器の問題ということに国連としても、国際社会としても、重大な決意を持って対応せねばならないという認識があったからであろうと思います。その決議を受けてイラクは12年間に渡って累次の安保理決議を履行してこなかったという事態が続いてきたわけですが、先日14日のブリックス査察団長等の報告を見ても、各国の発言を見ても、やはり国際社会としてはこのような状況を許さないという点に於いては一致した立場が見られたと思います。今、国際社会が協調して、断固たる姿勢を持ってイラクに対して安保理決議の完全履行を迫るということが求められています。これも意見の一致があるだろうと思います。さもなくば、今後、場合によっては第2、第3のイラクというものも出現して、大量破壊兵器による恐怖というものが世界を脅かすという状況が続くことにもなりかねないという問題意識を私は持っています。国際の平和と安全について、主要な責任を持っているのは国連の安保理事会です。従って安保理が今回のこの問題について果たす役割とか責任といったものは非常に重要なものであろうと思っていますし、安保理事会がイラクの決議違反に対して責任を持って毅然たる対応を取ることが国際社会の平和のための国際秩序とか、国連の権威といったものを維持するため不可欠であると言えると思います。我が国としてはこのような考え方に基づいて、主体的なイニシアチブを取って国際協調による問題の処理のために外交努力を続けていくとい、ことを考えているわけです。尚、問題をグローバルに捉えてみますと、イラクの大量破壊兵器の問題は、何も日本から遠い地域で起こっているというだけの問題ではなく、我々が位置している東アジア地域の安全保障の環境といったものを考えてみると、イラクの問題は我々日本にとっても無関係なものではないということが理解されるのではないかと考えます。
(問)そういう国際協調努力の一環として、新しい国連決議ということで非常任理事国への働きかけということがされていると思いますが、何にしても新しい決議ということなんですが、査察をあとどれぐらいやるかとか、どのぐらい強化するとか、最終的な手段としての武力行使というものをどう明記するかとか、いろいろ論点はあると思いますが、日本としてはその働きかけをしていく時に、決議の内容については何か外交的に、いろいろな国をまとめて提案していくということになるのでしょうか。
(次官)それは今言ったような、国際社会が直面している大量破壊兵器の脅威といった問題について何が効果的であるかという観点から我々としては考えていく必要があると思います。問題の本質というのは、やはりイラクが累次の安保理決議を完全に履行するということ、それに最も効果的な方法は何かということだろうと思います。誰も武力行使を望んでいるわけではありませんし、平和的解決を追及することは必要ですから、平和的な解決を追及するということにも資するものであるということは当然のことだと思います。
(問)今のお話だと、日本政府がどういう内容を望むかというところは余り私は理解できなかったのですが、日本政府としては国際社会の協調ということで新しい国連決議を求めている以上、内容はともかく、そういうものができれば日本政府として従うというふうにお考えでいらっしゃるということでしょうか。
(次官)内容の詳細とかいうことは残念ながら日本は安保理のメンバーではありません。私が今言った安保理事会というものが国際的な平和と安全の維持ということについて、国連憲章上も第一義的というか、主要な責任を負っているということですので、安保理事会のメンバーたちの責任は非常に重たいということだろうと思います。例えて言えば安全保障理事会はかなえの軽重を問われるような立場にあると思いますので、大量破壊兵器の問題を解決するのに最も適切で効果的なことにつき知恵を絞ってもらいたいと思います。
(問)最後に、その結果として武力行使を容認するような決議が得られた場合は、それを支持するというお考えと理解してよろしいでしょうか。
(次官)それは今までにも、何度も説明がされていると思いますが、武力行使に賛成するかどうかとか、安保理決議の中身を今から予断して申し上げるということは適切ではないと思います。現在、まだ平和的解決の努力が続けられているわけですし、国際社会としてやはりイラクに対して毅然たる対応、態度を示すということが必要です。イラクはごく最近になって、査察について、人によっては小出しという表現が使われるような協力姿勢を示してきていますが、これもシラク大統領も言っておられますが、やはり国際社会が強い圧力をイラクに対してかけてきたということがあって出てきた姿勢であると考えられます。何れにせよ、この非常に重要な段階に於いて安全保障理事会が責任ある対応をしてもらいたいというのが我々の考えですし、また日本としても国際協調、この問題の平和的な解決のためにできるだけの努力をしたいということです。
(問)今、次官のお話で、「さもなくば第2、第3のイラクが出現して、大量破壊兵器の脅威が世界を脅かすことになるだろう」という表現があったり、あるいは最後の方で、「イラクの問題というのは、日本から遠い問題ではなくて、東アジアの安全保障上の環境にとって、日本にとっても看過できない」というお話がありましたけれども、これは伺いようによっては北朝鮮のことを明示しているのではないかと思うわけですが。
(次官)私はそういうことは言っておりません。先程申し上げたとおり、我々にとっても無関係ではない問題であるということは、我々がいろいろ考える際に当然考慮すべき点だろうということを私は考えるということを申し上げたわけです。
(問)先程の次官の、冷戦後の国際環境の説明の中で、大量破壊兵器の拡散が現実の脅威であるというお話がありましたが、それとあと、日本政府がよく説明していますイラクは累次の関連、国連決議に違反していたと、その上に立って、今のイラクの大量破壊兵器の問題が軍事力を行使すべき問題であるということの説明を改めて、それ程の脅威であるということの説明を、もう一度新たに日本政府としてどう考えていらっしゃるのか。拡散の問題は確かに現実の脅威だという先程のお話だったのですが、今現実にイラクがもっている大量破壊兵器に対して、それが軍事力を行使するに値する、そういう緊急性を持っているものであるということについて、どう説明されるかという。
(次官)私はそういうことは申してません。今私が申し上げたことを、軍事力を行使することに値するという判断を申し上げたことでは全くありませんので、そこは誤解をしないで頂きたいのですが。私が申し上げたのは、現在の国際社会というのを見た場合に、核兵器の拡散であったり、これは南アジアでもあるわけです、大量破壊兵器の問題であったり、拡散であったり、そういうことについて冷戦時代とは違う問題が出てきているということです。それに対して国際社会としては、きちんとしっかりとした対応をしなければならない。それが交渉、査察、平和的解決によって解決されれば、これは一番いいことなわけです。そういう道が探求されることが一番いいことであることは間違いありません。国際社会としては、どうやってこの問題に対応しようかということで、国際社会全体がいわばいろいろな意見を出し合って、よく言えば知恵を出し合おうとして、悪く言えばのたうち回ると言うか、もがきながら対応しようとしているということだろうと思います。それにあたって国連と安保理事会というのがやはり主要な責任を負っているだろうということで、安保理事会のメンバー国においては、そういった責任と役割を果たすように努力をしてもらいたいということです。
(問)大量破壊兵器の脅威についてなんですが、大量破壊兵器というものは、イラクに限らずいろいろな国が、先程南アジアの現状にも言及されましたが、保有しているわけで、イラクの大量破壊兵器が差し迫った問題であると考える理由を改めてお聞きしたいことと、誰も武力行使をすると決めたわけではありませんが、現実にアメリカはそれを視野に入れた対応を取っていると、そういうことはイラクに対する外交圧力を強める上でも必要だという考えなんでしょうが、現時点でのアメリカの対応については日本政府としては理解できるかどうか、その2点についてお聞きしたいのですが。
(次官)大量破壊兵器の問題、特にイラクが、何故今イラクなのかということの質問と思いますが、それは御承知のとおり何故今かと言うよりは、何故今までかかったのかということが実は問題であろうかと思います。12年前から、そういうことを先程申したような冷戦時代が終わって、湾岸戦争が起こって、大量破壊兵器問題というのが停戦の条件にされました。それ以来、国連、アメリカも我々も、イラクによるそういう兵器の廃棄ということに努力を傾けてきたわけですが、今ここに至ってもイラクが自ら廃棄をするという能動的な協力姿勢に欠けるということが問題だと思います。大量破壊兵器の問題というのはイラク以外にも潜在的にも顕在的にもあるわけですが、それに対する国際社会の対応というのはそれぞれの状況によって決まることは当然あり得ることだろうと思います。アメリカの現在のこれまでの姿勢というのは、私が思うに、まさしく12年間、査察に非協力的で、自ら証拠を消し、廃棄をしない、廃棄をするということをやらないという、そういうイラク側の対応に対する対処ということから圧力をかけるという姿勢が取られてきていると思います。相手の国の対処の仕方がまた異なれば、対応の仕方も違ったものになり得るということだと思います。
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北朝鮮
(問)アメリカの一部報道で、北朝鮮がミサイル実験をしたり、核の再処理施設稼働の事実があった場合には、経済制裁について検討するという報道がありましたが、こうした考え方というのは米当局の方から日本側には具体的に伝えられているのですか。
(次官)全くございません。アメリカの報道に基づいていろいろ申し上げるというのもいかがなことかと思いますが、それ以前の話として経済制裁について具体的な話があったということは全くありません。私の先般の戦略対話においてもそういう話はありませんでした。
(問)北朝鮮の方ですが、北朝鮮は、国連がもし経済制裁ということをしたら、それは宣戦布告と見なすというような発言もあるわけですが、これは、もしそういうことになった場合に、日本の周辺事態として見なす必要性というか、可能性についてどういうふうにお考えでしょうか。
(次官)少し話が先に飛んでいるのではないかと思います。周辺事態云々ということについては、我々そういうことを検討しているということはありません。きちんとした周辺事態法というのがあって、その法律の中にきちんと書かれているわけです。それに基づいて考えなければならないということだろうと思います。強調して言いますが、現在そういうことを考えているわけではありません。経済制裁についても、米国で報道があったというのは、私、先程承知しましたが、また繰り返しになりますが、そういうことで我々が検討していたり、米国と話をしているということはありませんので、ちょっと先走っていろいろなことを言うのは適当でないと思います。
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日本の通商交渉
(問)話違いますが、先週、日本貿易会の宮原会長が、日本の通商交渉の権限は、USTRのように一本化すべきではないかということを言っていますが、WTOとかFTAの交渉が進む中で、今の多省庁にまたがる通商外交の進め方が、時代にマッチしているのかどうか、それはどうお考えでしょうか。
(次官)特定の発言について、私、承知しませんので、宮原会長の発言についてのコメントというわけではありませんが、従来から経済交渉、2国間、又は多数国間もありましたが、外務省が政府を取りまとめて代表する、そして交渉にあたるということをやってきました。それぞれの国の行政機構の在り方によっていろいろなやり方があろうと思いますが、日本の行政機構の今の体制ということにおいては、外務省が従来からその役割を全うすることが一番適当だろうと思います。もちろん、関係各省、政府外の民間とのいろいろな接触を通じて外務省が各界の意見、立場というものを吸い上げて調整することが必要であろうと思います。その努力は怠ってはならないと思いますが、外務省がその役割を果たすということについては、現行のやり方ということがよいと思います。
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