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総領事館ほっとライン 第13回 スラバヤ
観光の島バリを直撃したテロ事件
(時事通信「世界週報」2004年6月15日号より転載)


平成16年6月
在スラバヤ総領事
城田 実


毎年30万の邦人が訪れる魅惑の島

 「天上の国を地上に映した島」「最後の楽園」「世界のあけぼの」などと様々に形容されるインドネシアのバリ島が、西欧社会の人々の前に直接に登場したのは1931年のパリ植民地博覧会といわれています。その頃までにバリ島を訪れていた多数の画家、音楽家、学者、映画人らによって紹介されてきたバリ島の美術、芸能、風俗は、この博覧会で大きな話題となり、その後、今日に至るまで、旅人のロマンチシズムを誘う島として様々にその魅力が語られながら、世界各地から観光客を引き付け続けています。日本からは、94年に日本航空直行便が就航して以来、毎年おおよそ20万人から30万人前後の観光客がこの島を訪れています。こうした中で、バリ島で生活する邦人の数も1400人近くに達し、日本語補習校では88人の児童・生徒が学んでいます。また、多数の日系企業や現地の方と結婚された日本人を含め多くの邦人が旅行会社、ホテルをはじめ各種観光業に従事しています。

バリ島民の熱意を砕いたテロ事件

 バリ島の観光資源は多彩かつ良質で、若者から高齢者まで多岐にわたる楽しみ方ができるのが大きな魅力といわれます。しかし、その将来性を期待されながら、ここ数年は、伸び上がろうとするたびに、その頭をたたかれるというような状態が繰り返されてきました。第2次バリ島ブームと呼ばれた97年には経済・通貨危機による社会混乱、98年には政権交代、99年末にはいわゆるY2K問題(コンピューター2000年問題)、01年の第3次ブームの直後には米国同時多発テロ事件がそれぞれ発生しました。
 観光開発にバリ島の将来を託そうとするバリ島民はその都度、バリ島のイメージの回復に必死に努めてきました。98年、インドネシアを襲った諸物価の高騰と政情不安はバリ島にも押し寄せました。薬局の棚から薬が消え、病院では人工透析中の患者が治療費高騰のために死を覚悟で何人も退院するといった社会不安の深まりを背景に、バリ島の青年や学生の間でも首都の政権打倒運動に呼応する動きが広がり始めました。その頃、デモを組織していた青年団体代表が民族衣装をまとってバリ島駐在領事を訪問し、「我々も首都の青年、学生と連帯せざるを得ないが、観光客に迷惑をかけることは決してしないので、ぜひとも我々の気持ちを誤解しないでほしい」と訴えました。国中が騒然とする中で、デモ隊があらかじめ外国政府機関に理解を求めてきたのは恐らくバリ島だけでしょう。
 しかし、02年10月12日、そうした島民の願いと熱意をみじんに打ち砕く事件が勃発しました。爆弾テロ事件です。それまでの一連の事件では島民はいわば被害者でしたが、今回は、実行犯はバリ人ではないとはいえ事件現場がバリ島でした。私のバリ人の友人たちは、私たちは神への祈りを怠ったのだろうか、日頃の行いに何か悪いことがあったのだろうか、そうつぶやいてうなだれるばかりでした。そして、バリ島全体が沈んだようになりました。

安否確認で片っ端から電話

 バリ爆弾テロ事件は、海外における邦人の安全の確保と支援を大きな任務とする総領事館にとっても極めて重大な事件でした。死者が202人、負傷者は325人に達する空前の大惨事で、残念ながら邦人2人もその犠牲となって亡くなられました。死者が運び込まれた国立サンラ病院では霊安室から通路いっぱいに遺体が並べられ、総領事館員が日本人らしい痕跡はないかと一体ずつ丹念に確認しましたが、何度繰り返しても爆発の強さと火の勢いの激しさを思い知らされるだけでした。痛切に、私たちは今、テロと隣り合わせに生きている、という現実を思い知らされました。
 事件当時、バリ島には約6000人の日本人観光客が滞在していたと推測されます。総領事館では、被害者への援護と並行して、観光客と在留邦人の安全をいかに確認するかが大きな課題でした。日本人向けの主要旅行案内書に掲載されている300軒のホテルに片っ端から電話し、外出したまま戻らない宿泊客があれば館員が出向いて確認しました。186件、207人に達した家族や友人の安否を尋ねる照会には、あらゆるルートを駆使して確認作業を行い、出入国記録を7年前までさかのぼって検索したケースもありました。この過程で驚いたことは、宿泊先や使用航空便は不明、行く先もバリらしい、としか分からない照会が多かったことです。ご家族の心配を考えると、一刻も早く安否を確認したいと思いつつも、はかどらない作業に焦りが募る日々が続きました。
 文字通りサンダル履きの海外旅行が珍しくない時代になり、国境を越えるたびに緊張していた私たちの世代にはうらやましいようです。しかし、バーガーショップやブティックがいくら並んでいても、その内側には考え方や習慣や宗教が異なる人たちが暮らし、日本のようには物事が運ばない外国であることを忘れないようにしたいものです。

ワンポイント・アドバイス
 旅行者を巧みに誘って、トランプ詐欺に巻き込む事件が続発しています。最近は被害額も高額となり、手口も凶悪化しつつあります。見知らぬ人の誘いには注意しましょう。


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