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総領事館ほっとライン 第10回 トロント
今も続くトロントの風評被害
(時事通信「世界週報」2004年3月16日号より転載)


平成16年3月
在トロント総領事
肥塚 隆



「9・11」の日も開館して

 トロントはオンタリオ湖に面し、人口250万人の北米で4番目の大都会である。オンタリオ州の南部はカナダでは比較的人口の集中したところだが、トロントからナイアガラの滝まで車で2時間弱、湖沿いの地域は特に美しい景観に恵まれている。治安のいいこと、カナダの経済、文化、学術等の中心地であることがこの町の人たちの誇りである。王立博物館の大改修や新オペラ座の建設等、ここ1~2年はさらに大プロジェクトが続く。
 各種娯楽、芸能産業の面でも有数の地位にある。ハリウッド映画も当地で撮影されるものが多く、ミュージカル映画「シカゴ」の背景映像が実はトロントのものだったりする。ブルージェイズの本拠地でもあり、昨年松井秀喜選手は当地で大リーグにデビューした。第1打席第1球でいきなりヒットを打ち先取点を挙げた非凡なプレーに、在留邦人も日本からの大勢の観光客や記者団も大いに沸いた。
 こういう土地柄であるが、このところ予想外の大事件や災難に見舞われることが多かった。
 皮切りは2001年、「9・11」の事件は当地にも大きな影響を及ぼした。朝の9時前にニューヨークで事件が発生した後、ニュースが広まるにつれ、ダウンタウンから人の姿が消えた。当初混乱の中でテロの目的が北米の金融機能を麻痺させることではないかと推測されたためである。金融街の高層ビルの中にあっても、総領事館はこのような時こそ閉めてはならないと考え、通常通り夕刻まで勤務したが、昼前には周囲は奇妙な無人地帯となっていた。それまでには北米の上空に一機も飛行機が飛んでいないことが確認されていたのにである。邦銀の関係者はニューヨークの同僚と連絡が取れないことに焦っていたが、幸い当地の在留邦人には結局直接の被害はなかった。
 オフィスを開けていることによっていろいろ情報が収集できた。米国在住の邦人からは、車でカナダに入国したいがどこなら国境が開いているのかといった問い合わせも幾つかあり、お答えすることができた。

ホームページでSARS情報を提供

 昨年春には新型肺炎(SARS)に見舞われるという未曾有の経験をした。香港から中国系の人が持ち帰ったものであったが、病院を中心に感染が拡大した。世界保健機関(WHO)から感染地域に指定された後、いったん解除されたが、第2波の発生で再指定されたのでイメージダウンがひどくなった。
 総領事館から在留邦人には、SARSについて分かったことや、WHOの取り組み、外務省の渡航関連情報、オンタリオ州の取り組みなどについてホームページ等を通じて情報提供した。進出企業の中には、中国向けと同じ社内対策をとり、内々家族の引き揚げまで認めるところもあった。当館の200メートルほど先でも感染防止のため閉鎖に追い込まれる事業所が出てきたが、自宅執務やバックアップ施設の確保など対策を進めるところもあった。
 結局6月になって日本から感染症の専門家に来てもらえたので、当局と専門的な情報交換をした上で、講演会を通じて、またその記録をホームページに載せて最新の正しい情報を邦人に直接提供することができた。
 在留邦人の中には不安もあり、現地の当局の対応が不十分とする人もいた。当局も今回の教訓として、先進国であっても感染症を集中的専門的に治療する施設を新設する必要性を認識するようになったが、大半の人は海外で報道が誇大に行われていることに懸念を持った。当地に出張すればその後10日間の自宅待機を必要とされたことが原因となって、記者も現地取材できず実情を伝えるのが遅れたのである。在留邦人の間では日本のテレビの映像で見かけるマスクを掛けた人(いつも同じ人)はどこでみつけてきたのだろうかなどと話題にしていたが、州政府の大臣もこのため訪日を断念するということになり、国際交流に支障が出た。

観光業へのダメージ回復へ必死

 SARSの実態について次第に理解が進み、医師などは別として、ある程度規制を緩和しても支障がないことが、ある時期になると専門家には分かっていた。しかし、出入国や検疫の現場で過剰な規制が整理されることになったのは、7月になってからであり、その頃には感染地域の指定も終わってしまった。
 そこに、8月になって北米東部大停電が起きた。人身事故などはなかったものの、夕刻前に起きたため、3時間かけて家まで歩いて帰ったというような人が邦人の中にも多く出た。緊急事態下で節電のため日系企業も含めて工場では操業率を抑えることを求められた。
 結局、昨年第2、第3四半期の州の経済成長率はマイナスに転落した。当地ではSARSの危機は去ったものの、風評被害は今も続いているとみており、連邦、州、自治体とも観光業へのダメージ回復に必死である。今年からトロントのホテル組合では宿泊料に3%の料金を上乗せして、観光振興のための資金を捻出し始めた。日本も観光客誘致の対象になっており、もっとトロントの実情を知ってほしいと言われている。当地の邦人にはこれに共感を持つ人が多いが、これは一時期日本の同僚や知人とのやりとりで思い当たる節があったからということのようである。

ワンポイント・アドバイス
 ナイアガラは一大観光名所。日本からも年に20万人の観光客が来られます。ここはバッグなどの置き引きや盗難が多いので、ホテル、レストラン、バー、観光船などでは所有物に特にご注意を!


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