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総領事館ほっとライン 第21回 バルセロナ
遠い街から身近な街へ
(時事通信「世界週報」2005年5月3日号より転載)


平成17年4月
在バルセロナ総領事
鈴木 一泉


自治州カタルーニャ

 私が、初めてスペインのバルセロナを訪れたのは、ほぼ30年前の1975年9月のことだった。当時はまだ日本総領事館も無く、現在の総領事館がある市の北西部には野原が広がっていた。今では、オフィスビルや住宅が建ち並ぶ。1年前に着任した私にとって、その変貌ぶりは驚きだった。

 バルセロナを州都とするカタルーニャ州は、39年からのフランコ将軍政権下、言語、文化および自治の面でかなり強い抑圧を受けていた。私の到着から2カ月後、75年11月のフランコ将軍死去により政治体制が大きく変わり、同州に自治が復活した。30年前の街頭ではスペイン語しか話されていなかったが、今ではカタルーニャ語が州の公用語となり、道路標識までもがカタルーニャ語表記である。また、州の経済規模も、デンマーク、ギリシア、ポルトガル一国の国内総生産(GDP)にほぼ匹敵するまでに成長した。92年のバルセロナオリンピックは記憶に新しい。近隣にも多くの工業団地が誕生したほか、昨年は市の南方臨海地帯の再開発が進み、国際会議場も完成した。

年間日本人旅行者は約20万人

 バルセロナは、モデルニスモ時代の代表的建築家であるガウディ、モンタネールやピカソ、ミロ、ダリ、カザルスなど芸術家との縁深き街であり、世界中から観光客が訪れる。

 バルセロナを最初に訪れた日本人は、16世紀末から17世紀初めにローマ法王やスペイン国王への謁見の旅をしていた天正少年使節団や支倉常長だといわれる。5世紀を経た今日では、日本から、毎年20万人近い観光客が訪れるようになった。

 バルセロナの治安は、悪くはない。しかし、そそり立つサグラダ・ファミリア教会の尖塔、迫力のある建築群に目を奪われているすきに、ひったくり、スリ、置き引きなどの被害に遭う。また、ニセ警官詐欺やパンク盗など知能犯も多くなってきた。幸いにも凶悪事件はあまりないが、日本の在外公館の中で、邦人援護事案の多い公館トップ20の中にここが入っているのは、少し悲しい。その日の宿泊先も決まっておらず、助けてくれる知人もいない異国の地で、すべての所持金を盗難に遭ってしまった方からの連絡を受けて、担当領事が警察署や事件現場付近まで駆け付ける。その時に、被害に遭われた方の安堵の顔を見たり、後日、礼状を頂くのは担当領事にとって本当に励みとなることだ。

根を張る在留邦人社会

 バルセロナは、南欧地中海地域最大の産業都市。そこに製造業を中心とする日本企業が本格的に進出してきたのは69年である。私がいた30年前の日系企業数は、7社。それが、現在は141社を数える。スペインに進出する日系企業の7割に当たる。企業関係者の増加に伴い、86年に日本人学校が、その翌年に日本総領事館が開かれた。30年前、在留邦人数は177人だったが、2004年10月現在、1809人となった。本年20年目を迎える日本人学校では、日本から選抜派遣された先生方の懇切な指導の下、少人数制の授業が実施されており、国際的な視野を身に付けた元気な子供たちが毎年巣立っている。

 総領事館は、これら在留邦人の方々の生活をサポートするため、戸籍関係やパスポートの発給、在外選挙の実施などの行政サービスに加えて、当地での就労・滞在許可、スペイン運転免許証取得の相談に対応したり、当地の治安情報から日本にペットを持ち帰る際の検疫制度に至るまでいろいろな情報を提供している。また、州の自治権拡大の一環として、州警察の権限も強化されつつあり、我々は州警察などと常日頃から連絡を取り協力係を築くことで、邦人の安全確保を目指している。

新たな発展に向けて

 カタルーニャ主義を標榜し、自治権拡大や産業近代化に23年間にわたりリーダーシップを発揮した前政権が、一昨年末に退陣し、社会党系の新政権が誕生した。折しも、欧州連合(EU)が東方に拡大し、域内の競争激化が予想される中、繊維産業を基盤にして立ち上がったこの地域の地場産業は、今、新たな発展の道筋を探っている。先端産業の誘致、高付加価値製品への移行、商品開発機能の強化などが新たな方向と言われている。南仏との結び付きを強化して、産業活動の広域化を図る構想も動きだした。

 同じ頃、スペイン政府は、発展著しいアジア地域との交流を強化するため、カサ・アジアという機関をバルセロナに設立した。この機関は、日本を含むアジア諸国と経済、文化の両面での交流を深める活動を展開中で、今年は、日本を重点国に指定して、日本関係の企画を用意している。さらに愛知県で開催中の「愛・地球博」のスペイン館では、9月5日から11日まで「カタルーニャ週間」となる。文化とともに、ワイン、柑橘類などの物産も紹介される。また、カタルーニャ州の対日交易を推進し、日本企業を同州に誘致するための機関が、既に東京に設置され活動している。これら機関が一丸となって働き、日本とカタルーニャの関係がますます強化されることを期待してやまない。

ワンポイント・アドバイス

  • バルセロナでの犯罪の多くは、自分の注意で防げるものです。空港や駅、観光地付近の路上、レストラン内などでは、貴重品および手荷物に十分注意を払い、すきを見せないようにしましょう。
  • また、万一の場合に備えて、現金、貴重品は必ず分けて所持しましょう。


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